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プロローグ
屋上に、一人の男が立っていた。
男は、その鋭い眼でただ一点を見つめていた。その視線の先にあるものーー圧倒的な暴力を行使する化け物。その巨体は、周りに立ち並ぶビルと比べても遜色ない大きさだった。
ここに憎悪の権化が二人いる。
――あそこに一人と、ここに一人。
「私もお前も、地獄の悪鬼と成り果てた」
男は、腰に差した刀に手を伸ばす。
化け物が吠える。そのあまりにも大きい咆哮は、周囲の空気を震わせた。
――ここは地獄だ。憎悪は絶えず巡り、暴力と暴力がぶつかり、潰し合う、この世の果て。
悪鬼と悪鬼が向かい合う。お互いの殺意で場の空気が満たされる。束の間の、静寂。それはすぐに破られる。
男は刀を抜く。地面を蹴り、屋上から飛び降りる
男は叫んだ。化け物も、負けじと吠える。
火蓋は、切って落とされた。