私は準急で。
駅のホームに止まるのは二つの列車。
急行と、各駅。
二つを見て、君は「急行に乗ろう」と言った。
早い方が好きだもんね。
でもさ、急行に乗る必要はある?
そんなに急ぐことはないと思うけどなあ。
二つを見て、君は「各停に乗ろう」と言った。
遅い方が君らしいよ。
でもさ、各停なんて乗りたくはないよ。
毎回毎回止まってたら、日が暮れちゃう。
閉まるドアの向こうに君がいる。
私はそれを何も言わずに見送る。
急行に乗る君を。
各停に乗る君を。
そして、わたしは、ひとり。
しばらくして、静寂を破るアナウンス。
やってきたのは準急。
「準急に乗ろう」という君はいない。
だから、わたしは、ひとりで。
乗って行ってみるよ。
私は準急で。
急行に乗った君を追いかけて。
各停に乗った君を追い越して。