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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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司、成長す~はじめてのしれん~

あれから15年の月日が流れた。

司は、親の愛を知らないまま、紫織に育てられて、元気に成長した。親から与えられなかった、愛、教養、遊び等、楽しいことも、悲しいことも、本当に色々なものを、紫織に与えられた。

そう、本当に、()()()()を。



「たっだいまー!紫織!」


俺_天地 司は、遊びたい盛りの、15歳。今日も、外の公園で遊んで来たのさ!やっぱり、体を動かすのはいいね。成長期なのかな、毎年毎年、足が速くなって、力も強くなってる気がする。


そんなことを思いながら、紫織を探して、右往左往、東奔西走。何せ屋敷は広い。未だに、知らない部屋が見つかったりする。普段ならこの時間帯は、紫織は掃除をしているはずだ。俺は、一つ一つ、部屋を確かめていく。


途中、書斎を覗くと、父さんと母さんがいた。俺は、あの二人が好きではない。嫌いと言うのも、少し違う。単に、何の感情も、生まれないのだ。接する機会が、少なかったせいかもしれない。会っても気まずいので、すぐにその場を立ち去った。


「紫織!ここにいたのか!」


「司坊っちゃま。お帰りなさい。」


俺が紫織を見つけたのは、それから10分ぐらいしてからだった。

紫織はやはり、掃除をしていた。


「毎日大変だろう?たまには休んだら?いかに付喪神とは言え、働きづめは堪えるだろう。」


そう、俺は紫織の正体を、知っている。最初に見たときは、驚いたものさ。突然、目の前から女の子が消えて、一冊の本が、話しかけてくるんだもの。


「いいえ、ここに置いていただいているのですから、これくらいはやらないと。旦那様に叱られます。」


紫織は、目を伏せながら、答える。その顔には、疲労の色が見えた。


「そうか?無理はすんなよ。紫織が辛かったら、俺も悲しいし。俺、紫織の事、スッゲー大事なんだ。」


我ながら、こんな台詞、恥ずかしげもなく、言えるものだ。今日は、何だか気分がハイになってて、勢いで言ってしまった。


「フフッ、ありがとうございます。司坊っちゃま♪」


よかった、嬉しそうだ。変な目で見られたら、どうしようかと思った。紫織に嫌われたら、俺明日から、引きこもりになるところだった。それにしても、今日は変なテンションだ。こういうときは、大抵ロクでもないことが起こる。気を付けないとなぁ。


「それでは、坊っちゃま。私は、仕事に戻ります。後で、部屋にお伺いしますね。」


「ホントに?楽しみにしてる。じゃあ、また後で!」


今日も良い日、明日も良い日。俺は、紫織と共に、楽しい生活を、送るはずだった。その日の夜までは…。



その日の夜_


「火事だ―!!」


使用人の大声と、燃え盛る火の音で、目が覚める。屋敷の者は、全員寝ていたので、着の身着のままで、庭に逃げ出した。


「家が、我が家がー!」


「ああ…、どうすればいいの…。」


父さんと母さんは、二人して絶望している。そりゃそうだろう。築き上げてきたものが、一瞬で灰になりつつあるのだから。かく言う俺は、そこまで辛さを感じていなかった。住むところが、無くなるのは辛いが、それ以外に執着する理由もない。思っていたよりも、自分の精神はタフだったようだ。そんなことより、気がかりなことがある。


「紫織は、紫織はどこだ?」


不安が頭をよぎる。周りを見回すが、紫織の姿はない。まさか…。


「おい!紫織はどこにいるか、知らないか?」


他の使用人に半ば脅迫のように、八つ当たりのように聞いていく。だが、誰一人として、紫織と行動を共にした奴はいなかった。そして、行方も知らなかった。


「クソッ!」


俺は、いてもたってもいられず、業火に焼き付くされる、家だったモノに突っ込む。後ろから声が聞こえるが、俺の脳はそれを拒否した。体がジリジリと熱い。そう長くはいられない。それまでに、紫織を探して、助け出す。今は、その事しか考えられなかった。


「待ってろよ、紫織!必ず助けてやるからな!」


無謀とも言える、試練に身を投じる司。自分の好きな女を助けるために。ただそれだけのために。







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