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第27話 秘密

「ライル様、シンシア様がライル様に登城せよとのご命令です」


 ハクシュトアに戻ってきたファリアナから、僕はいきなりそう言われた。


 登城せよとはアーケンハイル城に来いってことだよな。


 領主になったとはいえ、王女であるシンシアの命令は無視は出来ない。


 というか、命令には従うつもりだ。


 シンシアは僕を救ってくれた。


 こうやって領主をやっていられるのも、彼女のおかげである。


 無視は出来ないだろう。


 それに今回の命令は登城せよとの事で、シンシアと直接会うことになるだろう。


 領主としての報告であったり、領主になれたことへのお礼などを、自分の口から言いたかった。


「分かりました。行きましょう」


 僕はそう返事をした。


 すると、僕の近くで立って話を聞いていたレンティが、


「もちろん私も行きます!」


 と言ってきた。


「同行は問題ございませんが、外部に漏らしてはならない会話もいたします。城では一時的にライル様と別れることになりますがよろしいですか?」

「が、外部に漏らしてはならない…ですか? 私はライル様に身も心も捧げた女ですよ。ライル様の不利になるような事は……」


 身も心も捧げたって、しれっととんでもないこと言ったんだけど。


 ファリアナの目が少しいつもより冷たい気がする。

 あれ? なんか誤解されてる?


 いや、レンティに手を出したりは、してないんだけど。身を捧げたとは勝手に言ってるだけなんだけど。


「ライル様との関係性は理解しましたが、それでも駄目です」

「そ、そうですか」


 レンティは少しがっかりした様子だ。


「あとライル様。女性と交際するには構いませんが、その場合はきちんと責任をとってくださいね」

「いや、交際してませんから! 誤解ですからね!」

「そうですか。なら良いです」


 ファリアナはやっぱり誤解していたようだ。


 僕は城に行く準備をする。

 領民たちにまず事情を説明する。


 僕がいない間、ラーマスとの取引はルートに代行してもらうことにした。


 その後、僕たちはアーケンハイル城に向かった。





「よく来たなライル」


 アーケンハイル城の謁見の間に通され、僕はシンシアと久しぶりに会った。


 シンシアは豪華な椅子に座って、僕を迎えた。


 ファリアナは隣にいるが、レンティは途中で止められた。


 同行が許されているのは、事前にシンシアが許可をした者だけで、レンティが来るという話は聞いていなかったのだろう。


 非常に美しい容姿と、意思の強そうな燃えるような瞳は、前会った時からちっとも変わっていなかった。


「お久しぶりです。シンシア様」


 僕は頭を下げて挨拶をした。


「君の話はファリアナから聞いたよ。よくやっているそうではないか」

「何とかやれていると思っています。これもすべてシンシア様のおかげです。誠にありがとうございました」

「礼は良い。私は自分の利益のため、君をハクシュトアの領主にしたのだからな」


 シンシアは椅子から立ち上がる。


「実はハクシュトアの領主にしたのは、君をテストするためでもある。本当に信用するに値する人材かを、測っていたのだ」

「テスト……ですか?」

「そのテストに君は見事合格した。着いてまいれ」


 シンシアがそう言った。

 僕とファリアナは彼女の後をついて行く。


 以前、僕が成長魔法を教えて貰った、隠し部屋まで案内された。


「実はあの時の成長魔法の検査紙は、不完全な物だったのだ。今から完全な検査紙で君の成長魔法を測ろう」



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