短編小説・扉の向こう
一日一短編
不思議な短編小説です
宜しくお願いします!
私の子供の頃の話。
近所の友達に仲良し兄弟がいた。
兄の名前は空也、弟の名前は拓海である。
彼らは一歳違いで、いつも一緒に遊んでいた。
「最近ね、変な物が視えるんだ」
弟の拓海が私に言った。
「ん?何が見えるの?」
私は当たり前の在り来たりな返答をする。
「空に扉があるの…」
私はゾクゾクするような感覚を覚えた。
「そ、それに触れたら…駄目…」
「わかってる!危ない感じがするもん」
拓海自身も感じていたようだった。
私は引っ越す事になり、扉の事や拓海の事は忘れていた。
そんなある日、前の家の近くを通った。
たまたま空也を発見。
「久しぶり!空也くん」
私は兄の空也に挨拶をした。
「拓海くんは元気?」
何気なく聞いてみただけだった。
「たくみ?」
空也は惚けたような顔で聞き返した。
「誰だっけ、それ?」
私は寒気がした。
空也が冗談を言っているようには見えなかったからだ。
「弟の拓海くんだよ…」
「俺は一人っ子だよ?大丈夫か…?」
そうか…
私はこれ以上、話しても無駄だと理解した。
拓海は昔は皆が認識していたのだから幽霊の類ではない。
という事は…あの扉か。
きっと扉の向こうに引っ張られたか、開けてしまったか。
私には分からないし、どうにも出来ない。
でも何故、私は覚えているのだろうか…
読んで頂きありがとうございました!
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