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第23話 戦利品

 降参して湖賊たちは、全員縄で捕縛した。


 降参したので、その場で殺したりはしないが、罰を与えないわけにはいかないので、最終的には処刑することになるかもしれない。


 まずはロンドを解放した。


「お父さん!!」


 レンティは泣きながらロンドに駆け寄って抱きついた。


「痛い痛い! 怪我してるから!」


 ロンドは顔をしかめてそう言った。

 盗賊に暴行されて、身体中が痛いのだろう。


 レンティはロンドの言葉を聞き、慌てて離れる。


 ロンドはそのあと、立ち上がり俺に近づいて来て、


「ありがとう……娘を助けてくれてありがとう……」


 ロンドは号泣しながらそう言った。

 自分が助かったことより、娘のことでお礼を言ってきた。

 よほどレンティを愛しているのだろう。


「レンティさんを助けたのは僕じゃなくて、ファナリアさんですから。彼女にお礼を言ってください」

「もちろん言うさ。だがあんたの力で皆の才能が見つかっていなければ、湖賊に勝つことは不可能だっただろう。ありがとう」


 三度目のお礼をロンドは言ってきた。


 その後、ファナリアにもお礼を言った。


 しかし、彼の怪我は痛痛しいな。

 全身あざだらけだ。


 治してやった方が良さそうだ。


 ルートは攻撃魔法ではなく、回復魔法を使えるようになっている。


 見たところあざがあるだけなので、低級の回復魔法でも十分治るだろう。


 僕はルートに低級回復魔法ヒールを使うように頼んだ。


 ロンドのあざがみるみる癒えてくる。


 一気に体が癒えて、ロンドは驚いた表情で自分の体を見た。


「すぐ治りやがった。ルート、お前なんで魔法が使えるんだ?」

「あー……領主さんは魔法が使えるかどうかも、見れば分かるらしくてな。俺には魔法の才能があったってわけだな」


 咄嗟に機転を利かせて、ルートは嘘をついた。


「マジかよ。凄いな」

「てか平民でも魔法って使えるのな……貴族しか無理だと思ってたぜ」


 驚きの声が次々に上がる。


「おい! こっち来てみろ!」


 バイアーの声だ。外の方から聞こえる。


「何でしょうか?」

「こっちだ」


 バイアーは湖に向かって歩き出した。


 ついて行くと、立派な船がとまっていた。


 どうやらさっきの湖賊団が使っていた船のようだ。


 少し古びているが、まだまだ使えそうである。


「あいつらこんないい船持っていたのかよ」

「盗みまくって金だけは集めてたんだろ。ムカつくぜ全く」


 これって、ちょっと改修すれば交易船とし使えそうだ。


 湖賊の物だし、押収しても誰も文句は言わないだろう。


「この船、貰っちゃいましょう」

「だな。湖賊どもを倒したから、当然の権利だ」


 バイアーはそう言って船に乗り込んだ。


「おーい! この湖賊どもすげぇ宝溜め込んでたぜ!! 戦利品だ!!」


 今度はルートの声だ。

 非常に嬉しそうである。

 金はやはり大好きなのだろう。


 宝も捕縛した湖賊たちも、全部船に乗せて運ぶことに。


 船の操縦はロンドが行う。


 彼は、大きな船を動かした経験は、あまりないようだが、何とかなるだろうと言っていた。


 僕たちは帰りは船で帰ることになった。


 ちゃんと進むか不安だったが、ロンドさんの操舵は確かで、安定して船は進んでいった。


「湖賊を退治し、そして交易船を手に入れ、宝を手に入れたので資金も入手できました。かなりの戦果です」


 ファリアナは無表情だったが、何となくいつもより嬉しそうな声色に聞こえた。


「あの……」


 後ろから遠慮がちに声をかけられる。


 ロンドの娘レンティである。


「父さんと私を助けてくれて……本当にありがとうございます。それから今まで悪く言って、本当にごめんなさい……」


 お礼を言った後、頭を深く下げて謝ってきた。

 とても申し訳なさそうな表情だったので、心の底から謝っているのだと思った。


「他所から来た人が領主ってのには、誰だって抵抗すると思いますし、謝る必要はありませんよ」

「そ、そんなわけにはいきません! お詫びに、今からライル様の言うこと何でも聞きます! 身の回りのお世話もします!」

「え、ええー!? そんな事しなくていいよ!」

「やります!」


 凄いやる気を出してそう言った。

 レンティは根は真面目な性格なのだろう。


 その後もやらないでいいと言ったのだが、レンティの気を変えることは出来なかった。


 僕たちはハクシュトアに帰還した。


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