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異世界の洗礼

 目の前に広がる海を眺めてどれくらい経っただろう。波音聞いたり、広大さに見惚れたり。気持ちが少し落ち着いた、海ってすごいね。


 砂浜で三角座りしている私は、あらためてつぶやく。


「異世界、来ちゃったのかぁ………」


 死んじゃって、はいお終い。じゃないパターンに当たったらしい。理由は分からないけど。


「こういうのって、神様か女神様、それか天使的な人がさ、説明してくれるんじゃないの?」


 異世界のチュートリアルが無いなんて、不親切。


「まあ………、異世界に来ちゃったんなら、もう諦めるしかないかぁ………、はあー………」


身内や友人の心配は特にない。物心ついたときには、私は施設育ちで。両親は知らない。なんとか高校を出て、そのあとは色んな職と都道府県を転々と。三十路付近までがんばって働いて生きてきた。でも、


「配管に潰されて、地球での人生終わりなんて、切なすぎる………」


 手順ミスした仲間が悪いんだけど………、それが私の運命だったのかな。


 私は片手をグッパグッパする。


 でも、私は生きている。


………、すんごい事故現場だったろうなぁ。見たらトラウマになるレベルになると思う。えっと………、申し訳ないですけど、後片付けよろしくお願いします。


「あいたた………」


 たまに軽い頭痛がする。まだ異世界に慣れてないってとこだろうか。


「ふぅー………、だって急だもんね」


 でも、それが私の次の運命なら、


「仕方ない、かなぁ」


 私の視界に小さく、パソコンに表示されるポップアップみたいなウインドウ画面。そこには、


異世界転生スキル

『リミッター解除』

一度解除すると戻れません。


 具体的な説明はもちろん無い。唯一分かるのは、


「解除したら戻れないって………、怖すぎだし! どうせならもっと分かりやすく、使えるスキルをちょうだいよ!」


 すごくむしゃくしゃした。そばにあった石ころを手につかむ。


 立ち上がって、そのまま振りかぶる。


 海に向かって、私の気持ちを石ころに込めて、


「異世界のバカヤロー!!」


 思いっきり投げた石ころは放物線を描く、緩く、遅く、そのまま広大な母なる海へ、


 ザバァーンン!!


 えっ。


 コツン。


 「ギャ!?」


 あ、当たってしまった。頭に。もちろん、私の頭じゃなくて。


 ギロリ。


 大きな目と口。鋭利なヒレ、鋭い鉤爪、は、初めて見た、


「キシャアアアア!!」


「半魚人!?」


 すごい怒りの剣幕で、私のところに勢いよく泳いで向かってきた。

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