え、僕ってチートなの?
異世界"グランドアース"
そこは地球とは別の次元にあるもうひとつの世界。その世界は『魔法』の概念があり、異世界住民は皆使用することが可能だ。また、ドラゴンなどの魔物にも溢れており、町の外には様々な危険が及んでいる。
地球よりもし資源に富んでおり、大陸ごとに搾取出来る資源が異なっているため、国同士の絆を何よりも大切にする世界でもある。
大陸ごとに国が別れており、東の大陸を"イーストグランド"西の大陸を"ウエストグランド"北の大陸を"ノーズグランド"という。それぞれの大陸で伝わった魔法や文化が違い、一番勢力の強い国はウエストグランドだ。
この一通りの説明を大河はエウリアから受けた。
しかし、状況がうまく飲み込めず、戸惑う大河。
「あ、あのさ、なんで僕がこんな所に連れてかれたわけ?」と大河は問うた。
「それは…」
エウリアは言いにくそうに目をそらし、口を紡ぐ。
「貴方が、この世界を破滅に追い込むかもしれないからです。」
……は?
僕が?
なんで?
驚きのあまり声が出せない。
「いきなり言われてもわからないですよね。とにかく、私についてきてください。」
エウリアはそう言って前へ進んだ。
――――――
大河は辺りを見渡した。
小さな湖がそこらじゅうに散らばっており、鹿のような獣が草を食べている。
蝶のような生物もそこらに飛んでおり、空気も澄んでいた。花も咲いていて、地球では見られないほどの景色が広がっていた。
(ほえ~…すげぇ場所だなぁ…。)
大河はそう思いながらエウリアについていく。
エウリアの金色の長い髪が彼女の歩きにあわせて左右に揺れる。
「えーと、エウリアさん?」と大河が呼び掛ける。
「エウリアで良いですよ。歳もそんなに離れていないですし。」
「わかった。なぁエウリア、一つ聞いても良いかな?」
「はい…なんですか?」
大河は真顔になり、立ち止まってエウリアを見つめる。エウリアも立ち止まり、真剣な顔で大河を見る。
「あのさ…」
「はい。」
「何カップ?」
「……はい!?」
エウリアは両腕で胸を抱え、顔を赤らめて驚く。
「な、なな、何聞いてるんですか!!」とエウリアは動揺しながら言った。
「だって気になるじゃん!!歩くたびに揺れるその豊満なおっぱい……目測ではGはある……。」
大河は手を顎において、事件解決の手懸かりを探る探偵のような目付きで彼女の胸を睨んだ。
「そそ、そんなにないですっ!!」
「じゃあ何カップ?」
大河はニコッと微笑んで問うた。
「エ……あ、いや、お、教えませんっ!」
「F!?Fもあるの!?」
「ちょっ、わ、忘れなさいっっ!!」
「ぐはぁっ!!」
エウリアは恥ずかしさのあまり、大河を平手で殴った。
大河の右頬には紅葉が浮かんでいる。
「冗談じゃないかー……二割。」
「八割本気じゃないですか!!」
そんなやり取りをしながら歩いていると……
「グォォォォォ!!!」
魔物に遭遇した。
「なんじゃありゃぁぁ!!?」
大河は叫び、驚く。
「《ガーゴイル》鳥獣系の魔物です。ちなみにAランクですね。」とエウリアは冷静に分析しながら説明する。
「つ、強いのか!?」と大河は問う。
「かなり。なんせAランクですから。」
大河はAランクという言葉を聞き、何となくだが理解はできた。男としてはRPG等の知識で大体察しがつくだろう。
ガーゴイルは二人を狙って鋭い鉤爪でわしずかみしようとした。
「よけてっ!!」とエウリアは大河に指示を出した。
「おわっ!!」
大河はすんでのところで避ける。地面に体を擦りむかせた。
「錠の呪文」
エウリアは左手の中指にはめられてある指輪を前に差し出し、そう唱えた。
「"鎖"」
するとガーゴイルの頭上から魔方陣が現れ、そこから何本もの鎖がガーゴイルを拘束した。
「す、すげ……」
大河は唖然としながらただ、その光景を眺めているだけだった。
「タイガさん。少し試させてください。」
「え?」
「貴方は世界を破滅させる力を持っている…それを今、ここで証明してみせてください。」
「はぁぁぁ!?」
おいおい、冗談はそのおっぱいだけにしてくれよ。
と大河は心底焦っていた。
「Aランクとはいえ、それほどの力を持っている者でしたら簡単に仕留めることが出来るはずです。」
「まてまてまて、おかしいぞそれ!?今ここに来たばっかり!!さっき魔法見たばっかり!ボクデキナイオーケー!?」
大河は必死に説得する。しかしエウリアも引き下がらない。
「書物によると、貴方は本来魔導士に必要な指輪が無くても六割程度の力が出せるはず。それだけあれば、十分倒せます。」
「エウリアって以外とSだね!!」
大河は半ば涙目で叫んだ。
「ええい、ともかく!やってもらいます!これも、国王の命令の一つでもあるんですからね!」
エウリアはそう言ってガーゴイルの拘束を解いた。
「オーマイガー!!」
ガーゴイルは大河を真っ先に狙って攻撃した。大河はそれを必死に避ける。
「安心してください!本当に危なくなったら助けますから!」
エウリアは安全な距離をとって大河に伝える。
大河は全力で逃げる。
(くそっ!なんでこーなったんだよっ…!)
