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災害I

「・・・・ん・・・あ・・・れ?ここ・・・どこだ?」


黒は目を覚ました。

何故かふかふかのベッドの上で。

——————先程まで何をしていたかも覚えていない。


「ん?あぁおはようえーと・・・。」


隣で寝起き顔で食宮は話しかけてきた。

何故か同じパジャマ姿だった。


「喰喘だ。おはよう。あぁそうそうこの・・・なんだ?この・・・パジャマ?なんかファンシーな柄入りで・・・なんか石鹸の匂いがするしなんだろこの・・・犬?かな・・・なぁ食宮。この柄さぁ・・・」


瞬間、俺の思考は止まった。

——————あれ?

何で横に食宮がいるんだ?

いや、そもそも俺は何で女子と同じベットにいるんだ?そして何でペアルックなんだ?

・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


「うーんと・・・多分、犬じゃないと思うよ?わからないけど・・・」


そう言いながら食宮は近くに来た。


「ところで・・・・喰喘君。君は女子と一緒のベットにいることに何も感じないのかな?」


「え?あ・・・いやその・・・えーと・・・。」


更に食宮は近くに来た。


「何でペアルックを着てるのかとかどうして石鹸の匂いがするかとか・・・他には何も感じないの?ううん。何で考えないの?」


更に食宮は近くに寄ってきて、俺の腕には何か柔らかいものが当たっていた。

が、今はそんなことを考えれるほどの状態ではなかった。

汗はどんどんあふれ出し、頭は熱を帯び考えることのできない状態だ。

心臓の拍動は時間を押すごとに早く・・・・

・・・・心臓?


「ねぇ?聞こえてる?・・・ってどうしたの胸を急に押さえだして。」


「え・・・?い・・・何も。」


黒は現実に帰った。

甘い空間で完全に忘れていたことをいま、明確に思い出した。

そうだ。そうだよ。まずおかしい。いきなりで唐突。

しかし思い出の走馬灯とはそんなものだ。

急に頭に流れて、急に消える。

つまり、今は今しかない。逃せば次は来ない。


「なぁ食宮!何で俺ここに・・・」


突然食宮は人差し指を立てて『静かに』というジャスチャーをした。


「大丈夫。ネクラ君が聞きたい聞きたい事はわかるよ。でも私もよくわからないんだ。ただわかることはネクラ君と一緒に寝ていたという事実だけだよ。」


「あぁ・・・ごめん。—————というか俺の名前はネクラじゃない!ネクロだ!確かに変な名前かもしれないけど俺の名前はネクロだ!結構傷つくよ!」


「あらそうなの?ごめんなさいネクラ君。」


「いやだから俺の名前はネクロだ!ホントにガラスハートにヒビが入るよ!」


「え?私は貴方の第一印象を言っただけだけど?」


「余計傷つくわ!もう完全にガラスのハートにヒビが入ったよ!」


和気あいあいとした・・・いや俺からすれば憧れの人に罵倒され続けるという苦行だった。

しかし、そんな中でも心の靄は晴れなかった。

・・・訂正しよう。

クラスの女子にいじめられるという苦行だ。

同じベットで言い寄られている状態だ。


さて、時間はどの程度経過したのだろうか。

5分、いや10分くらいだろうか。

しかし俺には長過ぎた。

理由のない責任感と腕に柔らかいものの正体の究明に忙しく、忙しなく、忙忙しく働いた。

食宮は離れる気配もなく、いや寧ろ近くにきているような気もした。

汗が止まらない。

・・・・・

頭も真っ白になりかけている。

考えることを辞めたい気持ちが溢れてくる。

・・・いや、だめだ。

考えることを止めればそれこそ終わりだ。

18禁だ。

うん。そうだ。そうなんだよ・・・・

・・・ ・ ・  ・  ・  ・   ・いや、既に遅いのか?

もう遅いのか?

