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16.失策

16話目です。

よろしくお願いします。

 地雷のカーペットでたっぷりと掘り起こされた地面は、敵トレーラーの足止めにもなる。人型魔動機で歩けば問題無い程度の深さだが、ケヴトロ帝国軍は肝心の魔動機どころか、人員すらまともに動けずにいた。

 ひっくり返ったトレーラーや、急いで脱出しようとして転倒する魔動機などで、部隊の前方集団は大混乱に陥った。

 巻き上げられた土は視界を遮り、アナトニエ王国側どころか味方の状況すら確認できない中で、ケヴトロ帝国軍はどうやって攻撃されたのかもわからぬまま、目前の敵に構う余裕も無い。


「よし、乗れ!」

 ラチェットが運転する輸送車が滑り込むように走ってくると、クロックとボルトは後部から飛び込んだ。

 二人がベンチにしがみついたのを確認して、ラチェットは車を飛ばして、両軍の間から離脱する。

 横転した一台のトレーラーを挟み、立て直しに奔走するケヴトロ軍と、大爆発を呆然と見ている二つの傭兵団が対峙している状態ができた。

 スームの狙い通りに。


「土煙が収まる前に、適当に撃て。大体の場所はわかるだろう?」

『合図を出すよ』

 シートに飛び込み、ベルトを締めたスームが通信を開いて命令を出すと、リューズが応じて再びハードパンチャーの腕が上がる。

 最初にハニカムが乗るホッパー&ビーがランスを撃ちこみ、一拍遅れてストラトーの機体が脇に抱える形で持っていた、魔力キャノンを撃つ。

 ストラトーの機体は団長であるミテーラの出身国、ヴォーリア連邦の機体をベースとしている。ケヴトロ帝国の一般機よりも一回り大きく、機動性よりも防弾性を重視した構造になっている。

 ストラトー所属機は全体的に赤の塗装で統一されているのだが、それぞれの機体に趣味でデコレーションが施され、ハートマークも散見されるあたり、女性ばかりの部隊らしさが垣間見える。

 そんな可愛く飾られた機体たちは、直径二十センチの弾丸を撃ち出す魔力キャノンを抱え、二発だけ撃ちこむと即座に後退を始めた。

 打ち合わせ通りの動きである。

「それじゃ、第一フェーズ終了のお知らせをしますかね」

『先に後退するよ!』

「わかった。できればクロックを殴って気絶させておいてくれ」

『嫌よ。大人しく怒られなさい』

 リューズの通信に答えると、周囲にいたコープスの機体、ハードパンチャーとホッパ&ビーがトレーラーに乗り込み、ギアの運転で後方へと向かう。

 クロック達を乗せたラチェットの車は、予定通りであれば先に向かっているはずだ。今頃は応急処置を行っているだろう。

 予定では一度出鼻を挫いた所で、一旦一キロメートル程後退して、そこで防御陣地を作る事になっている。真正面からぶつかっても勝てはするだろうが、混戦は想定外の被害を受ける可能性が高くなるので、スームとしては避けたかった。

 おまけに、敵には新しい兵器がある。

 計画には多少の修正が必要になったが、その程度のトラブルは戦場では日常茶飯事だ。

 それよりも、とスームは一つのレバーを引いて、イーヴィルキャリアのバックパックを上部へと移動させ、展開した。

「もう少し、混乱して置いてもらうぞ」

 トリガーを引き絞ると、プシュ、という音が連続で聞こえる。

 バックパックから飛び出したのは、三本の小型ミサイルだった。五十センチメートルほどの長さの筒は、くるくると回転しながらケヴトロ帝国軍の方へ向かって飛んで行くと、小さな破裂音を響かせて空中分解した。

 その勢いで、細かい粉末が土煙に交ざるように振り撒かれる。それはとある植物の花粉で、催涙性がある物だ。吸い込むと涙が止まらなくなり、息苦しくなるほど咳が出る。スームも実験中にうっかり吸い込んで悶絶したので、効き目は確認済みだ。

