米本土攻撃
米本土攻撃
「次の作戦はサンディエゴへの攻撃だ。オアフ島以上の反撃が予想される」
戦艦陸奥はオアフ島の攻撃を終え、一路サンディエゴへ針路をとっていた。
補給も終えており、被弾しだ箇所もあったが、陸奥の防御力・自動修復を超えた物はなく、木甲板の破損だけが残っていた。
「米軍も夜戦用航空機を増やしているでしょうから、相当な反撃があるでしょうね」
「そうなるだろうな。もし仮に反撃が大した事なかったら、ロサンゼルスも攻撃できるんだがな」
陸奥艦長が冗談めかして言うと、副長は真面目に答えた。
「そうですね。陸奥にとっては、サンディエゴからロサンゼルスは近いですからね」
「まあ冗談だ。サンディエゴの施設や艦船破壊に注力し、今作戦に全力で臨もう」
艦長は気を引き締め、米軍の想定される反撃を士官達と協議していくのであった。
戦艦陸奥は、米哨戒機や哨戒艦、潜水艦の索敵を避けサンディエゴへ接近していった。
アメリカ側に陸奥の接近を直前まで気取られる事がないよう、細心の注意が払われた。
サンディエゴ夜襲作戦当日。戦艦陸奥はメキシコ側から北上し、サンディエゴを目指した。
サンディエゴへ近付くにつれ米哨戒機と哨戒艦の密度が上がり、避けることが困難になった段階で排除を開始した。
戦艦陸奥は三式弾の一撃で米哨戒機と哨戒艦を排除していき、高速でサンディエゴを目指した。
アメリカ側が哨戒部隊との連絡が途切れた事で、サンディエゴ攻撃に感付くまでにできるだけ接近したかった。
「攻撃開始地点に到達!」
「撃ち方始め!」
戦艦陸奥は攻撃開始地点に到達後、速度を落とし、主砲と副砲の砲撃を開始した。
「敵航空機の飛来を確認!数が増加していっています!」
「高角砲は射程に入り次第、迎撃を開始せよ!」
「いよいよですね」
「ああ、そうだな。サンディエゴ港の艦船があらかた破壊できたら離脱する」
戦艦陸奥の対空戦闘が始まり、陸奥の上空には照明弾が投下され、米航空機による攻撃が開始された。
陸奥は回避運動を行いながら砲撃を続け、サンディエゴの施設や艦船への攻撃を予定通り行った。
戦艦陸奥は、米航空機による追撃を受けながらの撤退戦を開始した。
陸奥は魚雷こそ受けなかったものの、500kg相当の爆弾は数発被弾する事になった。
「さすが陸奥ですね、500kg程度の爆弾ではビクともしません」
「ああ、それに高角砲を始め、対空機銃の命中精度が異様に高い。陸奥の技能が影響しているのだろうな」
「はい。それに加え砲術士官の指揮により、乗員の損害も軽微で済んでおり、陸奥の自動修復技能によりすぐさま復帰しております」
艦長と副長は、陸奥の対空戦闘により次々と撃破されていく米軍機を見ながら、陸奥の対空戦闘能力の高さに感嘆するのであった。
陸奥は高速で南西方向へ撤退を続けるものの、米軍ははさらなる航空機の大編隊を送り込んできており、戦艦陸奥1隻に対し数百機の爆撃機や雷撃機が迫っていた。
そこへ日本機動部隊から、米夜戦用航空機を掃討するための航空隊が到着した。
夜戦用の艦上戦闘機・攻撃機であり、戦闘機も夜戦用に複座となっており、一人は魔法や技能を使える者が搭乗した。ほとんどの場合、魔法や技能を使える者は後部座席に乗っていた。
艦上戦闘機は新型機の烈風と震電で、どちらも夜戦用に開発され複座となっており、震電はジェット戦闘機で艦上用に改修された物でもあった。
烈風は翔鶴型空母と雲龍型空母に搭載され、震電は空母信濃と空母大鳳に搭載されていた。
艦上攻撃機は流星であり、夜戦用に改修してあるため速度性能は抑えられ翼面荷重も低くなっていた事から、着艦制動装置を改修した小型空母にも搭載が可能だった。
