第四話:Ice Girlと俺。
「っー。あいたたたたったたたたたたたたたたたあいたたたたたたいたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた……た?」
どうでしょか。『た』の多さで至上稀に見る痛さを表現してみる高等テクニック。んで、やっぱり気になるのは
『……た?』
の部分。疑問符。
そう! 穴の底、つまり今俺の目の前には、摩訶不思議アドベンチャーな光景が、ちょっと恥らいながらも、しかし大事なところはガッ! とさらけ出してコンニチハしていた。
「だぁああ! んなンじゃこりゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ〜〜〜っ!!!!!」
俺絶叫。
壁一面を埋め尽くすメカ。
超メカ。
超未来的なメカが、青い暗闇の中でピコパコピコパコ点滅しているのであった。
「メガァ〜ッ! メメがぁ〜!」
そして、その中心に、『ソレ』はあった。
それはもう、理解の範疇を二億光年周りほど超えまくっていた。
それは、荘厳だった。
それは、可愛かった。
「……おんなの子?」
おにゃのこ。
そう、何を隠そう、おにゃのこがおったんである。それも、唯のおにゃの子ではない。なんちゅうか、にゃんにゃんな感じというか……アイドルを48人くらい縛って束にして足して百乗したくらい、超絶に可愛かった。
腰まで届く白い髪。
ふさふさと長い睫。
真赤な衣から覘く、透き通る白い肌
絶妙な曲線を描く太腿。
そして、ああ、谷間もあらわに大豊作な胸元……。
「NOOOOO! 俺ってば、女体の神秘について哲学するあまりついに脳内妄想具現化能力を会得してしまったのか……!? ああ、自分が怖い。」
いやいやいやいや、そんなわけねえだろ。いや、むしろその方が良かったぜ。この否現実な光景よりは。
「あ、あの〜……君、こ、こんなところで一体何を……」
うん、やっぱりどんな状況においても、コミュニケーションを試みる事は大事だよね! う〜ん、でも、美少女さんの美しさに目を奪われて、俺は重要な事を見落としていたわ……。
「う〜ん……聞こえない……デスヨネ。氷漬けじゃ……。」
そう……。何が楽しいのか、謎の美少女さんは全身氷に身を包んでいらっしゃったのである。何だろう、最近の若者の間では氷漬けが流行ってるんだろうか。『モテカワスリムの氷漬けダイエット』とか。
「……ていうか、も、もしかして、死んで……る?」
ひゅるる〜。
冷たい風が足元を舐めた。
「あわわわわ、だ、大丈夫ですか!? い、生きてますか!? 死んでませんよねっ!? 死んでたら返事してください〜!」
コンコン
返事が無い、唯の屍のようだ。
「おおぉぉぉぉおっあばばばあぉ……ばぶー。」
新発見。人間、あまりにショッキング事態に遭遇すると、幼児返りする。覚えておこうね。
って、死んでるうううううぅぅぅ!!! ま、まさか殺人事件!? 死体遺棄!? ……はっ! 犯人は……この場所を知っていて、そして、ここに誰かが侵入する事を防ごうとしていた人物……。まさか、じーさん!? い、いやいやそんな、まさかまさかまさか、まさかまさかまっさかさま。
「よし。」
見なかった事にしよう。ていうか、見なかったなにも、何も無いし! どーんなに目を凝らしても俺には空気中の電子と陽子しか見えま、せん! よーしよーしよーしよーー……
嗚呼〜! どうしてもボンバーな胸の谷間に目が行ってしまう。思春期真っ盛り男子の哀しさよ。
「う〜……む」
しかし……この娘、ホントに死んでいるのだろうか。
俺は考える人と化す。
そうは思えないほどに少女は美しかった。
だがしかし彼女は冷凍マグロが如く氷の柱に閉じ込められていて、足元に青白い光が、ほわほわと舞っているのだった。
その光景は、恐怖や不可思議さを通り越して、逃れ難い魅力を発していた。
抗いがたい欲求の前に、俺は氷越しの少女をまじまじと覘き込む。
う〜〜〜ん。
頬には薄っすらと紅がさしている様に見えるし、唇はつやつやと潤んでいる…
…それにしても、この生生しさときたらなんだ!
このボンバーでセクシーな胸元は犯罪級ですな。ハァハァ。いや、見てませんよ。見てないけどね!
さらにグッと顔を近づける俺。もはや覆いかぶさっている状態。
「う〜〜〜ん、たまりまへんな。デヘデヘ。しかしなんちゅうか、今にもこう、目がパチッと開きそうな。」
ぱち
「ぎゃああああああぁぁぁぁ!!!! ばいおはざあぁぁアどぉぉぉぉー!!!!」
なーいすなタイミングで謎の美少女さんがうぇーいくあっぷ! するやいなや
「あああああの、ぼぼぼぼ僕は決して怪しい者ではなくてですね」
必死で言い訳を開始する俺。何いってんだろう、最大級に怪しい少女に向かって。
いやはや、どうやら俺の咄嗟の弁明は通じなかったらしい。
なぜなら
どがぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!
美少女が爆発したからだ。
「すんまっせん!!! なんかもう本当すんまっせん!!!」
新発見。人間、本当にテンパったときには、とにかく謝る。