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アイドルとお姫様

人魚姫に近づくのは、硬い殻で身を守る甲殻類か。守るものがない軟体動物か。

お昼、屋上にて交流会は行われていた。急遽開かれた交流会。主催は彼女で私はゲスト。どうしてこうなった。


「ごめん! こんなことになるなんて思わなくて」


「いいけど、なんで?」


「そりゃあ、私だから?」


「あーとね、彼女は有名人なんだって。ミスコンとか、たくさん賞を取ってるらしいよ」


「そうそう! って、なんで転校生のあんたが知ってんの」


「クラスの男子に聞いたんだ。自己紹介の時に少し」


「そうなんだ」


「そう。なんでこんなに人がこそこそとこっちを見てるのかって話だったよね」


「うん」


「実は私が屋上に行くのがなんでか伝わっててさ、広まってたっぽい。ごめん」


「私は、別に大丈夫」


「僕も大丈夫だよ」


「ありがとう!」


なるほど。彼女が有名人なら、普段私たちしかいない屋上にあふれるほどの人がいたって不思議ではない。当然の現象だろう。私も、有名人がいるってなったら、見に行くかもしれない。


「謎の美少女とアイドルがなぜ……」

「どういう関係なんだ」

「あの男羨ましい……」

「許さん」


「……なんか視線が痛いんだけど」


「申し訳ない……」


「僕、撤退してくれるか頼んでみるよ」


そう言って、片っ端から撤退してくれるように頼んでる羽鳥君。なよっとしてるのに、意外と逞しい。へこへこ頭を下げている姿は見なかったことにしよう。


「なんか、羽鳥君らしいね」


「そうだね」


「ずっと空野さんの傍にいるよね」


「そうだね」


「羽鳥君、空野さんのこと好きなのかな?」


「……違うと思うよ」


危なかった。ノリでつい、そうだねと言ってしまうところだった。肯定してはいけない。彼女の言っている『好き』は、多分、そういうことだと思うから。


「そこは否定するんだ」


「羽鳥君が私のこと好きだなんてありえないから。肯定できない」


「空野さんは? 羽鳥君のことどう思う?」


「別に、なんとも思わないよ。疑問はあるけど」


「ふぅん。そうなんだ」


「お待たせ!」


そんな話をしていたら羽鳥君が戻ってきた。流石にあの人数を屋上から退散させるのは、あの羽鳥君でも時間がかかったか。


「なんとかみんな教室に帰ってくれたよ」


「お疲れ様~!」


「おつかれ」


「ありがとう」


「でも、思ったより時間かかったね。あの羽鳥君なら一言言えば教室に帰ってくれそうなのに」


「はは……。僕はそんな『キャラ』じゃないよ」


「そうなんだ」


そんな『キャラ』じゃない。そんな言葉に引っかかったが、すぐに振り払った。気にしてはいけない気がしたから。


「そ、空野さんも、そう思ってる?」


「別に。興味ない」


「そっか……」


そう言って羽鳥君はほっとしたように息を吐いた。私に思われたくない何かがあるのかな……?


「ふふっ」


「何?」


私と羽鳥君のやり取りを見て彼女は笑った。笑える要素なんてあっただろうか


「いやー、空野さんって面白いなぁって思って」


面白い? 私が? どうしてそんなこと思うんだろう。面白い所なんてないはず。


「どうして?」


「今と教室にいる時、雰囲気が違うからかな」


「あ、それ僕も思った!」


「そう……」


「うん! だからさ、僕、少しは許されてるって思ってたんだ」


羽鳥君までそういうか。ならそうなのかもしれない。自分のことは自分でもわからないことがあるから。私は彼を許しているのだろうか。許しているならどうして? わからない。

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