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おっさんスライム竜に出会う 29

 

 綺麗……。


 地下洞窟内にかなりの広さの薔薇園があった。

 園内は明るくて天井も高く地上にいるような気分になる。勿論、天井に青空なんてないわけだが。


 明かりは光ゴケなのか? 蛍光灯やランプの類いは見えない。人間の科学にこれと同じ事が出来るだろうか? 何らかの魔法的手段かもしれないが。人間が科学で出来ないなら魔法という判定で良さそうだ。


 ……明らかに構造おかしいよね?。


 どう考えたって山の下にこの空間はおかしい。

 なんせ背中に山を背負ってんだぜ? 潰れないのはどうかしてる。


 これも魔法。なのかな?。


 散歩するように静かに歩く。


 狭い洞窟内だろうに立体的で美しい薔薇園が存在している事に圧倒される。ちょっとしたラビリンス気分だ。映画の方な。


 そして薔薇そのものも一輪一輪が美しい。種類も数も沢山ある。


 ……友達に花が好きな奴が居たな、そう言えば。付き合って何度か薔薇園に一緒に足を運んだっけなぁ。


 そう、モダンローズ。そう言うんだっけか。


 薔薇の原種は確か八種、その中には日本原産のも複数いて可愛らしい花を咲かせるってそのツレが嬉しそうに話してた。野薔薇もおしとやかで可憐で可愛いって。言ってるヤツのが可愛いとオレは思ったね。


 けどこれは原種ではなく多分モダンローズ。原種同士を掛け合わせ花弁を増やしたりした混合品種。その一つの通過点、集束点をモダンローズと呼ぶ。そう見える。けどここ異世界なんだよなぁ。

 最初からこの姿の良く似た別な花なのかもしれない。


 そのツレと来たかったかなー。顔も名前も覚えて無いが。広い所にテーブルや椅子だして茶会とかしたら喜んだだろうな。或いはスガルガと来ても楽しそう。

 いや、スガルガは入れないか、この薔薇園人間サイズだし。


 脳内ス○ちゃまがポップアップし「残念だけどこの薔薇園人間用なんだよね」とネタして帰っていった。


 いらん。静まれ静まるのだオレのヲタの血よ!!。


 いや、待て。しかしなんでこんなもんが此処にある? 存在出来る? ドラゴンの巣穴だぞ!?。


 ……ひょっとして。


 この薔薇園スガルガの持ち物?。


 いやだから人間サイズだぞ?。


 意味が解らない。軽く混乱して頭をふる。


 これ、やっぱり(がらはど)が管理してんのかな?。


 うーん。(がらはど)に会いに来たっちゃ会いに来たんだけど実際用があるのは薔薇(こっち)なんだよなぁ。期せずして目的を達成してしまった。どうしよう黙ってもらっちまうか?。


 ふと顔を近づけ花弁から薫る微香を楽しむ。


 うん使えそうだ。けどどうしよう流石に泥棒は不味いよね。


 顔を離してふと奥を見ると居た。


 足をわらわら動かし威嚇のポーズの、がらはどだ。薔薇を数本持って(?)いる。手裏剣用だろうか。


 ちょっと考えて片膝をつく。抵抗の意志は無いよと表すつもりで。もう少し考えて両膝にする。

 右手を挨拶するように上げて「やぁ」とやる。


 どういう作法だこれ? というか蛸と喋った事ないもん!?。つか向こうもスライムと話した事なさそうだよなぁ。とりあえず素数からか?いやそんな流暢な。そもそも二桁も知らんわ。計算すんのだりぃ。


「あno、言バ解りますカ?」馴れない言葉を無理矢理使う。うわ、滑舌わりぃ。仮に通じても聞き取れないんじゃないのか。つか日本語通じるのか?。だいたい蛸に耳付いてんのか?。


 コミュニケーション、ガバ過ぎてもうね。


 えっとこっちの言語らしき物でやり直す。ピジエラの知識に感謝。こっちならどうか。


「無daんでェ入ってェ強麺なさいヨ?」


 誰がアンディ ○グかッ!?。


 ちょ、待って誰かオレの死んでる滑舌に油を差して!!。誰か誰かオレにさえずりの蜜を持てー!!。ぐぬぬ。一人くっころのポーズを取る。いや、くっころのポーズなんて知らねーけど。


