Event 1. 節分の日に
Have a Break.
いったん本編ひと休み。たまにはイベント時の高坂家をお届け。
決して Have a KitK(以下略 と続くわけではない。
「お、おにいちゃんわたしの豆数えちゃだめー! 恥ずかしいよ……あうあう」
「いや、なんだそれ。高校一年だってみんな知ってるだろうが」
「そうじゃなくてっ、ちょっとどきどきしない?」
「何が言いたいのかわからない」
それ以外に意味があるのだろうか? おそらく美央のことだからろくなことではないのだろう。面倒なので深くは考えないことにする。
「むー、じゃあいいや。どちらにしても女の子の年齢はデリケートな問題なんだよ?」
「15歳の言う台詞じゃないな、それ……」
「あう、言っちゃだめだってばー」
「目の前の人に失礼だとは思わないのか?」
「何か言った? 雄斗」
「いいえ、何も」
そんな母親への冗談を交えつつ、年齢の分だけ豆を食べるという節分のお決まりイベントを、高坂家は現在実行中である。
その時に豆を配るのが俺の役目……といっても別に取り決めたわけではなく、たまたま豆の袋の近くにいたのが俺だっただけで、ついでにやっているようなものだ。
「31、32、33……」
「雄斗、もうそのくらいにしときなさい」
「は? いやでも母さんまだ足りな……」
無言の圧力というものをお腹いっぱいに味わったのは、この時が初めてだったかもしれない。
美央の言う「女の子の年齢はデリケートな問題」というのは間違ってはいないようだった。違うのは「女の子」という部分だが。
こんなこと言ったら言葉攻めだけでは収まらない何かが起こりそうなので、とても口には出せない。
「ど、どうしたのおにいちゃん? なんか急に震えだしてるけど……」
その俺の様子に気づいたらしい母親が、片方の口元を上げる笑みを投げかけてきたのが余計に恐ろしかった。