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シスターアタック  作者: MMR
1章 俺と妹との日常
9/42

9.頭をなでて

 街全体が照れるように赤くなる夕暮れ時。

 部活が終わり帰り道を行く俺の隣には、相変わらずもう一人がくっついている。

 

「今日の私すごかったんだよー、部長にもほめられちゃった。努力の甲斐ありましたねって。えへえへ」

 

 似ていないモノマネを交えつつ美央が自画自賛を始める。

 

「美央はほめないと伸びないからな。部長も扱いが手慣れたもんだ」

「うーっ、ホントにすごかったのに! 部長は実際そう思ってくれたんだもん!」

 

 いつも美央の勢いにやられっぱなしの俺だが、こうしてたまにからかう側に回れると、すっと心につかえているものが取れるから嬉しくなる。

 しかしよく表情がそこまで変わるものだ。さっきまで太陽のマークがいくつか頭の上をただよっていたみたいな感じだったが、今はモチがふくらんだような頬をしている。

 

「モチみたいだなんてひどいよー! そんなに太ってないもん、うるうる」

「いや、誰も体型のことだなんて言ってないし」

 

 俺、もしかして声に出ているのか?

 

「ほめられたの、ホントなんだもん……」

「わかった、信じるから泣き出そうとするのはやめてくれ」

 

 朝の二の舞はごめんだ。

 美央はほとんど気持ちをこめなかった俺の言葉に気づいているのか、疑いの視線をそらさずに向けてくる。

 

「じゃあ、ほめてよ。まだおにいちゃんにはほめられてないもん」

「えらいな、よくやった」

「言われたからからやりましたみたいにほめられても嬉しくないっ」

「なんだそれ……じゃあどうすればいいんだよ」

「頭なでて」

「は?」

 

 聞き返してしまったが、聞こえていないわけじゃない。頭なでてとか、小学生かよって話だ。

 

「おにいちゃんに頭なでてもらえれば、わたしもっとがんばれるもん。小学生の時はよくやってもらえてたのに最近ないんだもん」

 

 そう言って美央は上目遣いになりながら頭を俺に突き出してくる。

 いや、最近ないって言われたってそりゃそうだろう。高校生にもなって、そういう光景を何度も見かけるか?

 

「断る」

 

 いくらなんでも周りの目が気になる。

 

「そんなこと言ったら泣き出しちゃうからね」

 

 こいつ……わかってて今までやってたのか。

 しかし状況がどうあれ、仮にも女の子が泣いているそばに俺がいたら、どう思われるだろうか?

 結論として俺は、美央の髪をかき混ぜるようにしてぐしゃぐしゃにしてやった。これでもなでてやっていることに変わりはない。

 

「ちょっと、痛いよおにいちゃん。もっとやさしくして」

「なでろって言われて実行してやってるのに文句言うな」

「女の子の扱いに慣れてないおにいちゃんも魅力的ー」

「その言い方腹立つな」

「もっと……やさしく。おねがい、おにいちゃん……もっともっとふわっとわたしを包み込んで」

 

 俺は結局おちょくられているのか?

 美央が両手を自分のあごに包むように当てて上気したような顔をしだす。何その恋人気分な感じ。

 

「えへへ……」

 

 あまり余計なことをしていると、今のように世間体としてよろしくないことを美央がどんどん口走りそうなので、素直になでてやってしまっている自分が嫌になる。

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