「じゃあ、また後でな」

 結果を確認する事もせず、スームはバックパックを収納するとイーヴィルキャリアの向きを変えて、街道を滑り出した。


☆★☆


「なんだ、あの爆発は!」

 アナトニエ王国軍のイアディボ将軍は、王都の出入り口に魔動機をずらりと並べて敵を待ち構えていた。傭兵団との戦闘で疲労した敵を叩くという狙いだったのだが、王城へは“可能な限り敵の補給戦が伸びた所を叩くのは定石。ましてアナトニエの王城を目にすれば、敵にとって精神的な威圧も可能であり、味方の補給も容易である”と説明している。

 数も少なく、正規の軍でも無い傭兵は早々に壊滅しているであろうという認識と、補給の感覚が徒歩と騎馬の兵士達が主戦力だった頃から変わっていないのは、彼だけの問題というわけでも無い。アナトニエという国家全体が、魔動機戦闘を経験していないが故の事だった。

 セマが危惧していたのはこういった“時代遅れの感覚”だったのだが、コープスから指導を受ける前に戦闘に入ってしまった。おかげで将軍と言う地位もあってイアディボの意見が優先されてこの状況なのだが、それに意見する者も今の王城には存在しない。

「分かりません! どうやら傭兵部隊が展開していた場所での爆発のようですが……」

「見ればわかる事をいちいち報告するな! 爆発の原因を聞いておるのだ!」

「か、確認します!」

 怒鳴られて、逃げ出すようにして魔動機へと飛び込んで前線へ向かった兵士に、イアディボは唾を吐き捨てた。

「傭兵風情が我が国の土地を荒らしおって。生き残りがいたら責任を取らせてやる。とにかく、あの爆発は傭兵共が撃退された知らせとも考えられる……全員、戦闘準備をしろ!」

 兵士たちが魔動機へと乗り込むのを確認し、イアディボ自らも魔動機へとよじ登った。

 兵士達と同様、ハッチは開いたままである。戦闘中は機体による手振りか信号旗だが、最初の攻撃命令は口頭で行うためだ。

 イアディボは昔の戦い方で教育を受けた世代であり、貴族としての生まれと魔動機の操作に適性があったために今の地位にいる。そんな彼にしてみれば、今回の侵攻は自分の地位を盤石にするための格好の機会なのだが、傭兵達が邪魔に思えて仕方が無い。

 かと言って、何かと理由を付けて傭兵たちよりも前に出る、という選択ができなかった事が、彼の限界を顕著に表している。

「将軍、状況が判明いたしました!」

 傭兵団の姿を確認した兵士が戻ってきて、大声で報告を始めたのを、イアディボは腕を組んで聞いていた。

「傭兵団は当初の展開位置より後方へ下がってきています! 詳しい状況まではわかりません!」

「奴らめ、敗走して来おったか!」

 怒声を響かせ、イアディボはコクピットの壁を殴りつけた。

 コープスもストラトーも慣れた動きで後退してきたのだが、兵士にはそれが慌てているように見えたし、イアディボも傭兵団が戦術的に一時後退をしているとは想像もしなかった。

 それだけ傭兵団の実力を信じていなかったというのもあるが、一度退いて敵を誘い込むのは大勢で包囲する為の策であるという先入観から抜け出せなかった面もある。

 イアディボの失敗は、何より連絡員を傭兵団の所へ送ることをしなかった点が大きい。セマは督戦の為の兵員をストラトーに同行させているのだが、彼らはあくまでセマへ報告するためにいるわけで、イアディボへは報告どころかその存在すら知られていない。

 間違った情報は、間違った判断へつながる。

「このままでは、傭兵部隊を食い破った敵は王都へ攻めてくる。全員、前進して敵に当たる!」

 イアディボの号令を受けて、兵員たちは次々にハッチを閉めて進み始めた。

 小部隊ごとに整然と進む様は、見た目だけを見れば確かに壮観である。幾度となく繰り返した行軍訓練の成果を見せる魔動機兵たちは、戦闘が始まっている前方へ向けてしっかりとした足取りで進む。

