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訓練は大変だ

 出会いと別れの街レラシオンを出発したルーファス等はその後順調に学園都市を目指した。レラシオンにはドルディーが消耗品の補填に立ち寄っただけなのだが、そこでルーファスがトラブルに巻き込まれ(自分から入って行ったともいう…)3人の少女が奴隷になりそうな所を救い、懸賞金とともに少女達の主となった。少女達はルーファスと同い年でドルディーはルーファスの世話、並びに話し相手として積極的に接するように言うのだが……。


 レラシオンを発って数日がたった。今ルーファスは非常に困惑していた。自分が救出した少女達が必要以上に構ってくるからだ。今までの生活からルーファスは一人でいることが当たり前だったからだ。今更じたばたしても仕方がないが旅の人数が増えれば面倒も増える。用を催したときもそうだし、寝る前には旅先で水は貴重なのだが軽く身体を拭く。この時間は苦痛だ。いても良いとは言われても困るのだ。母親と言うものを知らないし、深層では憧れてさえいる。そういった存在と一緒の性別である女がそこに居ても良い。すなわち見ていても問題ないという。これにはさすがのルーファスも逃げ出した。と言っても少し離れた場所で背中を向けているだけなのだが。そうするとさすがに追いかけてはこない。そして身体が拭き終わると呼んでくれる。だが問題はその後だ。少女達が一緒に寝ようとするのだ。これにはさすがのルーファスもどなり声を上げた。はっきり言って女が怖いのだ。どう接していいか全くわからない。なのに向こうはこっちに寄ってくる。一種のパニック状態と言っても過言ではない。だからルーファスは誰もそばに寄せ付けない。だがこれは女だけに留まらず他人との触れあい方が全くわからないのだ。そして、それが原因でもめることになるのだが…。それは別の話し。


 どんなにルーファスが拒んでも少女達はルーファスによってくる。初めは凹んでいたがドルディーがルーファスはシャイなのだと言って聞かせたからだ。そしてそんなルーファスの心を開かせて見せろと(けしか)けてさえいた。


 そんなこんなでレラシオンから学園都市アイギスまでの街道沿いにある最後の町ムロリーに到着した。ここをでて二日も向かうと学園都市アイギスに辿り着くことになる。町に入ると多分アイギスへと向かう親子連れで賑わっていた。その光景をみて、親子の様子をみてルーファスはかなり落ち込んだ。


 親子の関係か……。楽しそうだ……。


 はっきり言って皆が羨ましい。もっと言えば憎い。この感情が憎悪なのだと理解したくなかった。足早に逃げるように皆と宿をとりに行く。チェックインを済ませるとルーファスは一人で部屋に籠った。


 オレ一体なにやってんだ。こんなのオレじゃねえだろ。情けねえ。深い溜息を吐いた。色々な感情がごちゃ混ぜに押し寄せてきてルーファスを悩ませる。とその時ここに来る道中のメイドたちの対応を思い出す。

 そういいやオレはあいつらから逃げてたな。逃げた?オレが?何故だ?怖いのか?怖かったか?分からない。あいつらの腕を見ただろ細くて今にも折れそうで、それなのに逃げたのか…。そういや前にドルディーが女は殴っちゃダメだ。とか言ってた気がする。だからなのか…。でもホントは触りたかった。なんか柔らかそうで。肌も綺麗だった。胸も大きかった。ん?なんか発想が段々エロな方に向かってるな…。今までこんなことは全然なかったのに…。


 難しく考えんな。と頭をぶんぶんと振り、雑念を振り払おうとした。しかししようとすればするほど考えてしまう。この年頃の青少年などは大体こんなものなのだが友達のいないルーファスには相談することも、答えを出すこともできない。そしていつの間にか眠ってしまった。しかし目が覚めると誰かが膝枕などという展開はなく、扉の向こうで話し声が聞こえたのでそちらへ行ってみた。扉を開けると皆で真剣に話していた。


