在るか無いか、簡単だけど
まるでただの火の玉とは思えない。
見たことないくらい鮮明だ。その玉は燃えている……が、兄貴分の手は燃えないのだ。なぜか理由がピンときた。
あれはそう...
「兄貴分」
「あ?なんだ?」
「生き生きしてるね、その魂。」
兄貴分の顔に驚愕の色が塗りたくられた。
「ッお前……」
「なんでそれが「だって、ただの炎が兄貴分に燃え移らないのは浮いてるのもそうだけどおかしいよね。」驚愕の色が深まった。「でも、だからといってちゃんと燃えてはいるんだから、何かしら炎の類ではあるよね。」驚きに加えて恐怖も見えてきた。しかしここでおはなしをやめるのは興ざめだ。続ける。「そこで、人魂ってあるじゃん?僕はあれをあまり知っているわけじゃないけど、それに近いんじゃないかなって、思ったんだ。」
「……それが生き生きしてるっていう理由にはならねェぞ。」
そうそう、余りに楽しいものだからそれを忘れていた。
「大丈夫、推測だけどまだあるよ。それがほんとに〖人魂に近い何か〗なら、それは勿論、魂の持ち主がいるはずだ。……ここまであってる?」
「ああ…あってるよ……」
「持ち主が誰か、流石に、ここまで言えばわかるよね?」中学生と思われる人に指をさす。
「言ってみて。」
「……兄貴?」
兄貴分に振り向く。
「さぁ、どうなの?」
すると兄貴分は物凄い笑みを浮かべて言う。
「ああ、そうだ。すげぇな、ガキンチョ。」
こちらも笑みを返し、言う。
「でしょ?でもまだ理由を説明してないよ。」
「いや、もう十分だ。」
「えぇー」
…ここまで話したのに?
「…そうだなァ、なら、こういうのはどうだ。」
「どんなの?」
面白そうなので食いついた。ここで後悔なんてするはずがない。
「お前が俺の子分になる代わりに、魔法を教えてやるよ。」
あァ、どうしよう!嬉しすぎて顔が……
「分かりました。師匠!」
「師匠?兄貴じゃなくてか?」
「はいっ!師匠は師匠です!」
師匠は少し驚いた顔をして、笑う。
「まぁいいけどよ。」
____で、いつ教えてくれるんですかぁー!師匠!」
「お前ほんとに我慢できねぇのなァ……」
「ちょっとぐらい待てよな!」
「そうだそうだ!」
「あぁんなこと言われてじっくり待てる卒園生なんて、どこにいるっていうんですかぁ?」
「えっじゃあお前………今日あの…近くの幼稚園卒業した感じ?」
「うん」うんと言う間にも、大きなゴミ箱の蓋に寝そべって、足をバタバタさせる。こうでもしないとちっとも落ち着かない。
「お前な...魔法を教えてやると言ってから、まだ3分だぜ?」
師匠が懐中時計をぶら下げて言う。
「その3分の間に出来ることって、いっぱいあると思うんですよ。」この足を何回バタバタさせられるか、とかね。
「ァあ!お前はお喋りまで得意なんだな!」
「ありがとうございます!」
褒められたので、笑顔で返した。
「皮肉だよ!気づけよッ!」
「……皮肉ってなんですか?」
「ああああああああああああ!」
「師匠がおかしくなっちゃった……」
「あ~あ、お前のせいだぞ~」
「まぁ、卒園生に皮肉を知れというのも無理な気はするけどねー」
「じゃあちょっと寝よっと。」
「「「?????、いきなり?」」」
「こんなんで俺は魔法を教えることが出来るのだろうか………」