おっさんスライム竜に出会う9
溶けねぇなぁ。
身体ではない。この身はスライム溶けている。
スガルガの鱗の事だ。
スガルガの胸に刺さった槍を除去する為には、鱗を溶かせない事にはどうにもならない。竜鱗を砕けなければ竜の肉体を傷付ける事は出来ないのだ。
なので抜け落ちた鱗を初めの方で取り込み体内で放置して溶かす努力をしてるんだけど……。
『溶けないなぁ』
『溶けんか』
『うん。困った』
『試しに魔石を取り込んでみるか?』
『魔石? え、何その魅惑のアイテム!?』
『魔物は皆身体に持っとるぞ? スライムなんぞ魔石こそが核そのものだろうに』
マジかー。
最近のラノベだと魔物が持ってるのデフォルトだよね!?。
ラノベと同類か…… 厨二的に喜ぶべきか、安直だと蔑むべきか。事実として困惑すべきか。悩むなー。あ、でもオレスライムなんだよなー 今更感パナイノ。
『魔物は魔石を取り込む事に強くなる。だから魔石を取り込めば溶かせるようになるだろう』
『なんで強くなるんだろ?』
『魔石自体が魔物だからだ』
はい?
『極小の魔物なんだそうな。一種のケイ素系生物だと、陛下は みとこんどりあ みたいなモノだと言っておられたな。えねるぎーの代わりに魔力を精製するそうだ。転生者ならみとこんどりあ 解るか?』
『ああ、ちょっと解る』
『だからあまり強力なのを複数取り込むな。魔王化するから気を付けろ。魔石に身体と意識を乗っ取られるぞ』
『何その素敵ワード!? 魔王化とかあんの!?』
『偽物の魔王だ。本物は石を支配してこそだ。もっともそんな本物は数少ないがな』
『スガルガは魔王?』
『あんな化け物どもと一緒にするな。我は一般人だ』
『竜が一般人ってのもなぁ』
『アヤツラ以外では最大級ではあるな。我の死後我の魔石を譲る。だから他の竜級の魔石を取り込むな。また一気に大量に取り込むな。両方危険な行為だ』
『他の弱い奴ならいいの?』
『それも大量には取り込むな。と言ってもそうそう危険域には行くまいが。目安は竜級二つで普通は正気を喪うだろう』
『解った気をつける。で魔石って何処にあるの?』
『部位の話か? まちまちだな。我は胸の何処かだと思う』
『いや、今、この場所に』
『我が持っとる』
『お、ナイス!!』
『殺せば手に入る』
……。
『殺す為に必要なのよね?』
『……』
『詰んでるじゃん!?』
何、その卵が先か鶏が先かみたいな!?。
『ふむ。これが竜が先か卵が先かという話か』
『その辺に落ちてたりしねー?』
『それは無かろう。生体濃縮するとはいえ水にも油にもよく溶ける。一番は血だな。だからその辺に置いとけば無くなるし動物も魔物も好んで良く食べる。その辺りに落ちてたりはしないな』
『じゃあ、他の魔物倒さなきゃ駄目か……』
『そうなるの……』
『オレに倒せそうな魔物って?』
『迷宮は止めておく方がよかろう。うっかり強いのに遭遇したら目も当てられない』
『あ、やっぱりいるんだ』
『左様。我の住みか付近にはおらん。強いのはだいたい賢い。となると山頂の入り口付近が善いな転移装置を使おう』
『転移装置? 』また魅惑なワードが!
『あれでなら山頂に安全に行けるし帰れるだろう。ついた先が安全かは解らんが』
『え、それ帰って来れんの?』
『我はヒキコモリではないぞ。ニートだが狩り位には行く』
『竜のニートってどういう言語感覚だよ!!』
まぁ、でもそうかこの身体で洞窟を進むのは辛いわな。
『就職や学習はしとらんからのう』
『家事手伝いのどらごんって一体……』
つかこの賢い竜にアホな事教えたの魔帝だな! そうなんだな!?。
突っ込むと長そうだから流そう……。
『恋愛はしとるからリア充じゃ』
異世界の文化汚染がヒドイ。
千年生きてる竜の威厳を返して!?。




