おっさんスライム竜と出会う18
ドラゴン。
最強の幻獣。迷宮の支配者。
スガルガの他にそんな神話な怪物そう簡単にスナック感覚でエンゲージしてたまっか!?。
彼女の存在はオレの人生においてたまたまの交通事故みたいなもんだ!? 多分。
だから目の前に現れたのがドラゴンな訳はない。そんなホイホイ顕れてたまるかっ!? 良く見ろコイツは……
仮面ラ◯ダー?
硬質な身体に大きな目。当初はその異質な質感と硬そうな外殻。常識を越えた大きさにたじろぎ外観を見誤ったがやっぱりそうだ。
コイツは確かにドラゴンだ。しかしドラゴンはドラゴンでもドラゴンフライ インファントつまりは…… 蜻蛉の幼虫、ヤゴだ。
体長は二メートルほどもあり、もうほとんどワニかコモドドラゴンだ。
それがムシャムシャと同胞? を補食している。
助け…… るのは無理だから逃げる…… ってどーやって!?。
スライムには足も翼もねぇ!!。
誰か哀れなスライムに赤い牛さんを!! 翼を授けて!?。
そだ! ネズミに変態すれば足がある!?
つか泳ぐならカエルに変わればよくね?
けど! ああいう手合いって動く相手に反応するよなッ…… え? ナニが正解? ここで浮遊物の振りしてたらこのピンチやりすごせ…… ません、か……?。
迷っていたらパキッと音がして捕食者の腹の中にスライムは消えて行った……。
今のは魔石が砕けた音か?。
ちょっ、あんなもん食うなよ!?。
ペッしなさい!! ペッ!!。
ユラリと水中で身動ぎをするヤゴ。
此方を振り返り目線が……
合った!? やべぇ!
一瞬で間合いを詰められた。え、なんで? 水中やぞ!? なんでそんな、はやッ…… あ、なんか尻から出てるっぽい?。
尻、つか尻尾の先から水を吹き出してんのか! 。
顎が割れ、伸びる。例えるなら両手を頭の上で組みそのまま肘を曲げればそれが奴の顎の構造だ。
その顎にガッチリと食いつかれる。
ってイキナリ詰んだッーー!!。
今のオレはカエルとか小動物にしか勝てない!!。
カエルさん、いやオレの糧となってくれるヒトタチ? だから? カエル先輩と呼ぼう。
カエル先輩はそのおっきな愛で包んでくれるから安全にお腹を引き裂ける。しかしこのヤゴは違う。
ちみちみ、ちみちみ齧るのだ!!。
ちみちみ。
止めてー!! 想定外まっじヤメテー!! オレはゲームは攻略本片手にクリアする派だ!! 迫り来る危機にアドリブ対抗とか無理ー!!。
そしてテストは予習復習一夜漬け全部やる派だぁ……。
そう、ニヒルに決めてみたが誰も見ちゃいねぇ!。
一口齧られる。脳内のケンシ◯ウ顔したやごがオマエの命は後、三口と指を三本立てた。いやケンシ◯ウのコスプレをしているやごの方がいいかもしれぬ。
二と指を折られた。ってオレの妄想やごシロウ五月蝿いよ!? カウントやめーや!?。
パニクってんのか冷静なのか自分の思考がよくわからん。冷静にパニックしてるのかも。ただピンチの筈なのに思考だけはひたすらクリアだ。雑念は入りまくりだがな!! それは未だに…… 未だに自分の今の境遇を受け入れられない事が関係しているかもしれない。酷く現実感の無い空想、絵空事、夢か、ゲームのキャラクターを動かしているのを眺めるような、今の自分に起きている事がどこか遠くの事のように思える。
つか気がついたらスライムに転生してるとかあり得ないだろ。ましてそっから食われかけて死にかけてるなんて……。
もっちゃもっちゃ、もっちゃもっちゃ。
オレの身体を咀嚼するやごシロウいや、もとい、やご。
味わっちゃらめぇぇぇ!?。
一。
待て! タンマ! もっと味わえ!! やっぱり食事はよく噛んで食べましょう!?。
あ、やべ。って本当、マジで止めろよ!? オレ美味くないよ、魔石なんて硬くて食えたもんじゃないだろ!? つか腹へってんなら池の水でも飲めよ!! いっぱいあるじゃん!! スライムも池の水もたいして変わらないだろうがよッ!?。
駄目かッ!? 駄目かッ!?。
届けオレの思い!!。
あ…… そうだ水だ。水があるッ!?。
間に合え!!。
0。
0。
0。
カウントは進み、0になり続ける。
しかし奴の顎はオレには届かない。
万○(ばんかい) (うどんの方) 無○限呪術!!(呪いの方)
嘘だけど! 一辺やってみたかったんや! 堪忍やでぇ!
実際にやったのはオレとアイツの間に……
そう【無限】を差し込んでやったのさ!
その無限の正体は差し込んだのは池の水だ。勿論そのままじゃ奴は口にしない。だから取り込んだ。オレのスライムの身体の含水量を一気に上げたのだ。
五十%から当社比三百%。さらにさらに池の水抜いちゃいました! ってやるつもりで水風船を膨らませる。
コイツが如何に大食いでも池の水は干せないだろう!!
さぁ、どっちが【暴食】か試してみようぜ!!。
と内心カッコつけてたら……
オレの身体を食わずに口と爪で引き裂き始めやがった!?
……デスヨネー。