 だかしかし、髪はオレを見捨てなかった。

 そう、オレはおっさんだから神ではなくヘアーに祈るね! 生え際ー!!。


 然るに、がらはどに反応、おイケるか? 。


 わさわさと触腕を動かした後、彼は頷く。


 感アリ。


 とりあえず即敵対にはならないようだ。

 良かった。正直色々聞きたい事があるが……。

 今大事なのは薔薇を手に入れる事だ。


 ちょっと喉をチューニングし直す。

「あっアッあっ、アッー!!」


 がらはどが甘引きしたが気にせず語りかけるぜ!! ヤーハー!!。


「ねぇ、貴方。名前が解らなくて申し訳ないが私はモモ。スライムだ。今訳あって洞窟の主スガルガに料理を作っている。そのレシピに薔薇の花が必要なんだ。少しでいい別けて貰えないか? 対価はえーっと何がいいかな?」


 あ、やべぇ。対価になりそうな道具全部置いてきた。いやまぁアレが必要なら先にがらはどが確保したろうからあの中に必要なモンは無いだろう。身体か!? 身体なのか!?身体を要求されたらどうしよう。


 あ、ピジエラに擬態すればアリですね! ホクサーイ!?。とりあえずボディランゲージ込みでやってみた。伝わるかな?。無論北斎はしない。蛸とおっさんの協力緊縛プレイとか誰得だよ?。


 がらはどは少し考えて首を横に振った。しかし此方に待てのジェスチャー。彼は何処かに行ってしまう。


 首の振り立て横オレの解釈で大丈夫だろうか……。


 暇なので近場の薔薇を見せて貰う。

 そこまで薔薇に興味無いオレも見入る位の素晴らしい華々だ。別の薔薇(BL)なら別バラなのだが。


 がらはどが花束を二つ抱えてやって来た。


 え、二つもくれんの? 良く見ると違う花束だ。まさかどっちか選ぶの?料理漫画みたいに?

 いや、それ解んないんですけど?。


 しまったなー。


 とか思ってたら、がらはどが沢山の触腕から1本を伸ばし単一な花束から1本抜き出し、口が胴体っぽい所の下側なのかそこに突っ込みバリバリ食べ始める。で此方に花束を渡してきた。


 オレは花束を一つ受けとる。そうするとがらはどはやっぱり沢山の触腕で花を花瓶に活ける動作をする。こっちはメインは確かに薔薇の花だがカスミソウや名前を知らない他の花がありこれはバランスの良い花束選手だ。


 なるほど流石に解った。先に渡した方が食べる用エディブルフラワーで二番目が活ける用だ。


 なので個別に食べる真似、活ける真似をしてみせる。


 がらはどは頷いた。


 合ってるらしい。良し!!。


「じゃあ貰って行くね? 何か差し出さなくていい? 要るものない?」


 無いらしい。固辞されてしまった。


「じゃあオレはスガルガの所に行くよ。がら…… じゃねぇ、君はどうする?」彼、どう考えてもスガルガの家の家人だよね。庭師かなんか。


 がらはどはそれも固辞してからもう一輪、傍らの枝の黄色い薔薇を抜き出し枝を払い棘を払い、そっとオレの髪に差した。ちょっとしたアクセ気分だが、ちょおま、オレおっさーん!?。


 あーいやー照れる!! これ、恥ずかしいよぅ。って、あそか今、の姿はピジエラだからか。だからくれたのか。くそこいつモテそうだな。オレが女の子ならときめいていたぜ!! 危ない所だったぜ! きゅんきゅん!。


 おっさんが貰っても困る微妙なプレゼントだが心遣いは有難い。


「えっと、似合う?」


 がらはどは器用にサムズアップし


 って、え、今どうやった?。


 つまらない疑問をセルフスルーしつつ(我ながら珍しく空気読んだよ!!)オレは「ありがとう」と礼を言うと、がらはどは、一流の家令のように礼をした。触腕を胸 (?)に当て最敬礼。


 う、わ。最上位クラスの礼儀を払われ当惑する。


「え、えっと頑張る!?」


 わりと返礼として駄目な感じに慌てて礼を返してその場を後にする。


 くっオレの社会人経験が息をしてない。

 オレのオッサン力とはこんなものか!?。


 くそ高まれオレのオッサン(ヂカラ)!! せめて一般常識クラスまで高ぁまぁれぇー!!。


 ううっ前世がニートだった疑惑がオレの中でとどまる事を知らない……。


 そうかニートかぁ…… まぁ、それもいいか。

 前世だし、無駄な雑学知識ありそうだしこれからの異世界ライフに役立つかも知れないし。


 頑駄無な知識ばかりだと困るなぁ。


 そんな馬鹿な事を考えながらスガルガの元に向かった。

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