第34話 大活躍
僕は兵を率いて、進軍を開始した。
アーケンハイル城にシンシアは兵を集めるようだ。
まずそこに向かって進軍を行う。
戦に参加した経験は、僕はかなり多いけど、兵を率いた経験はない。基本的に単独で魔法を使いまくっていた。
今は進軍するだけなので、そこまで問題は起きていない。
いざ戦が始まったら、ルベルトさんやファリアナの力を存分に借りることになるだろう。
数日進軍を続けて、アーケンハイル城に到着した。
シンシアに付いた反帝国派の兵士たちが、大勢集まっていた。
内心帝国の属国になっていることを良く思っていなかった人たちが、これほどいたのかと思った。
いくら帝国が絶対的に強力な国家だと言え、それでも属国のままなのは嫌なのだろう。トレンス王国も歴史ある国だし、プライドがあるはずだ。
「よく来てくれたライル!」
「シンシア様」
シンシアが出迎えてくれた。
彼女は普段の格好とは違い、鎧を身にまとい、腰から剣を下げていた。
今回の総大将はシンシアである。武装するのは当然だと言えるだろう。
それから、戦前の景気を付けるため、宴会が行われた。酒や料理などが振る舞われた。
それから翌日、本格的に軍議を行う。
シンシアの方で、細かい作戦は考えていたようで、今から何をするかを考えるのではなく、作戦の確認を行う軍議だった。
今回の挙兵に親帝国派も、もちろん反応し兵を集めているようだ。
親帝国の総大将は、トレンス王国の国王、つまりシンシアの父親である。さらに帝国からの増援もあり、確実に兵数では敵の方が上らしい。
敵を上回るほどの兵数は用意できなかったが、国王に敵対する勢力を、ここまで大きく出来たのは、シンシアの政治力が高いからなのだろう。
僕たちは戦の先陣を任されることになった。
最初に戦うというのは間違いなく責任重大だ。
緊張感はあったけど、高揚感もあった。
強化した兵たちが、実戦でどれくらいの力を発揮できるのか、それを知るにはいいチャンスだ。
「期待しているぞライル。君の力を見せてくれ」
「はい! 必ずや戦果を上げてみせます!」
シンシアに言われ、僕はそう返答した。
そして翌日。
シンシア率いる反帝国軍が進軍を開始した。
目標は、親帝国派の持つ拠点、ドンタード砦である。
非常に堅牢な砦で、ここを落とすと相手も大損害を受けることは間違いないので、必死で守りにくるだろう。
親帝国派は、まずドンタード砦の近くにある、カイロン平原に布陣して、砦への侵攻を食い止めようとしていた。
この平原にいる兵を無視して、ドンタード砦を落とす事は出来ない。野戦になると思う。
順調に進軍をして、カイロン平原に到着。
敵兵と睨み合う形になる。
先陣の僕たちは先頭にいた。
僕はハクシュトアの兵を前線で率いるため、一番前にいる。
シンシアの合図があり次第、先陣を切って戦うつもりだ。
僕たちは合図を待つ。
角笛の音が響いたら、開戦の合図だ。
数秒後、戦場に笛の音が鳴り響いた。
僕は、その音を聞いた瞬間、自分が使える最上級の魔法を一撃、敵軍にお見舞いした。
僕に続いて、ルベルトさんとアッシュも一回だけ上級の強力な魔法を敵軍に使用する。
最上級の魔法も、今の僕はそれなりに多く使える。後の戦のことを考えればここで全部使うわけにはいかないけど、ある程度初戦でインパクトを与える必要があると思い、使用した。
遠目から見ても、効果は絶大だった。敵兵は予想外すぎる強力な魔法攻撃に慌てふためいている。
「突撃!」
僕は剣を抜き、そう叫びながら、敵軍に走って向かった。
実戦で接近戦を行うのは初めての経験だった。
それでも、技能もかなり上がっているので、あまり苦戦はせず敵兵を斬り倒していくことができた。
「な、何だこいつ!?」
「う、動きがはやっ!?」
敵兵は僕のあまりの動きの速さに、戸惑っていた。
それもそうだと思う。僕みたいに動けるやつがいたら、僕もビビるし。
ハクシュトアの兵は、僕ほどじゃないけど、皆精鋭で構成されている。
敵兵を次々に討ち取っていく。
怪我をした場合は、すぐに下がるように言ってある。今回の戦では、魔法兵は後方支援に回る。遠距離の攻撃をして敵を崩したり、怪我した兵たちを治したり、敵の攻撃を防御魔法で防いだりなど、様々なことを行う。
指揮は僕じゃなくてルベルドさんとアッシュが行っている。二人に任せれば安心だろう。
戦はほとんど一方的に進んでいった。
先陣の僕たちが、敵兵を崩して打ち取りまくり、それから後方にいる本隊が敵陣に雪崩れ込んで、敵兵は総崩れになった。
もはやまともに統率が効いておらず、逃げ出す兵も続出している。
そもそも、あまり優秀な指揮官がいないようだった。
全く損害を出さずに、カイロン平原の戦は快勝。
そのままの勢いで、ドンタード砦も陥落させた。
緒戦で僕たちは大戦果を上げることに成功した。




