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俺と僕  作者: tama
18/26

キサラギの任務 4

 大河たちは街中を走っていた。

「どこに向かっているんだ!?」

 大河はハアハアと息を切らしながら言った。

「奴等の狙いはクリスタルジュエル。だからキサラギ山の頂上へ向かわなきゃいけない!」

「エウリアとサラキはどうするんだ!?」

「…おねぇとエウリアなら大丈夫!…だってあの二人は強いんだもん。……それに…あ、なんでもないっ…。」

「…ヒラキ!ハァ…!お前っ…まだくよくよ…ハァッ…してんのかっ!!」

「…っ!!」

 大河は体力には自信があったが、走るスピードが速いため、流石に疲労は激しかった。声を出すと余計に体力を消耗してしまう。しかしそれでもヒラキの迷いや不安を無くそうと必死だった。何故他人の事情にここまで干渉するのかは、自分でも分かっていなかった。

「…とにかく今は…キサラギ山へ向かおう。」

 ヒラキの言葉を聞き、黙って走る大河だった。


 ――エウリア&サラキ――


「こんなに早くアリアが動くなんて…。」

 エウリアは襲いかかってきたアリアの刺客、黒子のような衣装を着た者を拘束していた。

 人気のない路地裏に誘い込み、上手く不意を突いて捕らえることが出来たのだ。

「ヒラキとタイガさんは大丈夫でしょうか…。」とサラキは言った。

「まぁ上手くやっていると思います。とにかく今するべきことは、キサラギ山へ一刻も早く向かうことです。」

 そう言ってエウリアは、黒子を担いでサラキと共に、キサラギ山へ向かうのだった。


 ――キサラギ山 山頂――


「やあやあ、ミラ。君の分身は二体とも殺られたようだけど、本当に大丈夫なんだろうね?」

 グレーの髪を丸く刈った男性が、ミラと呼ばれる黒子のような衣装を着た人物に言った。その男は白衣を着ており、邪悪な笑みを浮かべていた。

「……。」

 ミラは黙って頷いた。

「まぁいい。来たところで奴等には何も出来ないだろう。このクリスタルジュエルには指輪の鉱石を作り出す成分はないけど、面白いことは出来そうだしね。……ククッ…。」

 丸渕眼鏡を中指を立てて、上げた。

「ザンギ様。奴等がキサラギ山の入り口門を潜った所を目撃いたしました。」

 一人の兵士がザンギと呼ばれるグレーの髪の男に言った。

「ふん。迎え撃て。」

「はっ!」

「なかなか早いじゃないか。……ククク…ならばこちらも準備にかかるとしよう。」

 ザンギはそう言って不敵な笑みを浮かべた。


 ***


「入り口のガードマンが居ない…。やっぱりもうアリアは頂上にいるんだ…。」

 ヒラキは辺りを見回して、そう言う。

「ツアーのとき、怪しい奴が一人居た。多分、そいつが何らかの仕掛けをしたんだろうな…。」

 大河はそう言って門のすぐそばにあった休憩所の小屋のドアを開いた。すると、そこには門のガードマンが二人、眠っていた。

「やっぱり…。この世界には睡眠ガスとかあるか?」

「…裏のルートとかならある。」

「じゃあそれしか考えられないな。」

「……とにかく、今は頂上へ向かわなきゃ。」

 ヒラキと大河は門を潜って、頂上へと向かった。


 その数分後、サラキとエウリアが門へと到着した。

「門番が居ない…。ということは、もうすでに侵入されている?」

「恐らく。とりあえず頂上へ向かいましょう。」

 サラキはそう言って、エウリアと共に頂上へと向かうのだった。


「ぐあっ!」

「がはっ!?」

「うわあああ!!」


 ヒラキはブリューナクの我槍によってアリアの兵士達を蹴散らした。

「ダイヤモンドジュエルが見えてきたから、あともうちょい!」

 二人は全速力で駆け上がる。

 すると、空に暗雲が立ち込めた。

「な、なんだ!?急に天気が…。」

「…っ!多分、クリスタルジュエルの魔力を解放してるんだわ…。魔力を放出すれば、天候をも変えてしまうことがあるの。……急がなきゃ……!」


 大河とヒラキは頂上へたどり着いた。

「やあやあ。ここまで遥々お疲れさまァ~。」

 ザンギは薄ら笑いを浮かべながら大河たちにそう言った。

 ヒラキはザンギを睨む。すると、視界の端に見覚えのある黒子の衣装を見て、ヒラキは口が塞がらなかった。

「な、何で…あんたが……?」

「おっとぉ?ミラに見覚えがあるのかぁい?クククッ!!それはミラの()だよ…ククッ!」

 ザンギが笑ながらそう言った。

「おいミラ。影を回収しな。」

 ザンギの指示に、ミラは頷いた。すると、ミラは漆黒の剣を魔法陣から召喚した。

「…レーヴァテイン。」

 ミラはそう呟いた。その声は透き通っていた。

 その呟きに反応するように、ミラの足元に魔法陣が浮かび、黒い旋風が周りに巻き起こった。

「な、何だ!?」

 大河は風を遮るように、顔を腕で覆った。

 すると、ミラの左右の地面に、一つずつ魔法陣が展開された。その魔法陣から黒子の衣装を着た、もう一人の…いや、もう二人のミラが出てきた。

「なっ…!?三人!?」とヒラキは言う。

 三人のミラは真ん中にいるミラに重なり、一つとなった。その瞬間、黒の旋風が衝撃波となり、周りの大気を震わせた。

「ミラはねぇ…、我が組織が造り上げた(・・・・・)最高傑作何だよ…?個人能力(オプション)である"レーヴァテイン"の能力により、自らの分身…つまり、影を作り上げることが出来るのだ…。ククッ…。」

