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災害III

「・・・そうかい。どちらでもいいや・・・君には死んでもらうしね。」


ズザリと瞬間的に飛び上がり、そして蹴りを繰り出してきたレンネクロは苦とせず避けた。


「・・・だめですよ。ちゃんと僕の耳を麻痺させなきゃ。」


煉はピタリと止まった。

そしてこちらを睨んだ。


「・・・何故、わかったんだい?」


「簡単な話ですよ。貴方が攻撃をする瞬間、ズザリという音を出して攻撃を繰り出す。だがこれまではそんな音しなかった。つまり・・・。」


ネクロはカンカンと音を鳴らしながら床を蹴った。


「・・・つまり貴方は僕が攻撃を受ける前に何らかの聴覚麻痺工作のようなことをしたのでしょう。察するに・・・あの遠吠えですかね?」


パチパチパチ。

お見事。

そう言いながら煉は手を返した。


「あぁ、そうだよ。あの遠吠えは君の神経系、特に聴覚を著しく攻撃するんだよ。そして一定時間君は何も聞こえなくなる。それと君が突然俺のことを狼と呼び出したのは俺の力・・・つまり獣の力を見出したからか?」


えぇ、その通りです。

ネクロはそう言って手を返した。


そして二人は高らかに笑い出した。

正直、これに意味はない。

ただただの自己満足。

だが笑い合う理由としては十分なものだったのだろう。



               VII


「じゃあ僕は降参します。もう争っても無駄だと思うので。」


そう言ってネクロは床に座った。

それを見てレンも座った。


「じゃあ俺も降参だ。もうこの戦いに意味はない。俺も知りたいことが知れたしね。」


レンは長い髪を揺らし、ネクロに呟きかけた。


「君は、とてつもなく不幸な人間だよ。混じることを許されず、平和を過ごすことを許されず、唯一の友達も作れない。ホント不幸だよ君は。」


レンは立ち上がり、ニット帽を再び被り、歩き出した。


「ほら、帰ろうか。君のお姫様が待っているよ。」


そうニヤニヤとした顔でネクロに向かい喋りかけた。

黒は同じくニヤニヤとしながら立ち上がった。


「そうですね・・・僕のお姫様が待っていますね。」


淡々と歩き出した。

この時煉のポケット当たりから機械音がしたが、まぁ気のせいだろう。

黒はそんなことを思いながらゆっくり、早く足を進めた。

・・・この後、ネクロはじっくり、じっくりとレンに甚振られていった。(精神的に)


               VIII


「ほらほら。ちゃんと歩かないと。もう仕方ないなぁ。肩持ってあげるよ。」


「うぅぅ・・・。くそ。」


黒は煉の肩を借りてよたよたと歩いた。

その足は千鳥のような歩き方。つまり千鳥足だった。


「ふ・・・まぁまぁ落ち着けよ。ほら、ベットルームにつくぞ。」


「・・・あそこそんな卑猥な名前だったのか。ほんとお前って卑猥だよな。」


「あれ?俺そんな卑猥な発言したっけなぁ・・・いや寧ろ君が・・・」


あ—————。———————。—————


取り敢えず伏せた。

・・・無論思い当たることはない。

オフコースでない。

・・・ちょっと言い方がおかしくなっているのは仕方ない事だ。

うん。仕方ないのだ。

多分。


「・・・おかえり。」


やつれた顔の一がいた。

クマができておりなんだか疲れ気味、そしてなにか心配をしていた顔だった。

俺は涙がでそうになった。

抱きしめたい。なんて言わない。

もしも勘違いだったらきつい。

そういう訳で俺はぐっと我慢した。


「・・・・まぁお疲れ。今日は疲れただろ?ゆっくりここで休んでいくといいよ。」


そう言いながらこちらに向かってくる煉その顔はただの心優しい青年に見えなかった。


「・・・なんか裏あるだろ?例えば現役女子高生を一日泊めてあげたったwとかいうのをSNSなんかに挙げて目立ちたがろうとするやつだろ。」


煉は「よしてくれよ」と言いたげそうな顔をしながら座り込んだ.


「まぁ冗談はよして本題に入ろうか。」


「冗談?俺は本気だったけど?」


しばらく沈黙が入った。


              VIII


「それでは・・・黒君。君の力についての話をしようと思うんだけど・・・。」


そう言いながら煉は視線を反らした。


「・・・なんだ?どうしたんだ?」


見ると煉は何やら思い老けた顔になっていた。


「・・・君をこちら側に引き込むのはどうかなってさ・・・おもったんだけど。君は極めて特殊なんだよ。うん。特殊すぎるんだよ。‘‘周りの人’‘を巻き込むほどにね。」


「・・・・力の手に入れ方のことか?確かにあれは例外みたいな感じでお前は話していたが・・・そこってそこまで気にすることなのか?」


「・・・・あぁ。そうだね。だけど今日話すのは無理だよ。」


そう言って煉は立ち上がった。

何故?と思ったが直ぐに築いた。



先程、人を巻き込むという話をして察すればよかった。

もうすでに、人を巻き込みだしていた。

それもクラスメイトを。


・・・・馬鹿だな俺。

気が付かないなんて。


「とりあえず・・・そういうことだから・・・今日はどうする?帰るかい?」


「・・・・帰る。こいつ・・・一さんは俺が送るよ。それがいいだろ?」


「・・・いや、親御さんに来てもらった方がいい。‘‘不良に絡まれた’‘っていう言い訳もあるしね・・・それに。」


煉はいきなり耳元に寄ってきた。


「・・・・憧れの優等生を助けたってことでその親に気に入れられたいだろ?」


何かいたずら染みた顔でクスクス笑いながらこっそりと話しかけてきた。

・・・・・。

少し自分に腹が立ってきた。

こいつの言ったことに、同意しようとした自分に腹が立ってきた。

その時気が付いた。

・・・俺は食宮に恋心を抱いている。

なんとも下衆で、卑猥で、露骨な気の付き方だったが、

そう実感できた日であった。


                   IX


という訳で色々とあった6月10日は終わり、

食宮も食宮の親御さんの迎えで帰って行った。

・・・ただ、好意の目のような目で見られたのはよくわからなかった。

なんていうわけで今日が始まった。

正直、家に帰る気はなかったので、とりあえず朝ご飯をそこにあったコンビニで済ませ、ぐっと背伸びをして、公園のベンチで寝ころんだ。

そしてそのまま眠ってしまった。

なんていう先程までとは違うほのぼのとした生活を堪能した。

俗にいうスローライフ。そのまんまの意味で。

なんてことしてたら目覚めたときにはもう12時を回っていた。

今日は普通に平日。

なので急いで学校に向かった。

平和な日常。

恐怖も、内容もない日常。


この時、俺には警戒心というものが完全に薄れていた。


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