 中に乗っている兵たちは、初の実戦で緊張しているのだが、べダルさえ踏んでいれば魔動機は無表情のまま進む。外から見ている分には、臆せずに進む立派な軍隊に見えるのだ。

「良し、傭兵共には何人か生き残って、我々に助けられたことを証言してもらわねばならんからな」

 イアディボは、意気揚々と愛機のべダルを踏みつけ、前進を始める。

 緑を基調とした塗装をしているアナトニエの魔動機の中で、一機だけ金の模様を入れたイアディボ機は、朝の光をキラキラと撒き散らしながら進む。

 彼の頭の中には、潰走する傭兵団と入れ替わりに押し出したアナトニエの魔動機団が、数を以てケヴトロの軍を押し返すイメージがありありと浮かんでいた。そして、王より褒章を押し頂くシーンまで。


☆★☆


「この野郎! もうちょっとタイミングを考えろ!」

 包帯の間から飛び出した黄色いモヒカンを揺らしながら、クロックは怒声を上げた。

「そう怒るなよ。しっかり敵を爆発に巻き込むのに焦って、少し早まっただけだから」

「いけしゃあしゃあと……お前があの程度の敵を前にして、焦るはずないだろうが!」

 集合予定地点。コープスのメンバーと、団長ミテーラを含むストラトーの各部隊長が集まっている所に、「お疲れ」と言いながらスームが顔を出すなり、クロックは彼の襟首を掴んで怒鳴りつけた。

「ちょっと来い!」

 と、そのままスームを引き摺り、集団から離れていく。

「後二キロ、全軍を後退させてくれ。詳しい話はそこでする。向こうの新兵器の射程がわからないから、念のためにもう少し下がろう」

「わかったわ。クロック、使い物にならなくなるほど殴っちゃ駄目よ?」

「説教するだけだ!」

 ミテーラの言葉に、クロックは振り向きもせずに答えた。


 そのまま、ハードパンチャーの陰まで連れてきたクロックは、スームを解放するなり。顎を擦る。

「例の新兵器の件だが……スーム、あれはお前の設計だな?」

「誤解を招く様な言い方は止めてくれ。正確には、俺が設計した“ホワイト・ホエール”の図面にセットで付いていた大型の砲と砲弾だな。本体が作れずに、砲の部分だけ作ってトレーラーに載せたんだろう」

 スームの説明を聞いて、クロックは眉間を押えた。

 先ほどスームが出した二キロメートル離れろ、という指示は、適当なものでは無く、ある程度の予見があっての事なのだ。

「こんな短期間で作ってくるとはな。という事は、新兵器の実験も兼ねた、情報強奪戦……って所か?」

「ついでに、アナトニエに対して打撃を与えて見て、どの程度抵抗してくるかを見ているとも考えられるな」

 大きなため息を吐いて、クロックは、眉にかかっている包帯を少しずらした。

「対抗策はあるのか?」

「ある」

 スームは自信たっぷりに頷いた。

「あれは大口径の砲弾を撃ち出す為に、デカすぎて砲だけの旋回はできない。トレーラーに積んでいるという話だから、早い段階で横か背後に回れば無力だ」

 話している間に、周囲のトレーラーや兵員は移動を始めた。先ほどと違い、待機していたスタッフもいるので、大人数がバタバタと走り回っている。その中に、スーム達の会話を聞いている者はいないようだ。

