美学っていうのがどういうものかは知らない。けどね、
「自分」の始まりは「脱線した」ことだった。
……「普通」や「正常」というある種の呪縛から。
「僕」の原動力は「君」と「世界」の……
そう、まずは「僕」の話だ、聞いてくれ。
この物語の主役、つむぎは、何故か幼い頃からファンタジーが大好きであった。
……魔法を使ってみたい。超能力を使えたらな、等と考え、思考し、想像し、時には眠気を飛ばす為に目を開き、鍛え、鮮明過ぎる視界に頭痛を覚える程度には好きなのである。
そんな(無駄な)日々を過ごしていたため、幼稚園の頃何をしたとか、誰がいただとか、ほとんど覚えていない、そんな小1予備軍(一人)が出来上がってしまった。
目が覚めて一番に窓の外を見る。
次に時計。
なるほど。今日の天気は曇りのようだ。
そして9時半に起きた。強面ドライバー トゥー・チンは
今日じゃないし、何して遊ぼうか。
___この日だった。僕の人生で最初の分岐点になったのは。
親が言うんだ。引っ越すって。
驚いたね。だって、それまでは東京の幼稚園からそのまま東京の小学校に行くと_
___そう___
______言ってたじゃないか。
僕は聞く。「なんで……」
母さんが言う。「……離婚するからよ。」
もう一度聞く。聞くことしかできない。「なんで!!……」
母さんは少し黙って、口を開く。「いいから。父さんが車で待ってるわよ。」
絶望だ。
僕が世界に絶望した瞬間だった。
心がざわめく。鼓動の音が大きい、望んだ未来は千切れ………させていいのか?
頭の中で悪魔の囁きが聞こえる。
『約束を違えさせるな』
『ここで動かなければ』
『死と何も変わらない』
______逃げなきゃ。
咄嗟に走り出す。
大丈夫、玄関は開いている。遠くへ行こう。
なるべく早く。
必死に走る。走る。走り続ける。瘦せた体を、追い詰められた鼠が猫に嚙みつくように、選択を迫られた未熟者が運命に抗う物語のように動かし、逃げるのだ...!!
後ろの方から父親の声が聞こえる。
___このまま走っても追いつかれるだろう。
ならばどこかに隠れようと、周りを見渡す。
近くにあるのは____路地裏。____焼き鳥屋さん。____ボロボロのレストラン。
路地裏は(ワクワクするけど)怖いし、焼き鳥屋さんは隠れる場所ないし……
よし!
誰も居なさそうなレストランに隠れよう。
取り敢えずレストランの裏。ありがちなごみ箱の中………は酷い匂いだから、やっぱりありがちな、裏口の段差のところ。そのあたりにもごみ箱があった。その物陰に隠れて、やり過ごす………
しかし見つかったら人生終わるのだ、心臓に悪いったらありゃしない。
____________声がした。......その声は。
「ねえ」
振り返る。
____その時、そこに居たのは...
心臓が肋骨を殴る。衝撃が肺へ、肺から喉へ、全身へ。段々呼吸が速くなる。段々顔が熱くなる。
赤くなった顔を手で隠す。
「ねえってば、大丈夫?どうしたの?こんなところで。」
...僕が恋をした君だった。
つむぎくんはちょっぴり変わった子です。そう、ちょっぴりね。