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第5話 検査

「その時は君を領主にしよう」


 領主。

 僕は別に出世欲が高いわけじゃなかったけど、なぜか心が弾んだ。


 帝国に復讐したいという思いが、心のどこかに芽生え始めていたからかもしれない。


 馬車に揺られ続け、僕はトレンス王国に到着した。


 その間、僕の正体に気づかれる事はなかった。


 ライル・ブランドンの名はかなり有名である。


 僕の顔はそこまで人の印象に残るタイプではない。肖像画なども出回っているが、全然似ていないので、民間人が僕を見て、ライルだと気づく事はなかった。


 トレンス王国をそのまま移動し続けて、アーケンハイルという都市に到着した。


 どうやら、シンシアが治めている都市のようである。


 中央に城のある、城塞都市であった。


 僕はその城に案内される。


「ここが我が城。アーケンハイル城だ。入りたまえ」


 城の中に通された。

 大きなホールを通り抜け、廊下を歩き、小部屋に入った。

 何もない部屋だった。机や椅子、タンス、何一つ置かれていない。


 シンシアの騎士ファリアナが、しゃがんで床をいじる。


 すると、床のタイルがずれて、穴が出現した。


 梯子がかかっている。

 ファリアナが最初に梯子に手をかけて、降り始めた。


 シンシアも続いて降りる。


 顔だけ見える状態で、


「何をしている。降りるぞ。来い」


 と僕に指示を出してきた。


 シンシアの指示に従い、僕は梯子を渡って下に降りた。


 降りると、通路があり、そこをしばらく歩く。


「あの……この先に何が……」

「成長魔法の数が測れる特殊検査紙だ。分かりやすい場所に置いてはいけないからな」


 こうやって、厳重に隠しているんだ。面倒な。


 数分歩くと、扉があった。


 先頭のファリアナが、鍵を取り出し、扉の錠前を開けた。


 扉を開く。


 この部屋に、検査紙があるのだろうか。


 ファリアナ、シンシアが中に入り、僕も続いた。


 部屋の中には、金庫があった。その金庫を開錠し、中から紙を取り出した。


「早速測らせてもらう」

「は、はい」


 シンシアは僕の頭に、特殊な魔法紙を当てた。


 そして、文字が浮かび上がってくる。


 シンシアはその結果を見て、ニヤリと笑った。


「やはり思った通りだ」


 最初に測った時のように、文字が小さすぎて確認できない、ということにはなっていなかった。


 使える僕が使える魔法は十五。


『グロー』

『サーチ』

『ローマジックアップ』

『ハイマジックアップ』

『フィジカルアップ』

『フィジカル・リミットアップ』

『テクニカルアップ』

『テクニカル・リミットアップ』

『インテリアップ』

『インテリ・リミットアップ』

『スキルアップ』

『オールアップ』

『オール・リミットアップ』

『オール・マジックアップ』

『オール・スキルアップ』


 どれも聞いたことのない魔法だった。

 効果が分からないが……恐らく成長魔法と言うからには、何らかの能力を上げるものなのだろう。

 オール・マジックアップ以外の魔法は、全て百回以上使うことが出来た。魔法によっては一万回使える物もある。


 今までで一つの魔法で使える限度数は、1000回が最高だった。一万回は見たことがない。


 もしかしたら、ほかの魔法より、僕は成長魔法が得意なのかもしれない。


「ライル。君は最高だ」


 シンシアは満面の笑みを浮かべて、そう言ってきた。


「約束通り、君には領地を授けよう。一つ条件があるがな」

「条件?」

「私の手助けをして欲しい」

「何をすればいいんですか?」

「君は噂を聞いたことはないか? 私がトレンス王国の独立を企んでいると」


 僕はシンシアと初めて会った日を思い出した。

 ルベルトが確かに、そんな噂の話をしていた。


「その噂は本当だ。だが、一つ付けくわえる必要がある」


 シンシアの声は少しづつ大きくなり、凄みを増してきた。


「トレンス王国は帝国から独立し、そして、帝国を打倒する。それが私の使命である」


 強い意思を感じる瞳でそう宣言した。


 僕の成長魔法を打倒帝国に使いたい、というわけか……


 シンシアを心の底から信頼することは出来ない。

 だが、断るという選択肢はなかった。秘密を洩らした彼女が、断った僕に何をしてくるか分からない、というのもあるが、それ以上に打倒帝国は僕の望みでもあった。


 皇帝陛下……いや、ルトヴィア帝国皇帝アーネスト・シュータッドに、僕が虫ケラなんかじゃないと、分からせてやりたかった。


「私はお前を助けた。だから私の手助けをしろ」


 それは頼みではなく、命令であった。


 僕は少し頭を下げ、


「分かりました。協力します」


 そう宣言した。


 その瞬間、僕の打倒帝国を目指す日々が始まった。


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