「んじゃ、移動先でそれを説明して、作戦を立てるか」

「そうしよう。このままいけば、大した損害を出さずに勝てるだろうな」

 ギアが運転するトレーラーに向かって歩き始めたクロックは、足を止めた。

「何か気になる事があるのか?」

「前じゃなくて、後ろにな」


☆★☆


 改めて二キロほどの距離を後退したコープスとストラトーの傭兵団は、再び戦闘準備に取り掛かっていた。

 スームが敵の兵器を見ての“考察”を添えて提案した作戦は即時了承され、引き続きストラトーはスームの指揮下に入る事になる。

「スーム。ちょっと聞きたいんだが」

「なんだ?」

 作戦の為にイーヴィルキャリアに乗り込もうとしたスームに、ミテーラが声をかける。

「さっき聞いた、敵の新兵器の件だけど……あれの出所、貴方じゃない?」

「おいおい、急に穏やかじゃない発言だな」

「誤魔化さないで。いくら貴方でも、直接見たことも無い兵器に対して、詳し過ぎるし断定的な意見も多かった。流石に見過ごせないから、確認したいのよ」

 ブーツのヒールも手伝い、二人の視線は同じくらいの高さにある。有無を言わせぬ目で、誤魔化しは許されそうにない、と考えて、スームは両手を上げて降参した。

 素早くミテーラの姿勢を確認したスームは、彼女がいつでも攻撃に移れるように構えているのを知る。ミテーラの元は本職の軍人である事を思い出す。

「わかった、話すよ。あんたの格闘術は喰らいたくない」

「聞き分けの良い人は好きよ」

「それは嬉しいね……あれは、俺の設計だが、作ったのはケヴトロの連中だ」

「どういうこと?」

 手早く状況を説明すると、ミテーラは呆れた、と首を振る。

「天下のコープスが、泥棒にやられるなんて……悪い事は言わないから、もう少し人数増やしたら? 充分稼いでいるでしょうに」

「ウチは雇い主の審査が厳しくてね……それより、俺の話をそう簡単に信じていいのか?」

「わたしもクロックと同じで、人を使っているの。その十数倍の人数をね。これでも、人を見る目には自信があるのよ」

 ミテーラは、ウインクをして自分の機体へと向かった。

「例の作戦、気を付けなさいね。貴方のような天才でも、死ぬときはあっさり死ぬんだから」

「ああ、忠告は肝に銘じておく」


 作戦の内容は単純で、火力があるイーヴィルキャリアを吊るしたマッドジャイロが敵集団の後方に回り、脅威となる砲塔を破壊すると言う物だ。

 危険ではあるが、イーヴィルキャリアにはシールドもあるので、多少の反撃を受けても問題は無いだろうとスームは踏んでいる。

 できるだけ早い段階で主力兵器を潰すため、味方の迎撃準備が整ってすぐ、マッドジャイロは飛び立った。

 時間的に混乱は収まっているだろうと思われるが、侵攻が再開されているとは考えられない。マッドジャイロの黒い機体は、完全に顔を出した太陽の光を浴びて、空を奔る。

『大丈夫ですか、スームさん』

 通信機からナットが心配する声が聞こえて、スームはつい苦笑いを零した。

「大丈夫だ。アレの直撃でも受けない限り、イーヴィルキャリアの装甲は抜けない」

 トレーラーの車体を簡単にぶち抜いた砲弾の正体は、金属部品を可能な限り減らし、魔物の骨などを利用した高速徹甲弾だ。芯と弾頭部分以外は全て軽量な素材を利用し、尚且つ空気抵抗を極力減らす構造にした小型の砲弾を、数十発まとめて高速で打ち出してばら撒く。

 下手な魔動機ならばコクピットを簡単に貫通するだろう。集団で固まっている魔動機群に対して、数発撃てば戦闘は終了するような凶悪な代物だが、束ねた分大型の砲弾になってしまうので、一般的な砲塔では発射できず、また出力が低くても充分な速度が出ないため、いくつかの魔動機関によって加速させる必要がある。

『そろそろ見えてくるぞ、スーム』

「分かった。準備する」

 二本のワイヤーで吊るされたイーヴィルキャリアを大きく振り回すように、迂回して敵の後方から迫っていたマッドジャイロは、素早く高度を下げて行った。

 ワイヤーが外れてしまう可能性を考え、スームはイーヴィルキャリアを操り、シールドの裏から手投げ弾を取り出した。新兵器は全体を破壊する必要は無く、砲弾が半分も破損すれば、使い物にならなくなる。

