01
突然ですが親が仕事で海外に行きました、私をおいて。
いや、詳しく言うと海外は敵(日本語があまり通じない人種という意味で)がたくさんいるので
私は田舎のおばあちゃんの家に引っ越すことになりました、一人暮らしでも良かったのに。
正直おばあちゃんとは昔会ったきりで、連絡も取っていないし遠距離恋愛の恋人みたいな距離感です(物理的に)。
都会はとても便利なもので、歩けばすぐにコンビニ、20分も車に乗っていればすぐにデパートにつき、洋服も買えるし、パフェやらクレープやら美味しいものが食べられる。
でも、田舎はスーパーへ行くのに車で1時間もかかってしまう。スーパーとは言っても、個人営業で、その日捕れた魚や日用品、卵などが主で野菜やお肉はあまり置いていない。
そのため、住人たちはほぼ自給自足で、野菜を育てたりしている。
以前、捕れたてのイカを頂いたのだが、あれは1時間かけて行っても良いくらい美味しかったなあ、魚ばかりだと都会で育ってきた私にとっては少しキツいものがあり、たまに来る移動販売にてお肉が手にはいるのが唯一の救いでもある。
あとたまに鹿肉等の変わり種もある。
私は都会に染まりすぎてしまったせいか、ここで遊ぶといっても、あまりピンと来ない。
公園に行って、遊具で遊んだり、鬼ごっこ?かくれんぼ?あとはー空き缶蹴るやつ、とかなのかな。
実を言うと、皆が話しかけてくれるもののコミュ障を発揮してしまい、こっちの同級生には『態度の悪い都会の女』というレッテルを貼られて話しかけられない状況です。
てか頑張って話しかけても逃げられる。
「(いったいどうしたらいいんだ…)」
放課後や休日は遊ぶ相手も居ないため、家の中に引きこもりテレビを見たり縁側でぼーっとしたりしていると時間が過ぎていく。
ふと気づいたら夕方になり、外が少し騒がしくなってきた
そういえば、今日は花火大会だと言っていたような。
ということで少し外に出てみることにした。
「(ん…?あれ、この道見たことある…?)」
なんとなく、なんとなくだけど見たことがある気がする。
昔、幼い時に来たような、そのときは確か…蛍を見たっけ。
家からしばらく歩いているとだんだんと日が落ちて、空が暗くなってくる。
うーんと…あれ…あ、確かこっちに曲がると…あった!小川だ!
土手と広いコンクリートの道を挟んで海と川がある。
空気が澄んでいて、潮風が気持ち良い。
…え、光ってる?あの人光ってる…なんか光ってる男の人が土手に座ってるんだけど、えっ。
ん…?あれ?…蛍?ああ、あの人光ってるんじゃあなくて、蛍が周りに飛んでるのか…すごいな。
彼と少し距離を取ったところに私も座ってみる。
静かですごく綺麗だ。
こういう景色を見ていると、田舎も捨てたもんじゃ無いなと実感する
ふと、彼の方を向いてみると、目があってしまった。
…さすがに何もしないのは良くないぜ!と私の頭の中の天使が囁いてきたので、こんばんはという意味を込めて頭を下げてみた
すると、彼はぽかんと口を開けたまま固まり…え…な、泣いてる?
えっあ、え?なんで泣いてんの?私変なことした?
蛍に感動してるわけじゃない、よね…
私がおろおろしていると、彼が話しかけてきた
「な、なあ…おまえ、俺のこと、みえんの?」
恐る恐る聞いてきたけど、こいつ何言ってんの?
あっしまったこいつって言っちゃったごめんなさい
見えるって何?いや見えてるけども…うん…?
とりあえず問いに答えてみることにした
「えーと、見えます、けど…」