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おっさんスライム竜に出会う 27

『スライムくっきんぐ! はっじまるよー!!』


 相変わらず!マーク多めでお送りしております。


 モモです。


 いや、こう勢いつけないとやってられねぇーーつーか。


 空元気でも元気み、た、い、なー?。


 さてやっていてアレだが誰に語りかけてんだろねー。

 謎だ。オレそんなに夢見がちなキャラだっけ?

 ヲタならそんなもんか。


『おー』


 スガルガが雑な間の手を入れてくれた。


 スガルガに自分の練(ハンター用語)を見せる為に

 スガルガの前、御前? で放送 (脳内)させております?。


 今回、用意いたしましたげんせん素材は此方!


 鹿であります!!。


 モモ仕留めました!!。


 待ちガイルならぬ待ちスライム強し! 強し!強し! スライムは待ち伏せにて、さいつよ……。


 時間はちょっと使っちまったけどね。


 ああ、うん、そうよ。理由を付けて決定的な瞬間、更に後回しにしたんだ……。


 ちくしょう笑いたきゃ笑え。



 ……さて、これをスライムの酸で解体します。


 ヒトガタを取り、手刀に酸をまとわせ焼き切って行く。


 鹿の解体なんてした事ないから取り敢えず首を落として切断力を試した。あっけなく落ちた。


 自分の練習のためだけに死体を冒涜する事に些か躊躇いはあるが全部食うからそこは許して貰おうと折り合いをつける。南無南無。


 さて此処からだ。切断した断面から皮と身の間に手刀を滑り込ませる。


 やった事無いけど皮を剥ぐなら、こう、手でバリっとやった方が早いんだろうけど。あくまで電気メス代わりにスライム手刀(ナイフ)が使えるかの実験だ。


 効率が悪かろうがこのやり方で患部を切除出来るかやってみなければならない。


 そうして皮を剥いでいく。んーやっぱり使い難い。酸の放出や中和など試しながら進めた。

 つか酸、中和出来んだな。そうじゃないと食う時自分の酸で焼けちゃうからか? よく解らない。


 酸ついたまま食えたから別の理由なのかもしれない。


 取り敢えず皮は比較的キレイに剥げた。身の方はかなり焼け爛れたけど…… スガルガにはブロック肉にして外側を切除して出そう。そうしよう。


 次は内臓だ。…………しまった! 先に内臓やるべきだったんじゃないか?。


 わーい、後のカーニバル♪。


 もうどうしようもねぇな。諦めて作業を続ける。


 それを言ったら池で作業すべきなんだよね。いっぱい水あるし、匂い籠らないし。可食部位以外の部位埋めて捨てられるし。いや、スライムだから溶かして全部食うが。


 スガルガにオペ見せてどうこれから進めていくかは見せる必要があるかと思ってそんな感じ。

 インフォームドコンセントってやつのつもりだが、どうだろうか。やっぱり見せない方が良かったか。自分のハラァ、これからこうなります。


 って大手術前にやられても困るわな。

 むしろオレなら見たくない。全身麻酔の間、夢の内に終わって欲しい。


 ……やっぱ失敗だったんじゃないか?。


 あークソ、正しいってなんだよ!!。


 そんなのわかんねーよ!! 誰かこれでいいっ方法教えてくれよ!!。


 ……。


 作業続けるか。


 腹は腹膜だけ焼き切って手で掻き出した。肉が勿体ないので普通のナイフも使う。


 ……。


『スガルガ内臓食べる?』


『ばかもの。一番旨い処、捨てる気か』


『へーい』


 心臓と肝臓を器に取った。


 器である。名前はまだない。

 枝道での魔石探索。それはハーフエルフピジエラのモノ以外キレイに空振った。いや彼女の魔石が手に入ったのだから大成功と言えるかもしれない。


 いや、贅沢言えば人間以外の魔石が良かったかな運命!? ちょっと恨むぜ。恨んでもしょうがないけどさ。


 そんなわけで他は空振りだったが他に得るモノがあった。


 キャンプ用具である。エベレストに登頂する時、ベースキャンプを作る。食糧などを備蓄し休憩所にするためだ。最期の最期、山頂を踏破する時、雑多な荷物はベースキャンプに置かれる。


