6.お決まりの展開
「あ、朝から疲れた……」
といってもいつものことだが。
教室に到着して、ホームルームというしばしの休息。
ホームルームが始まるまで、俺に話しかけてくる奴はいなかった。おそらくいつものようにぐったりしているから気遣ってくれているのだろう。ありがたいことだね、涙が出そうだよ。
まったく、美央の馬鹿力め。隙を見つければ腕を組もうとしやがって。
振りほどこうとしてもむしろがっちりと掴まれてしまうだけで一向に事態は改善されない。
「あう……わたしのこと、そんなに嫌いなの? ぐすぐす」
こうなったら最悪だ。周りの目が一斉に冷たくなる。
そもそも腕組んでる時点でも好奇の視線っぽいものを感じているのに、いったいどうすればいいんだと。
最終的には俺の腕に美央が収まる。頭一個分身長が違うためなのか腕が引っ張られるような形になり、歩きづらいといったらなかった。
ホームルームが終わる。どうやら考えごとをしているうちに何か決まったことがあったようだ。
「よくまあ、文化祭委員なんてやる気になったよな」
誰かに話しかける声がする。まさか……俺にじゃ、ないよな?
「おい、高坂。聞いてるのか?」
「やっぱり俺に言っているのか?」
「なんで疑問で返してくる……高坂が首を縦に振ったんだろうが」
確かにどこかで、美央は理不尽なこと要求してくるよな、という自問自答に首を振っていたかもしれない。
なにこのあまりにもお決まりといった展開。
「ああ、そうか……了解了解」
しかし、これは好都合とも言える。
美央にかまっているより、まだ文化祭委員で時間をつぶしている方がいい。
だが、嫌な予感がする。ここまでお決まりの展開とやらがあるとすれば、もしくは……
「あーっ! おにいちゃんも文化祭委員になったんだー! 黒板に書いてあるもん、ねえねえ、そうだよね?」
美央はとりあえず上級生の教室に簡単に上がり込んでくるなよ……
というかなんという到達スピード。美央の教室は下の階だよな?
もはや『おにいちゃんも』というところは現実逃避したいので触れないことにした。
とりあえず文化祭委員をする話、撤回させてもらおうか。無理なんだろうと分かってはいるが。