23.お財布に優しく
「それ、さすがに肌出しすぎなんじゃないか……?」
「えー、そうかなー? けっこう周りの子はこのくらいはしてるよ? あ、でもわたしのからだを独り占めしたいんだったらおとなしいカッコにするけどね!」
「どうしてそんな話になる……」
策略にまんまとはまり、美央の言うことを聞かなければいけない空気に流されてしまった俺は、結局美央の服を本気で選ぶことと、その服をプレゼントするということでカタがついた。
一応財布にそれなりの金額は入っている。こんなこともあろうかと、とまでは思っていなかったがなんともならないわけではなさそうだ。
「心配しなくても、ここは高校生のお財布に優しいお店だから安心してね。美央ちゃんの選んでる服もそんなに無理しなくてもいいお値段のものだし。ふふ、美央ちゃんってやっぱり優しい」
これが美央が三度目の試着に入った時の店員さんの言葉。
女の子の服はよくわからないが、店員さんが言うならそうなんだろう。適当に服を手に取ってみると、予想していたより大きな数字は書かれていなかった。店員さんが「でしょ?」と微笑んでいる。
しかし、優しい云々を抜きにしても少しくらいは値段のことを考えてもらわないと困る。
「私だったら遠慮せずに選んじゃうけどなー」
……ここに例外の人がいるみたいだけど。
この店員さんもずいぶんぶっちゃけてくれるね。まあ、何も言わずにやられるよりはよっぽどいいんだろうけど。
とはいえ。
「彼氏はきっと大変ですね」
「それ、どういう意味なのかなー? って、そのまんまの意味か、あはは。ま、だから彼氏もできないんだね。いるように見えたみたいだけど、いないんだなーこれが。ねね、あなたが立候補してくれる?」
「は、はは……」
圧倒されて、何も言うことができない。よくもここまでマシンガンのように言葉が飛び出してくるものだ。しかも社交辞令をここまであっけらかんと。
で、もちろんお約束の出来事がこのあと起こってしまうのだろう。
「むー」
美央の睨みのおまけつきで。