 ザンギは眼鏡を上げ、解説した。光の反射で眼鏡のレンズが光っている。

「因みに、影を作り出している間は、それぞれに平等な能力を持つように出来ている。つまり、自分の他に二人の影を作った場合、それぞれの思考能力や身体能力が三分の一となる。と言うことは、君たちがさっき戦ったミラは三分の一の力だったと言うわけだ。今のミラは本気を出せる。戦いにおいての判断力ももとに戻っているため、能力は三倍以上となっているのだ。クククッ…。」

 ミラが一歩前へ出る。

「ミラは我が組織が造り上げた最高傑作……それは、三銃士に一人で対抗するために造り上げられたものだ。……まだ未完成だから三人は相手には出来ないけどね。ククッ。」

 ザンギのその言葉を聞いて、ヒラキと大河は、ミラがどれほどの力を持っているのかが分かった。

「さて、このままただ単に君たちを殺してしまうのは面白くない。そこで、君たちに私の実験に付き合って貰うことにした。」

「実験……だと?」

「ああ。聞いてくれるかい?このクリスタルジュエルの興味深さを。」

 大河たちの返事を待たずにザンギは言葉を続けた。

「我々はこのクリスタルジュエルを使って指輪の鉱石を作り出す研究をしてきた。それが実現すれば、目的を果たすことがぐんと楽になるからね。」

「目的って……なに?」とヒラキは言う。しかしザンギはチッチッチ、と舌打ちしながら言った。

「おっと、それは言えないねぇ…。…それでね、残念なことにこれにはその適性がないんだよ。正直、がっかりした。しかし先ほど、あることが分かった。それはね………人体の魔力を最大限に引き出し、それを暴走させるものだ。」

 ザンギは鼻息を荒くし、興奮していた。

「このクリスタルジュエルの魔力を抽出し、それを直接人体に注ぎ込めば、ジュエルの魔力と人間の魔力が反応し合い、融合する。そうすることで、本来出せなかった力も出せるようになるんだよ。どうだい?実に興味深いだろう?しかしね、これはまだ実証できていないんだ。データが出ていても、実際にやってみれば、結果が違った、なんてよくあることだ。と、言うわけで、君たちにはその実験台になってもらおう、というわけだよ。ククッ、ククカカカッ!!光栄に思いな!!」

 そのおぞましい形相に顔をしかめる大河たち。

「因みに、魔力の放出が許容量を越え、人体に含まれる魔力が空となった場合……廃人となる…分かるね?」

 それは最早この世界の常識だった。魔力がなくなれば人として生きることが出来なくなる。

「本当ならばもっとすばらしい魔力を持った者に注入したかったのだが…この際仕方がない。諦めよう。人間、諦めが肝心だからね。クク。さて、前振りはここまでだ。いけ、ミラ。」

 ザンギがミラに指示を出した。その指示に従い、ミラはブーストで大河たちに急接近する。

「避けてッ!!」

 ヒラキが叫んだ。二人はそれぞれ横へステップし、ミラの剣をかわした。

 その直後、ミラの右に魔法陣が展開された。そこからミラの影が現れ、大河とヒラキの元へそれぞれ向かった。

「うおっ!?」

 大河は全力で逃げる。

「タイガ!何とか逃げてッ!!」

 ヒラキはそう言いながら、ミラの剣を槍で受け止める。能力が半分になったとはいえ、かなりの腕前だった。

「アカリ!!力は使えないのか!?」と大河は言った。

『無理!!何でかわかんないけどこの前みたいにうまく魔力をタイガに流し込めないよ!』

 大河の脳内に直接語りかけるアカリ。

「えええっ!?何でなんだよッ…!!ハァ…ハァ…。」


 ヒラキはある程度ミラと距離をとった。そしてブリューナクを地面に叩きつけた。

「"共鳴"」

 すると槍の刃が細かく振動し、ブゥゥゥンと僅かな音をたてた。

「この槍に当たったら、その部分がと槍とが共鳴し合い、破壊現象をもたらすわ。それは決して大規模な物ではないけれど、人体に影響を及ぼすには充分すぎるから。」

 ヒラキはそう言って足に"脚力強化(ストロング・レッグ)"の魔法をかけた。そしてそのまま地面を強く蹴り、たった一秒でミラの目前まで迫った。

 ヒラキはミラの心臓部分に向かって槍を突き刺す。ミラが反応できたのは、槍とミラの身体との距離が六ミリまでに迫った時だった。

 この状況下でかわすことは不可能だ。

 それは誰にでも分かることだった。


 ――にもかかわらず


 傷付いていたのはヒラキの方だった。


「かはっ……!?」


 腹部を深く斬られ、そのまま地面へ倒れこんだ。

 何が起きたのか、ヒラキには理解できなかった。大河はヒラキが地面に倒れこむ音を耳にし、ヒラキの方を見た。

「……っっ!!」

 大河はすぐにヒラキの方へ駆け寄ろうとした。しかしその間、大河は背後に迫っていたミラの影に意識を向けられていなかった。


 大河はそのまま背中を斬られた。

「……っ!!……がっ!」


 そして二人がミラによって押さえつけられ、止めを刺されようとしていた。

「クックックッ!さぁミラ。動けないように手足を斬ってしまえ!!」

 ザンギが声を大にして言った。

 ミラが剣を振り上げた。

「「!!!」」


 その瞬間、何か(・・)がミラたちの服をかすった。


「間に合いました。」

「大丈夫か?ヒラキ。」


「エウリア!」

「おねぇ!!」


 エウリアとサラキが頂上へ到着し、大河達を救った。


 



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