27.つんつん
土曜日に続く、休み二日目の日曜日。
昨日の買い物に付き合わされた分でよっぽど疲れていたのか、俺は不覚なことに目覚ましのセットを忘れており。
「起きろー!」
午前七時を、時計より前にその声でお知らせ頂いた。
布団の上から、石でも落とされたかのような衝撃を食らう。
「まったく、ひ……一人で起きなさいよね!」
しかも普段と違って、起こし方が乱暴なだけではなく言葉までもが変に刺々しい。
俺が目を開け美央を見ると、更に違うところがあった。
髪型がいつものような高い位置でのポニーテールではなく、それを両サイドに一つずつ結んだような……そう、聞いたことがある。これはツインテールというやつだ。
なぜそんな髪型をしているのかはわからない。というか考えても意味ないような気がする。
「どうしたいったい……なんか態度が変だぞ」
「別にわたし、いつもおにいちゃんが振り向いてくれないから性格変えてみようかって思ったわけじゃないんだからねっ!」
「何そのどっかのアニメみたいな発言」
特にアニメ好きとかそういうことはないが、聞いたことがある。これはツンデレというやつなのではないかと。
初めて目の当たりにした。美央が相手だというのは一旦忘れたことにして、なんだか感動してしまう。
「あうあう……そ、そんなの見てないもん! 参考にしてないもん! 勘違いしないでよね!」
微妙に使い方変な気がするし、それに別に見ているかどうかなんて追求してないし。
ほぼアニメ引用なのは確定として、それとは別に美央が俺に顔を迫らせてきている方が気になった。
「というかなんで近づいてきてるんだ」
「うう……えっと、キスなんてしようと思ってなんかいないんだから」
「誰もそんなこと聞いてないから」
「おにいちゃんがしたいって言うんだったらしてあげてもいいけど? あ、先に言っておくけどわたしは気が乗ってるわけじゃないから勘違いしないでよね」
今度は使い方が正しくなったようで。正しいツンツンぶりを指導したところで何も得るものはないと思うが。
かまわず更に美央が迫ってくるので、俺は美央の顔を手で横に避ける。
「朝からいい加減にしろ……っ」
「あうあう、この流れだったらいけそうな雰囲気だと思ったのに……」
「いや、どこにもいけそうな雰囲気なんてないから」
「おにいちゃんも素直じゃないなー。ちょっと嬉しかったくせにー」
美央が俺の頬を人差し指でつつく。なるほど、態度のツンツンとつんつんつつくのをかけてると。
……こんなことを考えた自分が嫌になった。




