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17 ストレス過多/諸事情

 読者の皆様ゴメンなさい、これが今の限界。

 後で直すかもしれないです。




 エルダさんは、私の目をじっと見つめた。その真剣な目には先ほどの怯えがなく、ひたすら私を咎める色と、何か悲しみを抑え込む色が写っていた。



「ご無礼かとは思いますが、教えて下さい。お嬢様はアンリを知っていますか?」



 私はパチクリと瞬きをした。

 いや、アンリって……男性名だと思うが、誰? 我が家の使用人にそんな人いただろうかと脳裏を探す。だが、該当者はいなかった。


 貴族の可能性もあるが、それはないとすぐ否定した。

 孤児が貴族の伝を得るのは難しいからである。


 身分制度が絶対な中世である。身分が有って無い様な平民な孤児が貴族と面識があるのは考えにくい。

 また、貴族血筋の庶子である可能性も、彼女の髪色と目色が共に茶色であることを考えれば否定できる。


 それに、仮にあったとして、それを私へ言う理由がない。

 ただでさえ嫌われ狙われるイスカリオテ公爵家は、私へ案外過保護なのだから。特に脱走後は悪化しており、公爵家がピリピリしている今他貴族との関係をほのめかすのはアウトだろう。

 良くて監視、最悪(護衛経由で)間者疑惑で投獄か。そうなる前に院長が止めるだろうけど。



 さて、そうなってくると残された選択肢は孤児院関係になる。


 誰だろう。本当に心当たりは無い。

 ここへの慰問は私2回目で、職員とも児童とも、まだ知り合い未満の関係しか築けていないのだから。



「アンリ? 人名の様ですが、もしかしてこちらの卒院者でしょうか?」


「本当に知らないの? 」



 食い下がるように何度も尋ねてくるエルザさん。

 何度も幼少期のエピソードや共通の知り合いなら共感できたと思しきお話を振ってくるが、私はアンリくん? を知らないので困惑し、曖昧に相槌を打つしかできなかった。


 話し終えて、荒げた息を戻したエルザさん。複雑そうな顔で「八つ当たりじゃないこれじゃあ」と呟くと、頭を抱えたまま顔を突っ伏した。

 どうしようとオロオロしていたら、彼女は頭を上げた。


 そして、盛大に謝られた。



「本当に、本当に、ごめんなさい。


 お嬢様が物語せっかく持ってきてくれていたのにあんな……あんな、八つ当たりみたいなことをして。中断させて、雰囲気悪くして。本当にごめんなさい。

 頭ではわかっていたけどあの紙芝居? アンリのことを言われて責められている気がして、そんなつもりじゃ無いことはわかっていたのだけどどうしても耐えられなくて」



 あなたのことを誤解していたと謝る彼女。その周囲をやはり、光の玉が守る様に焦る様に舞った。

 一方、私も内心脂汗ダラダラになっていた。何故なら私付きの妖精がさっきからちょっと、いや、かなり過激モードになっていたからである。



[ねえ、こいつ本当に殺していい? ウザイし煩いし、面倒だし、生かしていても何の利益にもならないゴミ屑じゃん。なんでダメなの? さっきも話しの最中ルルちゃん嫌そうな顔をしていたのになんで?]



 僕なら証拠残さず殺れるのに。


 ため息混じりに脳裏で話す過激妖精ジャック。

 そんな殺意増し増しなエクストリーム発言に、内心ドン引きしていた。


 妖精とかファンタジーだ! などと喜んで意気揚々と精霊言語を学んだ過去の自分が今は恨めしい。普通の人には聞こえない波長の音での会話なので、今後色々と重宝すると思ったのである。傍聴きにせずストレスフリーで話せるとか。


 蓋を開けてみればこう、新たなストレス源になったという……胃が痛い。マリアンに帰宅後胃に優しいハーブ茶煎れてもらおう。


 仕方なくジャックをこっそり宥めていると、警戒した様子で白い球がこちらを伺う様に揺れた。

 そして、それに反応するジャック。



[お前もさぁ、仮にも大事な幼馴染ならこんなことになる前になんとかしておけよ]



 何か言いたげにピコピコする白球。

 お願いだから今のジャックを刺激しないで。多分暇過ぎて合法的に悪戯できる相手を探しているだけだから。


 だが私の願い虚しく、何か余計なことをジャックへ伝えたらしい白球。

 途端、殺気や威圧を感じ、端正な顔を歪め青筋を顳顬(こめかみ)に浮かべるジャックが脳裏に浮かんだ。


 ああやっちまったか。


 苛立ちを隠さず、大きな溜息を吐いたジャック。直後、低く怒りを孕んだ危険な声で静かに話し出した。



[お前ってさぁ……どこまでバカなの。というかそんな馬鹿でよく今まで死ななかったね、というか一遍死んでみる? いやよく考えればもう死んでいたよね。で、結局死んだのに馬鹿だけは治らなかったと……それで今自殺しようとしているわけだ。

 慈悲深い御仁にチャンスをもらったのにもう少し尊い命大事にしたら?]