冷静になれネクロ。だってそうだろ。同じベットで起きたんだ。これってもう遅いよね?

もう何かやらかしちゃったパターンなのかな?既に罪人なのかな俺。

・・・・でもそうなのか?もしかしたらたまたま同じベットで寝ていただけかもしれない。

・・・・いっそのこと聞いてみるか。


「あの・・・食宮さん。」


「はい食宮です。食宮 初です。」


「えーと・・・食宮さん?な、何で俺達・・・。」


「食宮 初です。」


「な、何で・・・。」


「し・き・み・や い・ろ・は で す。」


「い・・・や・・・。」


「い!ろ!は!です!」


食宮・・・初さんは俺の耳元で叫んだ。


「い、い、い、いろは・・・さん。何で俺達同じベットで、同じパジャマ来ているんだい?」


「知りません。いやそもそもそれだけですよね?まさか・・・ネクラ君はそういうことを考えたのですか?変態ですか?馬鹿ですか?」


異常なほどに顔を近くに寄せてきた。


「え・・・いや・・・あの。」


や、や、や、や、ややややややややっやややややややyyyyy

やば・・・い。

何か・・・・・色々と終わりそうな気がする。

具、具体的には言えない。

具体的には・・・・・

ただ言えるのはもう心は埃レベルでバラバラになっているくらいだ。


ガタ。


「あ——————うるさいうるさいうるさい!静かにできないのか!助けてやったのに。あぁもう・・・・静かにしないか猿ども。」


いきなり後ろから声が飛んできた。

慌てて振り返ると後ろには長身のロングヘアの黒髪の男が立っていた。

何故かつば付きのニット帽を被っていた。

まぁ、それ以外は対してあまり特徴のない・・・・。


「特徴のない人・・・か。まぁその推測は正しいな。まぁ・・・それよりも君の左手をどうにかしなければな・・・・ほれ。」


そう言って男は何か赤い液体を掛けられた。


「・・・・え?」


ドロッと体にかかった赤い液体は左手に巻かれた・・・あ、いや左腕に巻かれてテーピングに染み込んでいった。

左腕から何か生えてくる感覚がした・・・・というか————————


「はははははあははははは・・・・はぁぁぁぁ!?何で・・何で左手ないの?いや、あれそういや全然記憶がない!あ・・・あれ?どどどどどどうしてだ!?何で?」


俺は動揺した。

自分で言う程に動揺した。

心の中で何度も何度もリピートした。


「うるさい黙れ静かにしないか。静かにしないと口にガムテープ貼るぞ。・・・おい動くな。ちゃんと貼れないだろ。」


「う—————!ううう!(いきなりかよ!俺何にもしてないぞ!)」


「悪い。俺は耳が良すぎてな。お前が歯を噛む音とかお前が息をする音とかお前がこの優等生さんにアダルトな妄想してるとことかとてつもなくうるさいんだよ。だから貼った。」