 それと同じでスガルガに挑む際、各パーティーが置いていった戦闘に使わないモノが蓄積されている所に行き合った。


 広くて近くて便利な場所があったので…… コンビニみたいだな。駅前なら尚良しか?。


 とにかくそれがあったので皆そこ選んだのだろう。


 何パーティー分か数えたくもないが。


 ……これだけの数、返り討ちにしたんだよな。


 それだけの数、彼女は……。


 是非は問うてもしょうがないのだろう。


 そこは考えない事にした。命をチップに互いで遣り取りしたのだ。


 彼女を責める道理は思い付かなかった。



 てなわけで器を手に入れた。


 そんな風にちょっと考え事してたらスガルガが身を起こし舌を伸ばして内臓肉を舐め取った。


 人間の握り拳よりデカイんだけどなぁ。


 あっさり口の中に消えていった。


『旨い。鹿は旨いが皮と腸が邪魔だからな。バラして食うのは贅沢な味じゃな』


『そらまぁ、竜のデカイ手で料理は出来んわな』


『……ウム』


 ……なんか今、変じゃなかったか?。


『スガルガ……』


『なんじゃ?』


『いや、なんでもないよ』


 ま、いっか。


 追求しても微妙な気がする。

 思考の端にちらーりとスガルガ料理苦手説がちらつくが気にしてもしょうがない。


 しかし生肉でいったか。うーん、なんか手を入れてみたかったなー 料理人として!!。


 料理人じゃないけどさ。


『そっちもくれ』


『うーん。料理したら駄目かな?』


『料理?人間のは好かん。我はドラゴンぞ。人間の食い物など……』


『デスヨねー』


『……じゃが、そなたのもてなしならば受けよう』


『久しぶりに料理したかったなぁ…… って良いの?』


『ウム』


『わーい♪ スガルガ大好き!!』

 スガルガの首っ玉に抱きついた。人妻に合法せくはら!! やってからやべぇ!! ってなった。


 おっさんぎるてぃ。コレハ、チョン切られてもしゃーないですわ。


 付いてないけど。


 いかん、頭にスライム(ry を付けんの忘れた!!。持ちネタなのにうごご。


『……ウム』


 スガルガは満更でもなさそうだ。せぃふ。


 次いで頭を軽く擦り付けられた。


『あ……』


『我もそなたを好ましく思っている』


『うん。えへへ、ありがとう……』


 スガルガをギュウと抱き締めてから料理に入った。


 さてこいつ、この鹿肉どう調理したもんか。


 うーん。よし乞食鶏にしよう。


 正直ただ焼くと固すぎる。

 煮るのも考えたけどご馳走感がしない。

 後血抜きの問題か。まぁ人間が食うには野趣に溢れすぎているかもしれないがスガルガには好みかも知れない。よく解らん。


 ただ小さく切るのはNGだろうな。なんせ口がデカイ。食べた気がしないだろう。


 てなわけで乞食鶏を採用した。前に一度漫画の資料に作ったっけ。


 塩はある。キャンプ用品と一緒に結構な数を仕入れた。だから作成可能な筈だ。


 さて事前に狩っていたカエルの皮を取り出しまして、酸で焼けた身を洗ってからそれで包みます。そして塩。繋ぎに玉子、卵白がほしかったなぁ。とか思いつつ大量塩で塩玉を作る。そして皿に使うつもりで取ってきたデカイ葉っぱ、バナナかな? でくるみ、更に土玉を作って更にくるんだ。

 粘土質なら良かったが残念ながら見つからないかったので自分のスライムの身体を一部切り離して繋ぎにする。半身、半身、脚四本。六回作業する。本当は丸ごと使いたいがデカすぎて作業出来なかったんだよ。


 さて、下ごしらえが出来た!!


 良し!!


 それを深めに土中に埋めて石を敷き詰め、薪を上に並べ焚き火? の種を作る。


『スガルガ~ここにブレス頂戴。弱めにね? 弱めだよ?』


『うむ、任せよ』


 オレは安全圏に待避。スガルガのブレスが焚き火に直撃する。


 豪!!。


 焚き火はくだけちった!!