武装に20mm機銃を2挺装備しているため、米夜間戦闘機にも対抗できた。
機動部隊から送られてきた烈風・震電・流星は、戦艦陸奥の直掩となり、航空管制に従い効率的に米夜間航空機を迎撃していった。
艦上ジェット戦闘機震電は、大型爆撃機を標的とし、その大口径30mm機銃により次々と撃墜していった。
戦艦陸奥も、対空戦闘用に思考加速の技能を前提に測距儀などを改修していたが、主砲は改装しておらずそのままの仰角のため、主砲を高角砲のようには使えなかった。
陸奥は機動部隊が派遣した直掩機のおかげで、余裕を持った対空戦闘ができるようになり、主砲による三式弾射撃も交えながら撤退を続けた。
夜が明けると、航続距離の長い米航空機が陸奥追撃に飛来し、日本機動部隊も南西に距離をとりながら迎撃機を送り出し、陸奥への援護を続けた。
米軍は連合艦隊の予想通り、完全に陸奥に食いついたのであった。
ソロモン諸島からこれまで、戦艦陸奥は米軍に煮え湯を飲ませ続けてきた。今回の攻撃もその延長であり、陸奥はアメリカに目の敵にされると予想されていた。
実際それは的中し、米軍は血眼になって陸奥を追撃し、それ以外には目もくれていない様子だった。
日本機動部隊は米哨戒機や哨戒艦、潜水艦の排除を行っており、陸奥への直掩機を飛ばしている事からも、その存在は露呈しているはずであったが、米軍は戦艦陸奥への追撃に夢中であり、機動部隊には攻撃が来る気配がなかった。
機動部隊は陸奥への直掩機を交代で飛ばしていたが、日が昇ってさらなる大編隊が来襲してからは、近接信管搭載の噴進弾を解禁した。
近接信管搭載の噴進弾は、戦闘機や流星から発射できるロケット弾であり、電波を出しながら直進し、敵機近傍で電波の反射を感知すれば炸裂する兵器だった。
これにより、敵戦闘機や爆撃機、攻撃機を次々と撃破していき、日本海軍はレシプロ戦闘機の性能が劣っているものの米戦闘機を圧倒し、戦艦陸奥を追撃する米航空機を大量に撃墜していった。
機動部隊の隼鷹型空母以下の中小型空母には、零式艦上戦闘機と流星が搭載されており、零戦も近接信管搭載噴進弾を使い性能に勝る米戦闘機を撃墜していた。
噴進弾により寡兵になった米戦闘機は、数の暴力でねじ伏せていったのである。
米航空機の追撃が終わり、日本機動部隊と戦艦陸奥は一息つき、補給を受け、再び攻撃を仕掛けるため動き出した。
日本軍の狙いは、米夜戦用航空機が第一であり、次いで米戦闘機であった。一度目の攻撃でかなり削れたが、まだまだ数が多い事は窺えており、洋上に釣り出し、撃墜していく作戦は継続される事になった。
戦艦陸奥は次にロサンゼルスへの攻撃を敢行し、被弾しながらも同様に米航空機を釣り出し、日本機動部隊の航空機により撃墜していった。
ロサンゼルスの破壊が不十分なため再攻撃を行い、ロサンゼルスを砲撃すると共に米航空機を撃墜していき、米航空戦力をカリフォルニア南部に引き付けた。
さらにサンディエゴを攻撃し、またロサンゼルスを攻撃し、米航空戦力を集め削っていった。
航空戦力低下を確認後、カリフォルニア周辺の飛行場を日本機動部隊が夜間空襲を行い破壊し、制空権を手に入れた。
米航空機がカリフォルニア南部に集中している隙を突き、日本戦艦部隊はサンフランシスコを水上偵察機瑞雲で夜間空襲し、9隻の戦艦による艦砲射撃を加えていた。
周辺の飛行場や港湾施設を破壊し任務を果たした戦艦部隊は、機動部隊との合流のためサンフランシスコを離れた。
日本艦隊は合流し補給を終え、航空機を補充し、再び米本土を目指した。
1945年7月。日本軍による、米本土上陸作戦が始った。
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