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プロローグI

今日俺は殺された。


どこのどいつか知らないが通学路を帰る途中、ぐさりと心臓当たりを刺された。

そら吐き気はするはなんので・・・気持ち悪かった。

というわけでおれは死んだ。

初っ端で悪いが俺は死んだ。

悲しいがこの話は終わりだ。

願いを叶えるみたいな異次元的設定は元より備わっていないこの世界。

まずもって俺が生き返るのは不可能。

俺はこの命一つじゃ生き返れない。

そう、俺の命一つじゃ・・・・

しかし・・・俺は生きた。

そもそもこの世界には願いを叶える力はなくても・・・掴む力はあった。

努力、根性、仲間・・・・・

どれかで願いを掴める力があった。

が、そんなものとは違う。

何もかもを超越するその力。

それは人の手では理解できず、ましてや想定することさえできない。

それはまさに


              『災い』


そう呼べるものだった。

勿論、俺は違った。

そう・・・・俺は違った。

だけど、今は違う。


俺は災害になった。

でも他の災害とは全く違う。

完全的な人為による予想不可能の災害。

俺は、

   自分の心臓と、通り魔の心臓を持つ

                   二つの心臓保有者。


人にして、災いである。

どちらにも居場所がない理不尽な立場。

俺はこう呼ばれた。


・・・・・・『災い』。


全く災害と接点のなかった俺が一夜にして、しかも最悪の形で発動し、更に特殊なのだ。

俺はこの世界を呪う。

統一性のないこの世界を・・・・・憎む。

最低最悪の俺の人生を・・・恨む。



                  I


初めに謝罪しよう。

こんな暗い俺の回想シーンから始まって申し訳ない。

取り敢えず名前を述べよう。

俺の名前は喰喘 黒。

一様、クウゼン ネクロと読む。

別に何か変哲のある名前というわけでもなく強いて言えば置物レベルの存在感だろう。

友達もほとんどいない。

なので会話もあまりしない。

良く会話していた時期といえば小学生くらいの時の『ネクラクン』とか、中学時代の『漆黒の闇』とか呼ばれていた時期くらいだろう・・・・。

小学生の時のネクラ君ならわかるが何故中学の時に漆黒の闇と呼ばれたのかは未だ謎だ。


まぁそんなことはどうでもいい。


今の俺からしたら・・・どうでもよいことだった。


今の俺は・・・自分で言うのもなんだが、とてもおかしい。

右胸を押さえ、よたよたと歩きながら・・・息も荒く、そして左胸から感じる拍動を押さえつつまた一歩、また一歩と歩く。

俺は家路を急いだ。

そして俺は・・・殺せる奴を探した。

二つの自分は賛否両論で対抗して対抗して対抗して対抗して・・・・

そんなことを繰り返しながら俺は一歩、一歩・・・夜の路地裏を踏み出していった。

                

                  III


そもそも何故おれがこんな状態にあるか。

その背景にはこういうことがある。

今日・・・いやもうすぐ昨日になるがまぁ簡単な話、定期テストが終わったのだ。

今俺は高校二年生・・・・・

入学時の緊張のある一年や就職や受験で頭を悩ませる三年でもなく爽快感丸出しの高二。

なので俺はテスト終了後・・・走った。

走れメロスの気持ちで走ったわけでもない。

訳もなく、ただ走った。

・・・・とは言え運動はあまり好きな方じゃない。寧ろ俺は文系だ。現代文古文共々赤点確定の文系だ。

ついでに言えば

そんな奴が道聞く人を振り切り走った。意味もなく。

まぁそんなわけでスタミナが切れて何となく入ってみたいと思っていた中華料理店で麻婆春巻ニンニクニラたっぷりレバニラ炒めを添えてというなんかうさん臭さがある料理を頼み。

途中、自分がレバーを食べられないことに気が付き、悲しいが言い訳半分くらい残して店を出た。

そっからはまた走って疲れて休憩して再び走って休憩して・・・・

それを繰り返すうち疲れて公園の公衆トイレに入り、洋風便器に座り、そのまま寝てしまった。

で、俺は目が覚めると芝生の上で転がっていた。

何故芝生の上なのかわからないがとりあえず寝転がっていた。

起き上がろうとしたとき俺は手が滑り、そのまま頭から落ちた。

何に滑ったのか、見当もつかない俺は支えられていた左腕を見た。

しかしその左腕は自分の見慣れたものではなかった。

何せ左腕の手首は切断されていたのだから。


「・・・・は?」


その時はこの言葉しか出なかった。

何せ痛みもなく、左腕には何の支障はないと脳がそう感じていたから。

そしてもう一つ、気が付いたことがあった。

それは汚れ。

鮮やかすぎるほどの赤色。

それは真っ白なカッターシャツにこびりついていた。

そして拍動する両胸。

そう、心臓。

それが両胸にあることに気が付いた。

そして俺の横で万弁の笑顔で倒れている・・・・血の付いたナイフを持ったロングコートの女。

俺は・・・理解が追い付かない頭を必死に使い、何が起きたのかを考えた。

でも答えはわかっていた。

そう・・・・俺が殺した。

多分こいつは・・・通り魔か何か・・・そして俺は刺された。

しかし何らかの抵抗をした俺がはずみでこの女を殺した。

通り魔と思った理由は、こいつの笑顔にあった。

こいつの笑顔・・・それは何かの感謝に見えた。

つまり『止めてくれてありがとう』みたいな意味の笑顔なのだと考えた。

だが府に落ちない。

どうして俺の心臓が増えているのか。

この心臓は誰のものなのか。そして・・・・・

今、こいつの右胸には心臓はあるのか。

そうこう考えるうちに俺は女が持っていた血の付いたナイフを手にしていた。

そうして俺は、なくなった左手を見つめながら

なにか・・・・何かとは言えない何かが胸の奥から湧き出てくる感覚に包まれた。


赤赤赤赤赤色赤色赤色


肌肌肌


血・・・血・・・血。


そうして俺の記憶は途切れた。

そこから後は・・・・何も覚えていない。

ただ、温かくも冷たい液体を浴びて

それに快楽を感じた感覚は

自我が途切れた後も感じていた。


6月10日


雨は降りだした。


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