おっさんスライム竜に出会う 28
う゛~ しかしなんか悔しいぞ!。
渾身のスライム饅頭がまさかの二番煎じ……だ、と?。
ちなみに渾身の件はどっちがオレ!?。
って捨て身のカラダネタやるつもりだった予定の事を言ってるが、既に半分スガルガに先にやられてしまった辺りも重ね重ね悔しい。
流石オレの相方!!。妄想の世界で白目痙攣しといた。
くっそ、くっそ。
しかし、そうか食べた事あるのか……。
あれ? ひょっとしたらあの芋植えたのってそのインってヒト? いや、 人じゃなくてサキュバスらしいが。
彼女のおかげで作れたが、なんだかその人の手のひらの上で踊っているみたいな気がしてなんかやっぱり悔しいぞ?。
スガルガの頭をモフるというか毛はないから撫でる。撫でながら暫し料理のレシピを考える。
もっかい手持ちの調味料を確認してみるか。
見落としたモノや使えるモノがあるかも知れない。
『ちょっと待ってて』
スガルガから離れて胃次元収納に飲み込んだモノを吐き出して点検する。ぐめきょろろ。
離れ際、スガルガが頭を此方に擦り付けて来たのが、なんかスガルガすごい大っきいのに仔犬や仔猫っぽかった。もっと撫でて欲しかったとか? 流石に無いか。でも撫でる。すべすべしてて気持ちいい。全体だとごつごつしてるのにね。
さて、胡椒らしきモノ、多分塩、醤油か味噌に近いモノ、そして砂糖……か。
砂糖は粘りを出す為に既に添加してる。更に甘味を増やすか?。醤油か味噌っぽいのを使ってみたらし風とか?。砂糖は黒砂糖だから黒蜜仕立てにするか?。砂糖がけ、アイシングを施すか? いや、それは流石に溶けるよなぁ。きな粉があると悩まないんだが……。
そう、黒蜜、きな粉にアイス載せこそ、じゃすてぃす。
ってそれもうパフェじゃん……。
この洞窟。周辺にある物。何が有るかな。カエルにヤゴに、そういや蛸か居たなぁ……。
……そ、れ、だ!!。
『スガルガ! オレちょっと行ってくる!』
『む。何処へだ?』
『ないしょ。すぐ帰ってくるよ!』
そう言ってヒトガタで走り出す。コンパス的にはこっちのがネズミより速い。頭をぶつけたりもするが痛くないから気にしない。
『せわしないヤツじゃのう』
背中越しにスガルガの独り事が聞こえた。
蛸を探して出会った辺りにやってくる。割りと真っ直ぐこれたからちょっとだけ誇らしい。自慢ではないがオレはヒトの話は聞くが、どちらかと言うと方向音痴なのだ。
ガラハド~と声ををあげようとして無理な事に気付く。今のオレは赤黒グロペ○シマンというクリーチャーだ。只のマネキン、ヒトガタであり、人間に化けるのに必要な各種装飾などない。無論、目や耳、は言うに及ばずそして今必要な声帯もだ。ああっ髪よ!!。
もう少し人間に近づく必要がある。ネズミやカエルに化けれた時には五感も模倣出来るのだ。人間でだってやれるだろう。その筈だ。オレが人間に成りきれないのは何処かしら道徳的なモノからくる嫌悪感なり罪悪感から成りきれないのではないかと思う。
何故なら人間に化けるという事はピジエラの、故人の似姿を模倣するという事だ。それは流石に何か申し訳ない気分になる。まるで死者を冒涜してる様ではないか、と。今さらな気もするが。
……悩んでも仕方ない。人は配られた手札で人生を切り開かなければならないのだって過去の偉人も言ってた!!。おっきくて、かたくて、ふとくて黒い人な!!。
力を、貸して下さい……。
目を瞑り(無いけど) 自然と掌を合わせて胸の前で合掌した。
ピジエラ貴女の似姿をお借りします。
精神を統一し、ヒトガタを人に近付ける。
無理かなと思ったが目を開けれ視界が開けた。気がする。暗いからあんま見えないんだよね。しまった冒険者の鹵獲品からランプやなんか灯りを持って来たら良かった。
手を見る。カラーリングは変わらない。赤黒い汚い色のままだ。うーん。肌の質感を変えるには驚愕描画的なサムシングが多分カメレオン的なモンスターの魔石がいるなコレ。二重同時発動になるから仮に今、手に入れても使えないだろうが。
失敗かと思い、「失敗か」とつい声を出す。
少しガラガラだがキチンと声が出た。よし!! 。
軽く発声練習をしてから、ガラハドを呼ぼうとしてハタと気がついた。
アイツの名前、別にガラハドじゃなくね?。
蛸さんの名前、オレ実は知らねーや。
アカーン、詰んだか?。
そしてもう一つ気がついた。どうして人間程度の目で洞窟の闇の中を見通せる? 当然視力の弱いネズミにも無理な芸当だ。
「明るい?」
意外な事実に辺りを見回すと確かに脇道の一つから光が溢れている。
出口の一つかな?。山一つくり貫いたような洞窟だ。正直なんで崩落してないのか解らない。
だから山裾に近い所にうっかり穴が開いててもおかしくはない。おかしくはないのだか……。
しかし……。
行ってみよ。
トコトコと誘蛾灯に誘われる蛾のように明かりに近づく。
眼前に広がる光景は……。
一面の西洋庭園風の薔薇園だった。