「ギァァアォォ!!」
ガーゴイルは奇声を挙げてくちばしで地面をつついた。一つ一つがとてつもない威力を持ち、地面を隆起させる。
「ぐあっ!」
大河は石につまずいてしまった。その一瞬の隙が命取りとなった。
「クィィイアア!!」
ガーゴイルは叫び、巨大な足を振り上げた。
大河は死を感じたその時。
ザンッ!!
目の前のガーゴイルが真っ二つに割れた。いや、裂けたという表現の方が正しいかもしれない。
「え…?」
「大丈夫ですか、タイガさん。」
そこには鏡のような輝きをもった細身の剣を手にしたエウリアが立っていた。
「は、はは…マジで…死ぬかと思ったよ…。」
大河は死に直面し、脱力したためか、気を失った。
――――――――
大河が気が付くとそこは、かなり豪華な部屋に居た。
「…ここは…?」
焼きたてのパンのようにふわふわのベッドから体を出し、状況を把握した。
「アイダタイガ様。お気付きになられましたか。お目覚めのところ、申し訳ありませんが、今すぐ王室へと向かってもらってもよろしいでしょうか。」
メイドのような服を着た女性が大河に言った。
「あ、あの、ここは…(めっちゃ美人じゃん)」
「我が国、"ノーズグランド"の王城ですよ。」
エウリアが召し使いに代わって説明した。
そのあと、大河とエウリアは王室へと向かった。
「王様。ただいま連れて参りました。」
エウリアが膝をつき、王に向かって言った。
「うむ。苦しゅうない。」
と王が言った。
「なぁ、エウリア。王ってこいつ?」
「ちょっ!!タイガさん!!王様に向かって失礼です!!」
「まあまあ。そう言うでない。こやつは異世界人なのだから。」
しかし、大河が思わず疑ってしまうのも無理はない。なぜなら、そこには完全なる幼女が居たからだ。
「タイガ…と言ったの。貴様は世界を滅ぼす気はあるかいの?」と王は大河に問う。
「え、ないよ。」
「そうか。じゃあ帰って良いよ。お疲れ。」
呆気なく事は解決した。
「な、なんかやけに呆気ない…」思わずエウリアが呟いた。
(世界を滅ぼす…ねぇ。俺なら喜んでいただろうな。)
と大河は思った。
その時、一人の兵士が王室へ入ってきた。
「大変です!!『フェルディア王国』が攻めてきました!」
「なんじゃと!?敵は何人ぐらいじゃ。」
「いえ…魔導士ではなく、魔物をけしかけて来ました。それも……SSランクです。」
その兵士が口にした瞬間、空気がピリッとした。
「SSランク…!?一体何故そんな伝説級の魔物をフェルディアが!?」とエウリアは汗を顔につたわせながら言った。
「くっ…仕方ない。城内の魔導士を総動員させよ!魔物を迎え撃つのじゃ!エウリアも頼む!」と国王は指示を出した。
「承知致しました。」とエウリアが言うと、王室から出ていった。
「い、一体なんだってんだ…?」
「お主はすぐに避難せい!ここは危ない!」
大河は国王に忠告され、すぐに王室を出た。
避難するために通る経路から外の様子が伺えた。
それを見た大河は息を呑んだ。
「な、なんだよ……あれ……!」
そこには、城全体を覆い尽くす程の大きさの魔物がいた。