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晴吉(はるきち)日記  作者: 下町 晴吉
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晴吉が我が家にやって来た

『飼い主さんのお家へ』《名もないビーグル犬》


オレはビーグル犬、名前はまだない。

先週やっとオレの飼い主さんが決まって、今日その飼い主さんがオレをお迎えにやってきた。優しそうなパパさんとママさんだ。

これまでオレのお世話をしてくれたペットショップの店長さんやお姉さんたちとのお別れは寂しいけれど、新しい飼い主さんのお家に行けるのは楽しみだ!


オレはママさんに抱っこされて、新しい飼い主さんの車に乗り込んだ。パパさんは、前の方に座って丸い輪っかを握って車を運転してる。

オレは新しい買い主さんと一緒にいれることが嬉しくて嬉しくて、オレと一緒に座ってくれたママさんの顔をペロペロペロペロした。これはオレ流のご挨拶だ。

ママさんは「やめて、やめてー!」と甲高い声でとても喜んでいたので、オレはサービスで、更に念入りにペロペロを続けてあげた。ママさんはとてもいい匂いがしていた。


お家に着いた。お家は高ーい建物だった。駐車場で車を降りると、つい今し方から降り出した弱い雨に濡れた地面から、何か今までに嗅いだことのない良い臭いがしていた。


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「晴吉が我が家にやってきた」〈パパさん〉


僕の家に犬がやってきた。犬種はビーグル犬。その日は10月下旬で秋雨が静かに降る日曜日の午後だった。8月21日生まれのその犬は、ちょうど2ヶ月を超えたばかりの子犬である。


人懐っこいこの子犬は、車の後部座席に妻と一緒に座り、家に着くまでの間、妻の顔を始終舐めまわした。妻は後部座席で始終悲鳴を上げ続けた。


家に着くと、落ち着かない様子のその犬はリビングを走り回った。とんでもなく元気である。2kgをちょっと超えたばかりのその子犬は、ちょっとやかましくはあったが、ただただ可愛いばかりだった。


名前は「晴吉はるきち」と名付けた。家に来たのは秋雨がしとしとと降る昼下がり。秋晴れを祈って高3の娘がつけた名前である。最初は“何と古めかしい名前”と思ったが、呼び慣れてくるとなかなか個性的で良い名前と思えるようになった。普段は「はる!」と呼びかけることが多い。


ワクチンを一通り打つまではお散歩はできないが、外の空気に慣れさせるために暫くは抱っこをして家の近所をうろうろした。季節が徐々に冬に向かう中、ジャンパーの中に晴吉を抱えて歩いた。晴吉は興味深そうにジャンパーの懐から顔を覗かせ、目を輝かせて辺りの風景をキョロキョロ見回した。時々車やバイクの騒音にはビクついて、クゥーンと不安げな声を漏らした。そんなお散歩を時間のある時に3週間ほど続けた。


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『我が家』《晴吉》


お家は高ーい建物の4階だった。お部屋はいつもきれいに整理されていた。

ママさんはかなりきれい好きな人で、しょっちゅうお掃除をしていた。

オレはけたたましい音をたてて目の前の落ちているものを根刮ぎ吸い取る掃除機なるものが気になって、ママさんが掃除を始めると、毎回掃除機に戦いを挑んだ。暫く戦った後に、毎回決まってママさんに首根っこを掴まれて、クレートの中に入れられた。一度クレートに入れられたら、足をジタバタさせて暴れてみたり、クーンと甘えた声を出してみても掃除が終わるまでは出してもらえなかった。


パパさんは家では“オトタン”と呼ばれていたので、オレも"オトタン"と呼ぶことにした。

オトタンはオレを外に連れてってくれたり、ご飯をくれたりする。とても良い人だ。

オトタンは家族の中で唯一、顔を舐めても嫌がらない。いやむしろ嬉しそうにするので、オレはオトタンの顔はいつも念入りにペロペロしてあげることに決めた。


この家にはもう一人女の子がいて、"ネェネ"と呼ばれている。ネェネは"受験生"なのだそうだ。普段は自分の部屋の中で机に向かって勉強してるのだが、この前チラッと様子を見に行ったら、絵が沢山描いてある本を読んでいた。漫画というらしい。

ネェネは「内緒だよ。」と口元に人差し指を立てて言ってきたので、オレは『オレしゃべれねーし』と伝えるために『ワン』と一言返事をしておいた。


それで、オレはというと「晴吉はるきち」と命名された。みんなからは「はる」とか「はーちゃん」とか呼ばれることが多い。ママさんは、怒っている時は「晴吉!」とか「はる!」と呼び、機嫌の良いときはちょっと高めの声で「はーちゃん♪」と呼ぶ。オレも「はーちゃん♪」と呼ばれた時は尻尾を振って近づくことにしている。


これがオレの新しい家族で、ここが我が家だ。これからのみんなとの生活が、とても楽しみなのである。

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