表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
25/38

刀華の一日

「フンッ、フンッ!ハアッ!」


「その調子だ、主人!」


やあやあ、諸君。私は妖刀の付喪神、刀華だ。今日は私の一日を紹介しよう。今日は、主人が刀の稽古をしたいと言うので、それに付き合っている。まずは素振りから行っているところだ。


「フッ、テヤアッ!」


ふむ…。刀身の部分を通して主人の顔を凝視するのは初めてだが、なかなか乙なものだな!普段の優しい笑顔ではなく、怖いほど真剣な凛々しい顔もまた素敵だ。これが恋と言うものなのだろう、主人が何をしていてもフィルタがかかったかのように、とても美しい光景に見えてしまう。今私の目の前に、ピカソの絵画やグレートバリアリーフ、サグラダファミリアにスーパームーン等を持ってきても、一笑に付してしまうだろう。それがどうした、私の主の方がよっぽど美しい、とね。


「刀華?」


「む、何だ?」


「いや…。ボーッとしてたみたいだったから。」


刀の姿の私から、どうやって読み取ったのだろう…。表情は見えないはずなのだが。


「皆の事は何でも知ってるよ、どれだけ一緒に旅をしてきたと思ってんのさ。」


くううっ!主人はなぜ、私の欲しい言葉が分かるのだ?付喪神にとっては、役に立つこと、存在を認めてもらうことは至上の喜び。ただの器物であったものたちが、人と同じ姿をとるようにまで至ったのだ。それくらいの事を望んでもバチは当たるまい?そして主人はそんな我々の気持ちを知ってか知らずか、我々を常に喜ばせてくれる。


「主人は素晴らしいお方だ。私は主人の所有物でいられることを、とても誇りに思う。」


「ん、ありがと。俺も、皆と一緒にいられて最高だ。」


「時に主人。あなたは、女体に興味はないのか?」


ブーッ!!!


「ゲホッケホッ、な、何を言ってんのさ!」


「いやなに、おかしいとは思わないか?自分たちの事とはいえ、はっきり言わせてもらうが、我々の肉体はそれなりに魅力的だと思う。そして我々全員があなたに忠誠を誓い、身も心も捧げている。つまり手を出しても何の問題もないと言うことだ。それなのに主人は一向に、我々と契りを結ぼうとしない。これはもう、病気としか言いようがないのではないか?」


ここははっきりさせておきたい。どうにも我々の好意は主人に伝わっていないようだ。いや、もしくは意図的に無視されているのかもしれない。私とて一人の女だ。好いた殿方の心を確かめたいと思うのは、至極当然の話であろう。


「いやいや、皆の魅力は十分伝わってるよ?でもな、一人を選んだら他の皆に悪いじゃんか。いらない軋轢を生むことにも…。」


「はっはっは、そんなことか。それについては心配いらない。少なくとも私は、一夫多妻制は許容範囲だ。一人だけ幸せになろうとは思わん、皆で分かち合わなくては。」


「…。」


わがまま等は言わない。ただそばにいられればいい。それでもどこかで、1歩踏み込んだ関係になりたい、そんな気持ちが抑えられなくなったのは、一体いつからだったかな。私は主人を困らせてばかり。主人は優しいから私たちを傷つけまいとして、逆に自分を追い込んでしまう。そんな姿を笑顔で眺める私。本当はこんなことしたくないのに、口が、体が勝手に動いてしまう。そうでもしなければ、主人が私から離れていくような気がして、私に振り向いてくれなくなる気がして。


「刀華…、お前何を焦ってる?」


ドキリ


聞こえてしまっただろうか。心臓が大きく拍動した。心の奥底を覗かれたような気分だ。必死で取り繕う。


「何を仰るか、焦ってなど…。」


()()()()()()()()。俺の目を見て話せ、今お前はどこを向いている?」


ドックンドックンドックン


鼓動が激しくなるのが分かる。もう隠しきれない。私は、自らの仮面を剥ぎ捨てた。


ボフンッ


人間の姿になって初めて気づく。私は目に涙を浮かべていた。もう止まらない、堰を切ったように喋り出す。


「私は、私はッ…、今までこんなに人を好きになったことなんてなくてッ、なっちゃいけないと思ってて!それでも、主人はッ、主人はとっても魅力的で!私ッもう気持ちを抑えきれなくて、どうしたらいいのか分かんなくて!主人の顔を見るたびに胸が締め付けられて、それでもどうすることもできなくて!普段は大人ぶってるくせして、その実、恋なんてしたことないうぶな小娘でしかない自分がッ、とてつもなく嫌になって…。」


ああ、ダメだ。本音ぶちまけちゃった。嫌われたかなぁ。でもこれが本当の私だもん。情けない最低な女。隠しきれなくなったら、騒ぎ立てて感情を爆発させて。ねえ教えてよ主人、私はどうすればよかったのかな?


「刀華。」


「ふえ?」


チュッ


何だろう、ふわふわする。温かい何かが身体中を駆け巡るような、そんな気持ち。あれ?妙に主人の顔が近いような…。


「んー!?」


唇を塞がれてッ!?これってまさか、まさか…。


「ぷはッ。落ち着いた?」


「主人…、今の、キス…。」


「嫌だったかい?」


「ううん!嫌じゃない!むしろ嬉しい!でも、何で?こんな、私なんかと…。」


「そんなことないさ。悪かった、お前をこんなに追い詰めてたなんてな。はっきりさせなかった俺が悪い。すまなかった。」


「ううん、こっちこそごめんなさい。」


「俺、皆の事大好きなんだ。だからこそ、じっくり皆と向き合って、きちんと返事したいんだ。だから、それまでは…。」


「うん…。ちょっと寂しいけど、大丈夫!絶対私に振り向かせて見せるから!」


「ふふっ、可愛いなぁ刀華は。普段の大人っぽい刀華もいいけど、感情を表に出した刀華もいいね。」


はっ!そういえば普段とはキャラが全然違う!あまりの嬉しさに舞い上がってしまって、素の自分をさらけ出してしまった。


「あっ…。今のなし、今の忘れてくれぇ!」


「脳内保存完了…。」


「主人~~!後生だから~!」


明日からどうしよう、益々顔を合わせらんないじゃないか…。本当に主人のバカ!








…大好き。


テストがちょっと調子よかったので投稿です。感想、要望等ドシドシお寄せ下さい、ブックマークも待ってまーす!よければTwitterの方もお願いします。(@izumifumin)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