 何でお前(・・)だったンだろうな、慈悲もらえたの。

 卑屈っぽい声でそう零したジャックは、咳払いをして再び話し出した。



[え、殺すなって? お前がやろうとしていたことを棚に上げて? まあ僕の主人は温いからあっさり許すだろうけど]



 あ〜あ、などと漏らすジャック。


 お願いだから死ぬような過激な悪戯は孤児相手にやめてくれと頼み込む。我が家に送られて来た暗殺者や危険な魔物相手だと重宝するのだが、こう、何故血の気が強いのか。


 その間にも白球が点滅し、何か抗議をしていた。

 私は胃をそっと、抑えた……後でハーブ茶の他にも胃薬用意してもらいましょうか。



[そんな風に、未練タラタラで中途半端なことしているからこんなことになったのだろう? 初恋こじらせるのはいいけど、やるならちゃんと面倒見ろ。それと、周囲に迷惑かからない範囲でやれ。次回ルルちゃんに迷惑かけるなら遠慮なく潰す。わかったか?]



 抗議する様に点滅したのは最初だけで、徐々にミュートしていった白球。

 今は小さく縮こまっている様に見える。何となく項垂れてしょんぼりしている雰囲気が伝わった。


 それにしてもさっきから、この妙な人間臭さ。

 ジャックの返事途中にあった『幼馴染』とか『先に死んだ』とか『初恋』なんて言葉から何となくアンリって人なのではと思い始めているのだが。確か故人の筈なので、それってつまり……


 幽霊だけは私苦手なのだが。思わず想像して身震いしていると、ジャックが再び話しかけてきた。



[さっきから殺気向けたりして色々悪かった。あいつがちょっと許せなくて……ところでゴミ屑女がなんか泣きそうになっているけどいいのか?]



 そう思っていたら、青かった顔のエルザさんが土気色になっていた。


 !! そうだった、謝られた件に関してスルーしていた。


 貴族相手に意見するだけでも結構勇気いる行為だっただろうに。最悪の予想をしたのか、涙目でピルピル震えていた。

 やばい、そんな攻める気なかったのに……慌てて、答えた。



「……失礼、でも本当に謝らなくていいのよ? エルザさんでしたっけ、貴方は悪いこと何一つしていないのだから」



 多分だが、私が無神経なことしたのだろう。それが何かわからないことが問題だが。

 エルザさんもイスカリオテ公爵家と縁ある孤児院にいる以上、敬虔な信者というわけではなさそうだし。何かしら事情があったに違いない。


 半泣き状態のエルザさんを何とか慰めていると、脳裏にジャックの舌打ちが響いた。



[……っチ]



 溜息混じりに「何か」と尋ねる。


 座り込んでビクリと震えるエルザさんの頭を安心させるようトントンと撫でた。

 その対応が原因なのか、苛立ちを抑えた声でジャックは答えた。



[このスクラップ女もお嬢様とか周囲を不幸にしようなんて数分前まで画策していたのに、いいのか?]


(ジャックはそれを、どうやって知ったのです?)


[妖精は悪意がわかるからだよ、ただ僕みたいな超絶スーパーな妖精は悪意ウ◯コ塗れの表層意識なら大体わかるよ?]



 ジャックの声が聞こえたのか、抗議するように点滅した白球。だが、ジャックの[黙れ!] という一言に怯み、再び小さくなった。


 成る程ジャック、確かに彼女は私へ危害を加えようと思っていたのかもしれない。大方さっき話にあったアンリ君の件だろう(それと紙芝居その他がどう関係あるのか未だ不明だが)



(特に害意がない現在、私にどうしろと?)

[…………………………]


 黙り込んだジャックへ追い打ちをかけるように問いかける。



(それよりも、ここで院長先生と『浄化』啓蒙活動しておいてもらったほうがいいと思うのですけれど……それとも私は、言い出しっぺとしてこの後50人弱の孤児相手に『浄化』習得補助をするのですか?)


[確かに……いや、でも危険物は早めに摘み取っておいたほうが]



 それはそれで真理だろうけど、私的にはこの子敵にならないと思うのである。むしろ一度仲良くなればずっと一途に関係続けそうだ、と。

 渋々今はいい、と答えたジャックに内心安堵した。


 そして再びエルザさんへ向いて、彼女へ尋ねてみた。



「ところで貴方とアンリ君でしたっけ、幼馴染で仲が良かったの?」



 私にはもうそういう(・・・・)相手が居ないの。よろしければお話聞かせてくれないかしら?



 尋ねてみると、彼女は語ってくれた。


 彼女が4歳の頃、商会を運営していた両親とその護衛だったアンリの父親冒険者が事故死したこと。その後アンリ共々ここへ引き取られたこと。


 年長組にご飯取られたり形見を壊されたりする等、いびられていた。だが、アンリが庇ってくれたのだ。それで右腕に怪我を負ったが、泣いた自分へ名誉の怪我だと一番辛い筈のアンリに慰められた。


 それから徐々にアンリが好きになり、将来一緒に商会を立ち上げようと話していた。その矢先に亡くなったアンリ。



 その死因は怪我の悪化。

 ここで「ああ、だからか」と納得してしまった。


 やっと立ち直り、雇ってくれた孤児院で独り頑張っていこうと決意したところでセンスなくそんな過去を掘り起こした私。悪気はなかったが、本当申し訳なく思った。

 謝ると恐縮されたが、本当、傷口抉る真似して申し訳なさで一杯だった。



[お前悪くないじゃん一切]



 ジャックよ、慰めの言葉はいらん。今大いに反省しているんだから!

 結局後で孤児院裏手にあるという墓へお参りすることにした。せめて祈らせてくれ、出汁にしたような感じですまなかったと。



 ただ、改めてこの世界が恐ろしく感じた。傷口の化膿(あるいは破傷風)が死因となることがこの世界で『ありきたり』なのだと。


 アンリ君済まんかった。お詫びとは言わないが、『浄化』推進、頑張ろう。

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