おっさんスライム竜に出会う 25
そこは山間の小さな村だった。
人間の猟師の夫婦の間に彼女は産まれた。
取り換え子と言われる隔世遺伝の結果、
ハーフエルフとして。
両親とも教養類いには疎かったが母親の血筋にエルフがいて、ハーフエルフが生まれるかも知れないと聞かされていたから、混乱は無かった。
しかし都市部ならともかく小さな村で混血の人間を見たことがない、まして小さな子共達に取って
彼女
はとてもいい玩具だった。
当然のように苛められ迫害された。
長じるに連れ彼女は瞬く間に美しくなっていく。
彼女を苛めていた連中は手のひらを返す。
徐々にだが苛めの質が代わり始めた。
直接的なものから彼女の気を引くためのモノに。
だが迷惑には代わり無い。
子供でも仕事をしなければならない。しかし村の中には混じれない。
そんな折り彼女は魔女に出会った。
美しい黒髪、長身で濡れた切れ長の瞳の、とてもとても美しい魔女に。自惚れているのは自覚しているが自分より外見が美しい女性に出会ったのは初めてだった。
彼女は旅の途中で村に立ちよったらしい。
目立つ外見から村長に村外れにある家で面倒を見てくれと頼まれた。
両親は請け負い、しかし客人に良いところを見せようとした父は猟で失敗した。
猪の突進を躱せず腹に牙で大穴を開けられたのだ。明らかに致命傷で家族は神に祈った。
奇跡が起こった。いやそれは奇跡ではない。
彼女からその術を学んだ今なら解る。熟練した医学の御技であり薬学の極みだった。
魔女がその力を振るい父を助けてくれたのだ。
「いい練習になった。振るう場所がなくて困っていたんだ」
とは彼女の弁だが、母子で彼女に感謝したのは言うまでもない。しかも彼女は父が治るまで診てくれて尚且つ猟に出て家計まで助けてくれた。
あの長い大きな剣。カタナと言うらしい古の武器をあの鬱蒼と繁る森の中でどうやって振るっていたのかは今でも大きな謎だ。お師匠様の謎を挙げていけばキリがないが。
そんな中で私は分相応にも彼女に薬草学の教えを乞うた。彼女は私に幾つかの試験、課題を与えた
後、教えを受ける事を快諾してくれた。
夢のように楽しい日々だった。
そんな中でまた嬉しい事が起きた。
妹が出来たのだ。どうやら怪我をする前に仕込んでいたらしい。お師匠様に結局妹まで取り上げて貰う事になる。逆子でしかも難産で産後の肥立ちが悪くそこまでずるずると面倒を見てくれたのだ。
兎に角、お師匠様のお陰で誇れる仕事と愛する家族を得た。彼女には幾ら感謝しても感謝しきれない。
そんなお師匠様も去り、去り際彼女はいっぱい鳴いた。
一生の想い出だ。
翌朝、彼女の残した手書きの薬草学の本だけが残っていた。
とても幸せな日々はちょっと幸せな普通の日々になる。
相変わらず村の悪ガキ達からの嫌がらせ紛いの求愛は続くがそんな嫌な事も、可愛い妹が可愛く育ち可愛い妹のほっぺをツンツンしていたら嫌な事などすぐに忘れられる。
ちょっと幸せな日々が悲しい日々に変わる。
両親が流行り病で亡くなったのだ。
その病は村人にも容赦なく降り罹り、私の大切な妹にもその牙にかけた。
お師匠様に教えられた知識が通用しない。
初めての経験だった。いや、通用はするのだ。
単純に必要な薬がない。だから出来る事はない。
薬がいる。
ある場所は解っている。古の大竜、スガルガの洞窟だ。薬そのものは無理でも代替になりそうなモノも其処にある。
高位の冒険者を雇うべきだが家にも村にもそんな
お金はない。
自分で行くしかない。
幸いお師匠様に教えを受けていた。そこらの冒険者に遅れを取る彼女ではない。なけなしのお金で半端な冒険者にも頼むよりマシな選択だった。
村からお金を借りて装備を整え、切り札も三つ用意出来た。
一つは自家製ポーション。外科系の傷ならこれ一つで大体治る。一部素材を外から手に入れなければならないからあまり数は用意出来なかった。
もう一つは能力賦活ポーション。飲めば身体的な能力が倍増、倍増は言い過ぎかも知れないがかなり上がるのは確かだ。お師匠様に使うな禁止された私の奥義とも言える薬。しかし恐らく効果が強すぎて年に三本は飲めないだろう。
三本目には死ぬかも知れない。寿命が縮むだけならラッキーだと思おう。
そして最期は瓶詰めの魔石だ。
父が倒した中級レベルの魔物の魔石。
あれもお師匠様がくれた武器が無ければ父はそこで死んでいただろう。大型の槍だから私には振れないから持っていけないのが残念だ。
この魔石を服用すれば大概の魔物に勝てるだろう。
魔石の効果が不明だから予測値でしかないが。
使用するのが賦活ポーション二本と魔石、或いは賦活ポーション三本なら生きて帰れるだろうか。
困難であるがそれでも自分は幸運だった。お師匠様に会えたし、お師匠様の教えがあるからこうして愛する妹の為に戦う事が出来る。
ありがとうお師匠様。
私は洞窟に旅立った。
逃げて隠れて忍び歩き、竜の洞窟を行く。
逃げ切れず戦闘も何度かこなしソレに出会った。
名も知らない怪物。
そいつに切り札全てを使わされた。変なのが助けてくれたから撃退は出来たが倒せはしなかった。
億が一の可能性に賭けて敗けた。身体は直に石に変わるだろう。
自分は勝負をして敗けたそれはいい。
でも、お願い誰か、妹を助けて!! ああ、お師匠様……。
イタイ。
イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ……。
痛いよ。ああっ、母さん……。タスケ……。
余韻だいなし設定。
フェンサー3、レンジャー6、セージ1ハーバリスト7位?
薬はシナリオ間ではなくそのキャラクターに使用出来るのが二回まで。効果は敏捷、筋力に+2のボーナス。効果時間は一時間。とかかね。非売品。
彼女と妹の名前決まってないのは何時もの事。
主人公の名前を序盤の途中まで決められなかった某サキュバスの時よりはマシだと信じたい。サブキャラだしきっとせぇふ。調子に乗れて毎日更新。止まるんじゃねぇぞ(旗) いや、夜の方もね? 書かなきゃだし(言い訳)。 片方を片方の言い訳にするのはダメだなぁとは思うだけど。




