プロローグ
ここ、私立華澄学園はとある山奥にある有名な全寮制男子校である。
初等部から大学まであり、途中編入も可能だがほとんどの学生は持ち上がりで大学まで進学する。なぜこのような偏った条件かというと、企業の重役の息子たちや、ある分野で秀でた才能を持つ男子生徒に正しい教育をしていく上で、不純異性行為などのトラブルを少しでも減らすために創られた学園だからだ。寮は二人一部屋で部屋割りされており、高等部の間、一部の例外を除き同じルームメイトと過ごす。
千屋樹の同室者は所謂不良と呼ばれている人種らしい。
らしい、というのも実際目にしたわけではなく、この学園に通っていれば一度は耳にする噂だ。実際は樹が起きている時間に部屋にいることがほぼない上に、帰ってきているとしてもすぐ自室に篭ってしまうため同室者が何をしているのかどういう人間なのか全くわからない。たまに顔を合わせても話しかけるなというオーラを出されてはさすがの樹も何も言えないままだ。
「仲良くなれるきっかけとかあればいいんだけどなぁ」
ルームメイトと良好な関係で三年間を過ごす。樹が高等部に上がってからの一番の課題だった。