「ん———————・・・・んんんん!ん———!(なんか理不尽な気が・・・っておかしいだろ!一つ音関係ないもん入ってるだろうが!)」


「うるさいな・・・ほら動くな。脚を強く縛りすぎるぞ。」


「んんんんんんんんんんんんんんん!んんんんんん!(拘束が増えた!何で手と足両方縛るんだよ!このドS野郎!)」


「ん?おかしいな・・・・あぁごめんついでに縛って置いたんだ。使い捨て結束バンドで。」


「ん——————————————————!(ヒデェ!このクソサドエンティスト!)」


「——————あのーーーー・・・・・。」


するとここで存在感が無くなりつつある彼女。食宮 一が手を挙げた。


「そういう趣味全開のプレイはいいんで・・・・ここまでの私とネクロ君の経緯を教えてくれませんか?」


彼女はそう言いながら可愛らしく、恥じらいながら手を下した。

この行動には俺も、このサドエンティストも赤面ものだ。

ただ一つ、ただ一つ。

俺は・・・いや俺達は全力で伝えるべきことがあった。

俺は口をひたすら動かし、ガムテープを口から外した。

そしてサドエンティスと同じタイミングで言葉が出た。


「「趣味じゃない。」」


なるべくクールに、大人っぽく爽やかに答えた。

しかし内心。

二人とも恥ずかしがっていた。

異口同音

多分こんな感じだろうか?いや寧ろ以心伝心だろう。

勿論悪い意味で。



「まぁ・・・座って話そうかなえーと・・・何から話せばいいのかな?」


「あぁそうだな。とりあえず俺の上に座るのやめないか?」


「まぁそう卑屈になるなよ前途のない怪物君。」


そう笑いながら俺から離れた。


「・・・なんだよ。冗談でもそういうことを言うなよ。なにがなんでも冗談で怪物呼ばわりは・・・」


「何を言ってるんだい?俺はありのままの君を語っただけだよ。・・・そうだよねぇ・・・お嬢さん?」


そう言いながら男は食宮を見た。

すると食宮は何も言わずただ俯いていた。

男は溜息をつき、椅子の背もたれを前にするように座った。


「まぁいいや・・・本人は気が付いていないようだ。じゃあおとぎ話でもしようか。」


そう言って男は背もたれを両腕で掴んだ。


——————これはとある日突然とかそういう突発的なことじゃないんだ。昔から。古くからサイクルのようにあったことだ。

・・・・『災い』。

今じゃ災害と言うこの現象は古くからなんっども何度も起きてきた。

だけど、災害は本来の脅威度は年を重ねるごとに下がっている。

まぁ言えば人の力でね。

でも、実際は脅威度は変わらない。

ただ人が災害に対応するように、災害も人に対応した。

しかし、災害には意思はない。

だから災害は、自然のサイクルを変えた。

つまり『転生』。

力の転生。それも転生先は災害が対応した人間だ。

だけどその数も、力も弱かった。

そりゃ自然を生き物に転生するわけだから力が弱まるのも当たり前。

だから初めは脅威というか旅芸人状態だった。

しかし、人は対応する。

例えそれが災害だとしても。

だから、年を重ねるごとに強く、そして多くなった。

皮肉だよ。

今現在の平和な人の世にも、災害は潜んでいるなんてね。

まぁでも・・・やっぱり平和なんだよ。

勿論それにも理由があるんだよ。

例えば・・・自分を災害だと気が付かず死んでしまうとか。

例えば・・・平和の外側の闇に葬られたりとか・・・

だから、平和なんだ。

今という平和があるんだよ。———————————


「というわけで説明は終了だ。ほら聞きたいことはあるかい?」


「———————————。」


呆然。

ただ俺も食宮も呆然としていた。

正直、話についていけない。

というか

信じられなかった。

理解不能だった。

男はそんな俺に更に畳みかけた。


「おやおや?信じられないのかい?困ったなぁ・・・じゃあ自分の胸に聞いてみるのはどうかな?その二つの心臓に・・・聞いてみたらどうかな?」


そう言いながら男は自らの胸をたたいた。

俺は・・・自分の胸に手を当てた。

ドクン。

その感覚が伝わる。

だけど、その感覚はちぐはぐだった。

つまり、ちぐはぐ。基二つあるのだ。

そして自分の異常性にようやく気が付いた。

瞬間、俺の頭に倒れる直前、つまりあの殺人衝動に駆られていた時のこと。

そして自分が何をしたのか。

そう・・・誰を殺したのか。

それが今更、遅すぎる回想が始まった。


「————————ぁ・・・あ・・ああああ・・・——————。」


後悔しても過去は戻らない。

でも、今は・・・後悔に責任を転換させたかった。

責任転換

だけど結果は変わらない。

責任転換したとしても。

自分が人を殺したという事実は・・・・

人殺しというのは

変わることはなかった。


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