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俺と僕  作者: tama
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え、三話目で死んじゃう感じ?

「シィィィィ……」

 その魔物はSSランク『ゾーラ』

 蛇のような生物を頭部に何十匹と宿し、竜の腕のようなものを生やした魔物である。

 体長はおよそ50メートル程あり、おもな攻撃方法は蛇による破壊。接近した者には容赦なく竜の鉤爪で八つ裂きにする。


 ゾーラは不吉な声をあげながら、ゆっくりと上空を舞い、城の兵士たちの様子を伺っている。

 大河は避難経路を通っている途中、寄り道をしてゾーラがよく見える屋上のような場所で奮闘する兵士たちを見守っていた。

「で、でかすぎだろ……」

 息を呑む大河。


 兵士たちはそれぞれ魔法を発動し、武器を魔方陣から抜き出した。剣、槍、銃。

 それぞれが全力でゾーラに攻撃を仕掛ける。しかし、ゾーラには全く効いていない。

 ゾーラは鬱陶しかったのか、頭部の蛇を這わせ、兵士たちを一斉に攻撃した。

 兵士たちは力を合わせ、魔方陣による防御壁を造り、何とか攻撃を防ぐ……が、それもすぐ破壊されてしまった。蛇が兵士たちを襲う。


「うぁぁぁああ!!」


 それぞれが叫び声をあげる。


「あぶなっ……!!」と大河は思わず顔をしかめてしまう。


 確実に蛇たちは兵士を直撃した。そう思えた。しかし、実際には全員が無傷だった。大河はそれに驚き、戸惑う。

 そこに立っていたのは、エウリアだった。

 エウリアはガーゴイルを倒した時と同じ剣を手に、ゾーラのもとへジャンプした。そのジャンプは魔法によるブーストのお陰か、超人的な程飛躍した。


 蛇たちがエウリアに一斉に襲いかかる。


「『剣の呪文』"五月雨"!!」


 エウリアの剣から波動のようなものがいくつも繰り出され、それらが蛇を真っ二つに両断させた。


「すごいじゃろ、エウリアは。」

 と国王が大河の横に立ち、得意気にそう言った。

「美人で巨乳な上、物凄く強いんだな。」

「かっかっか!貴様は中々むっつりなようじゃのぅ。」

 愉快に笑う国王。

「エウリアは我が国、『シャルダンテ』の誇る三銃士の一人じゃからのう。」

「三銃士?」

「この"グランドアース"の三大陸にはそれぞれ一人、大陸最強と呼ばれる女騎士がいてのう。それらを"三銃士"と人々は呼んだ。エウリアはその一人なのじゃ。」

「え、女騎士ってことは全員女!?」

 大河は鼻の穴を広げながら国王に確認を求める。

「つっこむ所はそこじゃないじゃろうに……まぁいい。その三銃士はSSランクの魔物を一人で仕留める力を秘めておる。つまり、ここはあやつに任せておけばよいのじゃ。」

 国王は呆れながらもそう説明した。


 とはいえ、SSランクを相手に、楽勝は出来ないだろう。それなりに苦戦は被るはず。

 大河はエウリアに任せれば大丈夫という言葉を聞いて、避難しようと城内に戻ろうとした。


 その時


「キャアッ!!」


 エウリアの悲鳴が聞こえた。


 そしてゾーラが奇声をあげた。


「キィィイアアアア!!!!」


「な、何が起こったんだ!?」

 耳を塞ぎながら国王に聞いた。

「バカな……。何故ここまでしてフェルディア国王は我が国に攻めてくるのじゃ……。」

 国王は眉を潜め、険しい顔で何処かを見つめた。

 その視線の先を大河は自分の目で確かめた。

 そこには……長い黒色の髪をなびかせる美少女が空中で立っていた。


「だ、誰だあれ?」

「あやつは『フェルディア王国』最強にして東の大陸三銃士の一人、ナデシコ。」

 さ、三銃士ぃ!?なんでここにいるの!?



「な、なんで貴方がここにっ……!!」

 エウリアはナデシコの持っている日本刀のように長い刀によってつくられた肩の傷をおさえながらそう言った。

「…王様の…命令…。」

 ナデシコは冷徹な目でエウリアを見下ろした。

 三銃士が一人いた場合はSSランクの魔物を相手にしている余裕はない。ナデシコの登場で『フェルディア王国』は一気に劣勢となった。

 ナデシコは魔法を使い、エウリアのもとへ猛スピードで接近する。

 エウリアも剣を構え、迎え撃つ。

 二人はつばぜり合いの状態となった。

「本気!?ここでやりあえばお互いただじゃすまないわよ!?」

「これも…命令…。」

 ナデシコはあくまで業務的にエウリアを睨んだ。


 その頃国王と大河は


「お、おい。あの二人戦いだしたよ…。」

 と大河は焦りながら言った。

「じゃな。このままじゃあ、ゾーラにやられるかもしれん。」

 国王は複雑な顔をして言った。そして、意を決したように言葉を繋げた。

「よし、わらわも行くとしよう。」

 国王はそう言って兵士の大群のもとへと向かった。


 一人取り残された大河はただその光景を見ることしか出来なかった。


「ねぇ。」


 不意に女性の声が耳元から聞こえ、大河の心臓が跳ねた。

「だっ!誰だ!?」

 後ろを振り返ると黒色のフードを被った女性が立っていた。

「うふふ。そんなに驚かないでよ。」

 彼女は笑みを浮かべそう言った。

「さぁて、相田大河くん。今から貴方の第二の人生が始まるの。」

 大河は黙して彼女の言葉に耳を傾ける。

「このままではあそこの国王は死ぬし、エウリアとか言う女も死ぬわ。」

「!?」

「ふふ。でも、そんな未来は訪れない。何故なら、貴方が……『ロード』である貴方がそれを阻止するからよ。」

「ロード?」

 聞きなれない言葉を聞いた大河は戸惑う。

「キィィイアアアア!!!!」

 後ろにゾーラが迫っていた。

「なっ!!!」

 大河は慌てて振り向き、距離をとる。

「さぁ、このままだと貴方は死ぬわ。」

「は!?」

 死ぬ?本当に?ここで死ぬのか?

 それが大河の中で反芻する。

「う……うぁ……」


 一歩


 また一歩


 大河はゾーラに怯え、後退りする。


「うわぁぁあああああああああ!!!!」




 ついには背を向け全速力で逃げた。



「シィィィィアアアア!!!」



 ゾーラは蛇を這わせる。




 およそ8匹が大河を狙う。



 スピードは大河の走るスピードより遥かに速い。




 ドスッ





 一匹が大河の心臓部分に突き刺さった。




 更に一匹、また一匹と、容赦なく大河に突き刺さる。

「ごっ……ぷっ……ぁっぐ!!……ろぇ……。」

 吐血により喘ぐ大河。

 激しい痛みにより、涙や鼻水が止まらない。しかし、それよりも血が圧倒的に足りていない。

 即死。

 その表現が一番ふさわしいだろう。

 べちゃっという音をたてて大河は倒れた。

「ふふふ……ふふふふ……あは、……ふふ……。」

 フードの女は不敵に笑う。

 大河はもう、息をしていなかった。


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