君にとって、美しいものは?
この時、この場所で君に会えるなんて思いもしなかった。
________君だ。
でも、会えた。
_____勿論、君だ………!
僕がこんなおかしくいられる理由、それが、それがっ!!
_____君なんだよっ……!!!
今にも泣きだしそうだ………!
_____間違いない。間違えるはずもない。僕は、君が東京に居ると、
知っていたからっ………
つまり僕は_____「あっ」
「誰かこっち来るよ?」すぐに走り出す。
「ごめん。」
レストランの裏、その奥へ………!
………そこは路地裏、決して言い切っていいわけではないが、
大抵の人はいい印象を抱いていないだろう。『危ない奴らがたくさんいるような所』と。
危ない奴らとは何を指すか、勿論、不良である。否、不良以外にも色々いるにはいるのだが、
それを今言うべきではないだろう。
なにせ、今ツムギを囲んでいるのは、まさにその不良であるのだから。
どうしてこうなった。
なぜ僕は、不良に囲まれているのだろうか。もしかしたらさっきのままあの場所で隠れていた方が良かったのかもしれない、と思わないでもない。………不良たちは大学生位の年齢と思われる変わった見た目のまとめ役が1人、もう一人の高校生、小、中学生の子分が3人といった構成で、こちらを見つけるなりまとめ役が寄ってきて、それを見た子分たちも便乗してやって来て、囲まれたという流れだ。
「あッははァ!こいつ固まってやんのー」
「なんだぁ?ちびっちまったか?え?」
「にしてもこいつ………男か?」
「服装から見て男でしょ、なに言ってんすか?」
なんか……からかわれてる?
でも、こういう時、どうしたらいいんだろうか。
初手でもう固まってしまったので、何をしようともタイミングが難しい。
「どうするよ。こいつみてェな奴は珍しいからなァー」
「おっそうだ、アレとかどうです?」
アレとは?
「おっそれいぃいなァ~、やるか。」
「じゃあ持って来るからァよ。ちょっとそこで待ってろや、ガキンチョ。」高校生ぐらいの不良はそう言って路地裏の奥へ行く。
「あ、逃げたら全員でボコボコするからな?「「「逃げんじゃねェぞー」」」」
そう言われてしまっては逃げようがない。ボコボコの刑は嫌である。
少しして不良たちが戻って来た。
「じゃっじゃーん。『ヒックリカエ―シ』っつーボードゲームだ。やろうぜェ?ガキンチョよォ?」
いやそれオセロや。
「ア”ァ?やんねぇのかァ?」
「……やります。」
「んじゃ、やろうぜぇ………ルールはわかるよな。」頷く。
そうして始まったオセロ勝負。全面白で埋め尽くされるという結果になってしまった。
………僕が勝って不良が負けるという。
目の前の不良たちは啞然として、お口をポカンと開けている。
その中で負けた不良が小さな声で聞いてくる。
「なんだァ………お前ェさんよォ、もしかして天才……って奴かァ?」
「わかんない」
「………そうかァ。」
「あ、兄貴が...「負けた..「だと!?」
のこりの3人が仲良く驚く。
この人達面白い。
「ははっ」
笑ってしまう程に。
「なッ!なにが面白れぇんだよお前!「あ、兄貴はなぁ!お前なんかとは比べものにならないぐらいにはすげぇんだぞ!?「ほら!兄貴も!またアレ、見せてやってくださいよ!」
…だからアレとは?
「あー…
そうは言ってもよ、やたらと人前で見せていいようなもんじゃねェからなァ..」
「「「えー」!!」」えっ!なんか気になる、見たい…
子分たちと僕の視線が一点に集まる。もちろんそれは兄貴分だ。
兄貴分は段々面倒くさげに、頬を掻いて言う。
「しゃーねーな。簡単なのでいいかァ?」
「「「「はい!!」」」」
「よォーし。じゃ、いくぞ。」兄貴分は両手を前に出し、手のひらを上に向けて何かを掴むようにして開いた。
『この手に掴まれし炎よ、__それは、
魂を灯し、___僕が今の今まで、
姿を顕せ。』__待ち望んでいたものだった。
____今、【物語の扉】が、開かれようとしている。
さぁ、その目に焼き付けよ。
初めての魔法を。