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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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最強無敗の1人と1体の龍

「ういーすっ、お邪魔しまーす。旅の者ですけどー。誰かいませんかー。」


俺達は小屋に入ってみる。隠形されているなら、それはするべき理由があるということ。その理由を確かめるため、俺達は、小屋の戸を叩いた。


「誰もいねーのかな…。!?伏せろ!」


ヒュヒュッ カッカッカッ


突然矢が飛んできた。俺の合図で全員伏せていたから、当たらずには済んだ。


あっぶね。まあ、予想はしてたけど。あんな幻術を広範囲にかけといて、中に何も仕込まないとかバカだし。しっかし、ここの家主、俺達を本気で殺す気だな?自分が入るときとかどうすんだよ。


小屋の中は、見かけより大幅に広かった。まるで、空間がねじ曲げられているみたいに。奥の方には、人の気配があった。


「出てきなよ!そんな端っこにいないでさ。家主さん。」


「カッカッカ!ワシも年じゃのう、気配を感付かれるとは、しかも、こんな若造に!」


奥から、老人が出てくる。その目からは、老人とは思えない程の、多大なエネルギーが感じられた。


「あの幻術を破るとは、大したものじゃ。しかも、入り口の罠をかわすとは。お主、カテゴリはどのくらいじゃ?Sとは言わずとも、Aはあるはずじゃ。そのくらいなければ、あの幻術を破る事は出来んからのう。」


「カテゴリ?何だそりゃ。皆、知ってるか?」


「さあ、聞いたことありません。」


「私も知らないな?」


「妾もじゃ。」


4人揃って首をかしげる。


「何と!驚いた、お主は調伏師では無いと申すか?」


「調伏師?楓の親父さんが言ってたやつか。もしかして、あんたもそうなのか?」


「元、じゃがな。しかし、調伏師では無い者が、こんなに付喪神を引き連れて、しかも真名契約まで。」


「ん、そんなに珍しいか?それによく分かったな?」


「そんなに、霊力を垂れ流しておれば分かるわい。普通ならば、霊力供給量の負担が大きすぎるゆえ、1体ぐらいしか契約できん。多くても2体じゃ。それを3体も引き連れて、なおかつピンピンしておるとは…。お主、本当に人間か?」


「一応人間だぜ?付喪神寄りのな。俺を育ててくれた、紫織のおかげでね。」


そう、俺の体は紫織の霊力を浴び続けたのが原因で、身体能力が大幅に強化されている。そのおかげで、今まで生き残ってこれた。


「ふむう。面白し!ワシはお主を歓迎しよう。旅の疲れを癒すがよい!オーイ、玻璃(はり)!」


「はぁ~い。お呼びですかぁ~。」


出てきたのは、語尾が妙に伸びる、不思議系の女性だった。眼鏡をかけてて、ふっくらしたお母さんみたいな女性。でも決して太っているわけではない。メリハリはちゃんとある。見てたら癒されそうな感じ。


「お客様じゃ。」


「はじめましてぇ~。玻璃と申しますぅ~。鏡の付喪神ですぅ~。あれぇ~。幻術を破ったのって、もしかしてこの人ぉ~?」


「そうじゃ。生憎読みが外れたな、同業者ではなかったらしい。しかし、またそれも喜ばしき事よ。まだこれだけの逸材が残っておったのだからな。」


「じゃあ~、この人なら、()()を退治できるかもって事ですかぁ~。良かったですねぇ~。」


「アレ?何かいんのか?」


「これ、玻璃!お客様に余計な話をするでない。」


「あぅ~。すみません~。忘れてください~。」


いやいや、ここまで来て忘れられんでしょ。


「いいよ、その話聞かせてよ。面白そうだ。」


「最初に言っておく。アレはかーなーり、危険じゃぞ?」


「それでも、さ。ここまで来て、我慢できるわけないっしょ。」


「末恐ろしいガキめ…。ふっ、まあいい。付いてこい、本当の恐怖というものを、味わわせてやろう。」


ゴゴゴゴゴゴ!!


急に地響きが起こった。立っていられない。


「ちょうどお出ましじゃな。行くぞ、玻璃!お主らも付いてくるなら、覚悟しておけよ!」


老人とは思えぬスピードで走り出して、あっという間に見えなくなってしまいそうになる。ギリギリの所で追い付くと、老人は、既に技を完成させていた。手には、鏡の姿の玻璃。


そして、相対するは巨大な龍。霊力探知をしても、何の反応もない。それは、この龍の霊力量が、()()()()()()()()()()()()()()。そうでなくとも、迫力がありすぎて足が竦む。


「捕らえろ、合わせ鏡!」


玻璃から、大量の光が溢れだし、龍を取り囲む。そして、そのまま立方体の結界となり、龍を完全に閉じ込めてしまった。龍は、結界を壊そうと、火を口から吐くが、その攻撃は全て自分に当たってしまう。


「ムダじゃ。合わせ鏡は、互いが互いを写し出す、無限地獄。攻撃は全て、反対側の面から内側に返ってくる。いくら攻撃したとて、自分の背中から攻撃が返ってくるだけ…のはずなんじゃがなぁ…。お主に破られたのは、これで何度目かのう?その度に、ワシは結界を張り直さねばならん。その途中で、この片目もくれてやったと言うに。全くワガママなヤツじゃ。」


思わず一人ごちる老人。俺達に気づくと、こちらに振り返り、


「おっと、そういえば名を名乗っていなかった。ワシは、九頭龍(くずりゅう) 玄瑞(げんずい)。元S級調伏師じゃ。よろしく。」


S級の意味は分からなかったが、1つだけ分かるのは、このじいさんが、化物みてえな強さだってことだ。あの龍を、倒せないとはいえ、封印しちまうんだもんな。


「ちなみに、今封印したのはカガチ。龍の一種じゃ。ワシは、コイツを封印し続けるためにここにいる。しっかし、良かったわい。ようやくこの任務から解放される。」


「え?そいつはどういう…。」


「決まっておるではないか。お主が、コイツを倒すのじゃよ。ワシが、今まで封印しか出来なかったコイツをじゃ。あれだけ興味を示しておったのじゃ、まさか断りはせぬじゃろ?」


その、悪魔の笑みを見たとき、俺は自分の軽率な行動を後悔した。やべえ、こりゃ死んだな…。そう思ったときは、後の祭りだった。

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