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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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ドラゴンスレイヤーズ

「どうした、ビビってしもうたか?最近の若いもんは情けないの。」


直径2メートル程の手鏡型の鏡の縁を、肩にトントン当てながら、玄瑞は笑顔でこちらを見てくる。いやいや、おかしいだろ。あんなデッケー鏡を持つ力が、あの老体のどこにあるってんだ?化物かよ、あんたもあの龍も!


「そもそも、あの龍が結界を破ったのは、お主のせいでもあるからな?」


「へ?俺達ゃ、今こんなのが封印されてたの知ったんだけど。そんな事言われても困るな。」


「どうせお主、空間に干渉する技でも使ったんじゃろ?お主ほどの力の持ち主がそんな事をやれば、結界とて壊れはせぬまでも、弱体化はする。そこを突かれたのであろう。」


あ、そういえば。さっき幻術を解くために、均衡回復(バランスリターン)を使ったんだった。コイツは、指定した領域の、磁場とか重力場とか、後、地盤の傾きとか、とにかく歪みを直す技だ。その範囲の中に結界が入っちまってたんだろう。霊力探知が効かないから、全然気づかなかった。


「ほれほれ、責任は感じぬか?ワシとて、早いところ解放されたいのじゃ。ワシが、何年ここに居座っとると思うておる。かれこれ、2、300年は経つぞ。いい加減ここにも飽きた。」


2、300年だとぉッ!?さらっと衝撃の事実を言うんじゃねえ! やっぱり、人間じゃねえだろぉっ!


「まあ、そういうわけじゃから。ほれ、ヤツもそろそろ檻の中は、飽きてきたようじゃぞ。」


バキバキッバキッ!


グギャアアアアアアア!!!!


咆哮が俺達の鼓膜を揺らす。


「おいおい、速すぎだろ!飽きっぽいヤツは、社会じゃ生きていけねえぜ!」


「コイツに社会なぞあるわけなかろう。強いて言うなら、コイツらをトップとして、社会が存在するのじゃ。言わば王者なのじゃよ、龍ってのはな。」


そんな王者が、下々の者に当たり散らすなよ…。


「ほれ、来るぞ。せいぜい、死なんことじゃな。」


ギャアギィィィ!!


「おわぁぁっ!」


ドカァン!


火の玉が俺達に向かって、雨あられと飛んでくる。一撃一撃が侮れない。


「チッ!行くぞ、来い紫織!」


「ハイッ!」


ボフンッ


「まずは、動きを止める!束縛(バインド)!」


空中に出現した無数の魔法陣から、特殊な合金製の鎖が龍の体を絡めとろうとする。しかし、蚊でも払うような鉤爪の一振りで、全て破壊されてしまった。


「くそッ、力が強すぎる!交代だ、来い時乃!」


「はいなのじゃ!」


ボフンッ


対象決定(ターゲットロック)、俺と龍!」


均衡破壊(バランスブレイク)!」


ガチャン!


天秤を傾けた瞬間、俺の中に規格外の力が流れ込んできた。やべえ、体が引きちぎられそうだ。でも、この力があれば!


「てめえをぶっ倒せるかもなぁ…。龍よ!」


俺の力が上がっていくのに比例して、龍の力はどんどん失われていく。均衡破壊(バランスブレイク)は、指定した対象の、力の均衡を崩す技。均衡回復(バランスリターン)の逆バージョンだ。さっきまでの俺達の力関係を、均衡を保った状態と見なし、それをぶっ壊した。それによって、俺が大きく強化されて、アイツが大きく弱体化したって訳だ。


「といっても…まだ五分だってのが辛いとこだな。サンキュー時乃、次はお前だ刀華!」


「心得た!」


ボフンッ


時乃を素早く戦場から離脱させ、刀華を構える。


「刀華ァ、アイツの血、吸ってみてえか?」


「そうだな、生まれてこのかた、龍の血なぞ吸ったことも見たこともない。興味をそそられるな。」


「じゃあ、たっぷり飲ませてやるよ!うわっ!?」


飛来した鋭利な突起物。コイツは鱗か?考えてる暇はない、第二波が来る。今度は避けきれない量だ。そんなときは…


「打ち落とすぞ、刀華!」


ガキンガキンガキン!


避けきれないなら、捌けばいいじゃないのッてか?

全部ってのは、ちと骨が折れるが、自分に当たりそうなヤツだけ見極めれば、そう苦じゃねえ。

そうして、捌く捌く捌く捌く。やがて数も減り、弾幕に隙間ができてきた。


「ハアッ、ハッ!」


俺は弾幕の隙間を縫って、高くジャンプし、捻りを加えながらヤツに斬りかかる。鱗を飛ばした箇所には、新たな鱗が出来ていたが、いかんせん強度に欠けていた。出来立てホヤホヤの柔らかい鱗を切り裂きながら、龍の血を貪る。


「よっしゃ、溜まった!行くぜ!」


刀華の刀身が、深紅に染まる。限界まで吸いきった証だ。いつもより、霊力量が跳ね上がっている。龍ってのは、血にも特殊な効果があるのかもしれない。


「霊力解放!紅蓮の型、赤紅雲雀(あかべにひばり)!」


俺が振り下ろした刀から発した衝撃波が、形を変え鳥の姿となる。真っ赤に燃えた雲雀のようなその衝撃波は、真っ直ぐ飛んでいき、龍の体に触れた途端大爆発を起こした。


グギャギギイイイイ!!!


龍は悲鳴を上げる。さしもの龍も息絶えたかと思ったが、そう甘くはなかった。しかし、確実にダメージを受けているようで、

もう火を吐く力も、鱗を飛ばす力も無いようだ。


「よぉー、お前すげえや。こんだけ強えヤツは、お前が初めてだよ。その事に敬意表して、最後にとっときの見せてやるよ。紫織!」


「ハイッ!」


ボフンッ


()()やるぞ!」


「…!ハイッ、司さん!」


俺達は精神を統一させる。互いの心をシンクロさせる。二人の心が完全に一致したとき、それは始まる。


「「神降ろし!!!」」


司の体が発光し、髪が銀色に染まって行く。溢れ出る霊力は、今までとは、量も質も桁違いだ。


「何と!神降ろしを体現させるか!」


玄瑞は信じられないといった目で、司を見守る。


「当たり前だ、我らが主人は、」


「最強最高の存在。妾達の常識ではかろうなぞ、笑わせるわ。」


刀華と時乃の信頼の目線の先には、調伏師の歴史を変え得るかもしれない存在が、確かにそこにいたのであった。


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