『ちょっ! 弱め~!!』

 思わず悲鳴をあげる。うわ、地面が真っ赤だ。


『弱くしたぞ! そなたの焚き火が脆いのがいかんのだ!!』


『いや、焚き火なんだから強いわけないでしょが!! うわ、コレどうしよう……』


『……失敗か?』


 あれ? スガルガしょげてる?、


『うーん。要は火が通ればいいんだしこの火力なら下の石まで十分に通った気がする…… 追い熱というか追加の加熱をどうするかの話になると思うけど…… 解んないなぁ。まぁ食えないって事は無いでしょう。本当は低温調理になるように火加減を狙ってみたかったけど……』


 鹿の身半身使って尚且つ石焼きなんだから細かい調整が出きるわけないよね。だから美味しそうな所を切り出してやるつもりだった。しかしこりゃ全部ウェルダンかなー?。


『うん。大丈夫だよスガルガ。モモにお任せあれ!!』


『うむ。楽しみにしておる。人間がするような料理を口にするのは久しぶりだ』


『へぇ? 食べた事あるんだ』


『覚えておるのは吾子を産卵した時だのう。産卵に際して食欲が落ちていた我に旦那様が料理人を連れてきてくれてのう。ああ、あやつの料理は旨かったよ。認めたくはないがな』


『ふーん。どんな人?』


『人では無かったな。確か種族はサキュバスであった。名前はそう、インと言ったか……』


『サ、サキュバスかー』

 おっさんが転生したくない種族ナンバーワンじゃねーか。良かったオレ、スライムで。

 しかしサキュバス居るのね。ドラゴンがいてスライムがいるんだからそんくらい余裕か?。


 誰に、何に対して余裕なのかは知らん。


『サキュバスらしく人間の基準でなら可愛い娘じゃったな。そう言えば少し雰囲気がそなたに似ておる気がする』


『ちょっと待て、おっさんがサキュバスは嫌やぞ?』第一サキュバスなんか身内にいねーよ。


『そうか?そなたは可愛らしいが』


『勘弁してよー』

 おっさんが可愛いって言われても嬉しかねぇですよーだ。


『ふふふ』

 スガルガが笑っている。笑いのネタになったならいいか? いいや。


『さてもう一品デザートを作ります!』


『ほう?』


『スライム饅頭です!』

 わらび餅とも言う。片栗粉を練って作る菓子だ。本来はわらびから取れる粉を使うがデンプンを使う団子というか…… 何だろう? 餅? は、わらび餅と言う括りな気がする。


『まずはお芋、池の周辺で取れました! これを擂り潰しデンプンを採取します』


『ほうほう』


『出来たモノが此方です』


『準備しておったのか。それなら前の(くだり)要らんのではないか?』


『様式美です!』一辺やってみたかっただけとも。


『これを水で練り一口大にします』

 ドラゴンの、だけど……。


『出来上がったら鍋にお湯を張り茹でます』

 拾った鍋に水をました張り赤熱する地面に置きます。

 もうちょい火力がいるかと思うと無事沸騰。


 ……鹿肉の安否が気遣われます。


 おいおい、まさか焦げてねぇよな?。


 といってもまさか赤熱する地面から掘り出すわけにもいかんし。


 水かけちゃうか?。


 んー。やっぱり焦げてない事を祈ろう。


『茹であがったのを水で絞めて出来上がり!

 スライム饅頭の完成です!』


『をー あ?』


『あ? え、何スガルガ?』


『あ、いや、なんでもない』


『いやなんか不味かった? 食べれないモノだったとか?』


『いや、違う。そうではない。んー言わねばならんか?』


『いや、いいけど気にはなるな』


『気を悪くせんでくれ、昔、インが作った料理に同じモノがあったなと』


『なんだと……』

 え、それなんか悔しいんですけど?。


『いや、旨かったし好きじゃぞ? ほらこの舌触りが……』


『待て! それ、オレ!? オレー!!』

 餅ネタならぬ持ち繰り返しネタ乙。


 ギャグの為なら死ねる。そうレイプ目になった自分を慰めた。


 ま、スライムに目は(ry


 しばしスガルガと戯れ (られ)た。

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