おっさんスライム竜に出会う 24
しゅ、宿題の提出期限早すぎませんかねぇい……。
命をどう扱うか棚上げしたら、死をどう考えるか解答を述べよ、とか勘弁して欲しい。
うごご。
近くに寄る。人間大の魔石。いや、人間の魔石か。耳が尖っている。エルフってヤツだろうか。
それが緑色の魔石像になっている。
革鎧を着ていたのだろうか。ボロボロの革が身体のあちこちに痕跡として残っている。
ポーズは石に座っている。怪我をしていたのだろうか。苦しげに俯いている。冒険者ってヤツかしらん。女性に見えるがどっちだろう。美形だし湿った洞窟の中、表面がやや摩滅しつつある。なので今一ハッキリと顔は解らない。
しかし、こう想像で補正すると相当な美人さんだ。
……人工の品には見えないな。
これは明らかに魔石の力を使いすぎたモノの末路だろう。
魔石に身体を乗っ取られたんだ……。
人間、いやエルフか解らんが人間にも魔石は出来る。魔石はある意味胆石とか尿路結石みたいなもんらしい。魔素の多い地で暮らせば自然に出来るしそれはだいたい命に関わる。人間の身体は石を受け入れるようには出来てない。
痛かったろうな……。
しばし瞑目する。
スライムに瞼(ry
盗掘者の仲間だろうか? いやそれなら遺体を放置しないだろう。でも石の重さを考えると持って帰るのはキツいか。なら砕いて小さな魔石として使うのはどうだろう。冒涜的だが有用だ。
竜を不死者にして使役しようとする連中だ。人の尊厳なんぞ守るだろうか? なら別口か。脇道だし連中は見つけなかったのかも知れない。可能性としてはソロないし少数で来て魔物と戦い力尽きたのだろう。目的が何かなどは知りようもない。
しかし魔石なら低級な魔物が食いたがる筈なのに何故、丸々残っているんだ?。
変じゃね?。
……ああ、そうか此処、がらはどのテリトリーなのか。
彼に狩られてしまうから残っているのかも。
どうしようか、これ。
放置する。うんそれは無い。
死者の眠りを妨げるのは本意ではないが、盗掘者達に見付かれば戦力を増強されるし、魔物が食えばオレの脅威になる。
一番いいのは池か地下水脈で水に溶かし地に返す事だろうか。地下水脈に妙なのがいないといいが。
しかし……。
後ろ髪引かれる。これを取り込めば力を手に入れられる。
多分これが最期のチャンスだ。これを逃せばスガルガは救えない。救う手立てがない。思い付かない。
他者の生を冒涜しないと消極的に決めた。
なら死ならいいのか?。
良いわけない。それはコインの裏表だ。
無分別に力を欲し、振るうのは外道のする事だ。
そして人を取り込む事に禁忌を感じる。
それも踏み越えてはいけない危険なラインだ。
しかし自分はスガルガを助ける為の手段を選べるほど強いのか? 偉いのか? 勿論そんなワケはない。
だが先程、選んだばかりだ。
今との違いは対象が生きているか死んでいるか、それだけの違いだろう。
これを取り込むのは矛盾している。そう思う。
身動ぎもせず刻を過ごした。一時間。或いはもっとかも知れないし或いは五分ほどなのかも知れない。
迷っていた。いやそれは決めていたという事。
決めた今となっては悩んでいたのは自分を納得させる理由作りだ。卑怯かもしれない。
だが決めた。
彼女を見上げて宣誓した。
だからスライムに口(ry
(アンタの生前の無念を一つ晴らそう。だからアンタの力をオレにくれ)
魔石を取り込むというのは相手の人生をそのまま自分のモノにするという事に等しい。
それは自分の人格と相手の人格を混ぜる事とも等しい。
だから同種食いは禁忌とされているらしい。
自分を強く持たないと相手に精神を上書きされる。
だがそれは相手を深く知る事が出来るという事だ。記憶を共有出来るのだから当然だろう。
オレは彼女の肩に乗り頬に触れ、チュウチュウもーどを解きスライムに戻り、彼女の心に寄り添った。
記憶の奔流がサイケデリックが来る……。




