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シスターアタック  作者: MMR
3章 妹とでーと?
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Event 2. Saint Valentine's Day

再び本編から外れてひとやすみ。

「うん! 今回も上出来!」

 

 高坂美央渾身の力をこめた小さなラッピング。その箱を前に、わたしは胸の前で両手を握る。それだけの気合いが入っているからこそ、そういうポーズになってしまう。

 なんかお祈りみたい。でも言ってみれば願いをこめたようなものだし、うん、間違ってないよね。

 もちろん、その中身も今ある力を全てつぎこむくらいのものを入れている。外面だけじゃなく、内面も磨いてこその勝負だもんね!

 

 おにいちゃんはきっとまた、関心のないようなフリをしながら一応受け取ってくれるんだよね。

 わたしがこれだけ心をこめているのに、そんな反応されるのはちょっと寂しいけど、おにいちゃんの優しさはよく知っているから。

 だって、ちゃんと後で「悪くなかった」って感想、言ってくれるんだもん。素直になってくれないところが、かわいいんだよね。

 

「今回こそは、おいしいって言ってほしいなぁ……」

 

 わたしの目標だ。「悪くない」なんて遠回しな表現もさせないくらいに、ストレートに「おいしい」って言ってくれるようなバレンタインのチョコレート。

 そう。今日はバレンタインデー。

 

 チョコレート会社の策略だって言われるけど、こういうきっかけでもなければ、おにいちゃんは意味なくプレゼントなんて受け取ってくれないと思うから、ちょっと好都合、かな。

 そろそろバレンタインデーだって気づかれているとは思うけど、あんまりあからさまにバレバレに作っているところを見せたくはなかったから、朝早くに起きて作るわたし……

 えへへ、ポイント高いかな。気づかれないところでの努力! 今のところ自己満足でしかないけど……

 そして、そのことに気づいたおにいちゃんがわたしに迫ってきて……

 だ、だめだよおにいちゃん。やっぱり兄妹だし、そんなのだめー!

 ……ちょっと落ち着こう、わたし。

 

「おにいちゃん、起きてー!」

 

 もう何度目にもなるおにいちゃんの部屋。

 ぐっすり寝てるのに頬が緩むのを止められないわたし。午前七時、寝ているのを見ると、勝ったって気持ちと、安心する気持ちになるわたしがいる。

 

「相変わらず女の子の影が見えない部屋だねー。ここはやっぱり、わたしだけでも支えてあげなきゃだめかな?」

 

 余計なお世話だと、起き抜けなのにはっきりした口調でおにいちゃんは言う。

 もう、意地張っちゃって。

 

「一応、今年も作ってあげたんだよ! えへへ、嬉しいでしょー! 本気になっちゃ、だめなんだからね?」

 

 あ、意地張ってるのはわたしもかな。

 

 お互いさまなのに気づいてわたしが包みを手渡しつつおかしく思っていると、ふと見たおにいちゃんの机の上に、わたしと同じようなラッピングが施された箱が置かれているのに気づく。

 わたしより先を越してくる、お、女の子がいただなんて……

 

「お、おにいちゃんのばかー!」

 

 わたしもなんでそういう人がいるって気づかなかったんだろう。

 そんな悔しさも含めながら、わたしはおにいちゃんの部屋を飛び出していた。

 

 

 

「なんだ、美央のやつ……」

 

 もう毎回のことなので諦めてはいるが、ドアは閉めていって欲しい。

 そして俺が美央の一連の動きについていけないでいると、机の上に包みが置いてあるのに気づいた。

 美央の持ってきたものは、直接手渡しされて俺の手元にある。じゃあ、あれはいったい?

 起き上がって、机の前に近寄る。包みのてっぺんには、カードが差し込んであった。

 

『母より』

 

「母さんかよ!」

 

 まったく、普段から美央をひいきしておきながら何やってるんだよいい年して。

 絶対、父さんへのもののついでだな、これは。

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