1.午前7時の攻防
うっすらと、目を開ける。
飛び込んできたのは、6時58分を差す針の表示と、それを震源とする頭に響くベルの音。
正直、朝から聞くには不快この上ない。ほら、さっきそいつのことを震源と表現したけど、そのデカい音で本当に小刻みに揺れてるし。
「よし……」
その物体の上部を手のひらで叩きつけ、おとなしくさせた。
と同時に、ほっと一安心する。
というのも、だ。
7時になっても起きなかったら面倒くさいことが起こるため、それより早い時間に目覚ましをセットして回避しないといけないのだ。
おかげで、不本意ながらすこぶる健康な朝を毎朝迎えている。これで回避連続7日目、すばらしい記録である。
まあ、その猶予時間を2分っていうギリギリに設定している俺もどうなんだ、と思いはしてみるものの、そこはやはり寝られるだけ寝ていたいという欲望に従っているんだ、と誰に言うわけでもない言い訳をして。
「いけね……そんなこと言ってる間に7時になっちまう」
7時になったら何が起こるかって?
まあ、それは時間になったら俺の部屋のドアを見てくれれば分かるというもの。
枕の右横に置いてある時計に寝る体勢のまま向きを変え、7時のカウントダウンをはじめて、3、2、1……
「……ん?」
その延長上にあるドアが……開かない。
いつもだったらあのドアがバーンと開いてダッシュで俺の寝ているこのベッドにダイブして近所迷惑も厭わない大声で……
「おっはよー! おにいちゃん!」
「そう、こんな感じで……って、なんだとっ!」
俺はその声がした、聞き間違いでなければちょうど俺の身体の真上から聞こえてきた方向に上半身を起こす。
そこには、俺の妹である美央がいた。