 確認できた砲台は三つ。三台のトレーラーに一つずつ据え付けられている、とボルトから聞いていた。

 すっかり土埃は収まり、複数の魔動機がトレーラーから降りているのが見えてきた。抉れた地面はトレーラーでは越えられず、魔動機を使って耕された場所を迂回するつもりなのだろう。

 その集団の中から、大きな砲台を抱えたトレーラーを探す。かなり低空飛行状態を取っている事もあり、敵兵から発見されたのか、こちらに対応するような動きを見せているが、スームは冷静だった。

「二台は無傷か。もう一台はどこだ?」

 無事なトレーラーが並ぶ場所に見当たらず、さらに先にいる、ひっくり返ったトレーラー群を観察する。そこで、スームはもう一台を見つけた。

 瞬間、通信機に叫ぶ。

「ナット! 高度を上げろ!」

 言いながら、スームは手投げ弾を捨ててシールドを構えた。

「砲台が一門、こっちを向いてやがる!」

 爆発を避けたせいなのか、生々しい傷跡が残る車体は、タイヤをバーストさせて傾いた状態ながらも、しっかりと砲台をそそり立たせていた。

『クソッ!』

 ボルトの声と同時に、機銃が弾をばら撒き始めたが、十二ミリの弾丸では新型の砲弾は止めようがない。重苦しい発射音とほぼ同時に、雹に打たれたような音と痺れるような衝撃が走る。

 弾丸の軌道が直線だったため、機首を引き上げたマッドジャイロのコクピットは、うまくイーヴィルキャリアのシールドでカバーできた。

 だが、ダメージはある。

「ワイヤーがやられたか!」

 ガクリ、とイーヴィルキャリアの姿勢が傾く。上か下か、ワイヤーの留め具がダメージを受けて外れたらしい。

 一本のワイヤーで不格好にぶら下がるイーヴィルキャリアに振られて、マッドジャイロも揺れる。

『出力が上がりません!』

「なら、やるべき選択は一つだ!」

『スーム、止せ!』

 ボルトの制止は無視して、スームはボタンを操作して残ったワイヤーを外した。

 一瞬だけ振動が伝わり、あとは浮遊感を感じる。計算上、この高さなら機体は耐えられるはずだ。尻が痛くなるのは我慢する事にしよう、とスームは身体を強張らせた。

「ボルト、砲台は俺が必ず潰す! 後はクロックに任せる!」

 これは自分の見込みの甘さが招いた結果だ、とスームは覚悟を決めた。

 敵は約三十機の魔動機。少々苦しいが、挟み撃ちにできると思えば気も楽になる。

『スーム、死ぬなよ!』

「縁起でもない事を……」

 飛び去るマッドジャイロから届いたボルトの声に反応した瞬間、全身を激しい衝撃が貫通する。

「痛ぇ……舌を噛んだ……」

 脚部の関節がクッションになって、スームへ衝撃はかなり和らいだ。手も足も動く事を素早く確認して、右手を伸ばし魔動機関へ繋がる魔力線を掴む。

 すぐに脳内を駆け巡る情報を確認して、スームは不敵に笑った。

「……左膝が少し危ないが、ダメージはさほどでもない、か。我が愛機ながら頑丈なもんだ」

 ケヴトロ帝国軍の黄土色の魔動機が、じりじりとイーヴィルキャリアに向かってそれぞれが持つ砲を向けているのを見ながら、スームは機体に膝をつかせてから別のペダルに足をかけ、レバーを掴む。

「丁度良い機会だ。折角だから、俺が作った武器をたっぷり味わっていけよ」

 思い切りレバーを引き下ろすと、バックパックがスライドして上がってくる。展開して露わになるのは、凶悪な射出兵器の数々だ。そして、シールド裏からも武器を取り出した。

「さあ、始めようか!」

 思い切りペダルを踏みつけると、イーヴィルキャリアは滑り出した。

お読みいただきましてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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