2.寝起きアタック!
美央は俺に馬乗りになる形で足を開いてまたがっていた。
俺が勢いづかせて体を起こしたものだから、美央との距離は危うくアクシデントを起こしそうなほど近くなっていた。
「もー、朝からこんなに近づいちゃってー、どきどき。あ、おはようのちゅー?」
んー、と美央が口を尖らせて俺に近づいてくる。
何がんー、だ。せっかく心の中で『アクシデント』という言葉でオブラートに包んだ表現をしたというのに、直接言いやがって。
「ふざけんな朝っぱらから」
「あうっ、朝から愛のムチを受けるわたし……でもそんなおにいちゃんが好きー」
「はいはい」
とても付き合っていられない。
7時に寝ているとマズい理由は、まあ要するにそういうことだ。
その時間になると必ず美央が無断で部屋の中に入ってくるので何をされるかわからない。だからこうして早めに起きているわけだ……が、ちょっと待てよ。
「そもそもなんで7時になってないのにここにいるんだよ」
「だってー、おにいちゃん今日まで1週間連続でちゃんと起きちゃうんだもん。そんなにわたしの愛を受けるのがイヤなの? しくしく」
「兄妹愛でとどまるくらいだったら一向に構わないんだが」
「あう……兄妹が織りなす禁断の愛……とか、どうして認められないの? どきどきするでしょ? 世の中おかしいよ……」
こいつ、頭どうかしているんじゃないか。本気で心配になる。
自分で禁断と言っておいて世の中おかしいってのは矛盾してないかとも思う。つっこみどころはそこじゃない気もするが。
しかしいちいち指摘していてはキリがないので全力でスルーさせていただく。話を先に進めることにしよう。
「じゃあ、着替えるから」
実質、出てけのサイン。
しかし、この妹は思う通りに事が進むのを期待してはいけないらしい。
「うん、わたしもー」
「ストップ、ストッープ! ここでパジャマを脱ごうとするなー!」
こうして、また妹に振り回される一日が始まるのだ。