「若お起きになられましたか。」

「なにかあったのか?」

「いえ、そうではなく明日このもの達を連れて南の森に狩りに出かけようかと話していた次第です。若付のメイドとなると戦闘もこなさなくてはならないので。」


 要人のメイドともなると礼儀作法は当たり前で、警備警護なんでもこなさなくてはならない。口の軽い秘密を漏らすような者もダメだ。主に恥をかかせるようなメイドは厳しいようだがいらないのだ。ドルディーは暇さえあれば3人に何か課題を出しそれをこなさせていた。明日行う狩りもその一環だ。


「若も一緒にどうですか?そうすればこの者達のやる気も出ると思うのですが?」

「別にいいぞ。」

「よし!それじゃお前達明日は早朝の出発だ。早く寝ろ。」

『はい!』


 3人は返事をし部屋に向かった。


「若もお疲れのご様子ですが今一度お部屋の方へ。」


 さっき目が覚めたばかりなのにまた部屋に戻された。数時間寝たはずだが精神の疲れは完全にはとれていなかったようですぐに眠ることができた。


 翌朝、支度の出来たドルディー達に起こされて一同は森へと向かった。


「ドルディー獲物はなんだ?」

「今日はこの者達の実力を見るだけなのでリーウルフのみです。」


 リーウルフとはウルフの小型サイズの魔物だ。群れで襲われない限りほぼ死ぬことはない。剥いだ毛皮は僅かだが買い取ってもらえる。正に駆け出しの冒険者たちのなけなしの収入源となるのだ。

 魔物を探すこと十数分。4匹のリーウルフを見つけた。


「よし!あの魔物とお前達だけで戦ってみろ!危ないようならすぐ助けるから全力であたれ!」


3人は頷き獲物を狩らんと前へでる。手には短剣を持っている。メイドの武器は身体に隠せるようなものが基本だからだ。

 3人は顔を見合わせ頷くと一斉に身近のリーウルフを倒し、最後の1匹に向かい囲み倒した。


「よし!そこまで!お前達なかなか筋が良かったぞ。スピードもなかなかのものだ。攻撃も首の急所をちゃんと狙ったしな。これなら鍛えればいいところまで行きそうだ。」


 ドルディーは満足げに頷く。


「次は倒した獲物の剥ぎ取りだ。丁度4匹いる。まずはオレが見せるから真似してみろ。」


 そういうと1匹を解体しだした。続いて3人もそれを真似るがうまくはいかない。こればかりは練習あるのみだ。3人の剥ぎ取りが終わるとドルディーが見て回りここがいいだのここがダメだの言って回った。こうして初訓練は終わり町に戻った。

 ルーファスはすることも無くただ立っていただけであった……。

 

「お前達ご苦労だった。」


 ドルディーは労いの言葉をかけると3人に指摘を始めた。曰く、踏み込みが浅い、剣を振った時ガードが下がる、脇が甘いから狙いがばればれ、威力も散漫になる、もっと周りに目を配れ、仲間の位置を把握しろ。3人の課題は山積みだ。それをルーファスは一緒に見ていた。そしてドルディーがこうだとやるたびに自分も真似なにか思うところがあったのか木剣も持ち外へと向かう。宿の外には少し開けた場所がありそこで立ち止まると型の一つを始める。さっきの指摘を意識しながら剣を振るう。初めはゆっくり身体に馴染ませるように、そして段々と速度を速めていく。型と言うのはそれぞれに戦闘に必要なものが凝縮されている。打ち下ろし、払い、突き、足捌き、至るものがだ。無意識にできるようになるとあとはそれの繰り返し。動きが前より洗練されていくのが自分でも分った。

 何度も何度もそれを繰り返し動きが鈍くなったので手を止める。すると辺りでは3人が一心不乱に剣を振っていた。どうやらルーファスの真似をしているらしい。

 ドルディー達は反省会が終わるとルーファスがいないことに気付き探しに出かけようかと外へと出る。そこで剣を振っているルーファスを見つけた。ドルディーは見事なその演武に3人に見よう見まねでいいからやってみろとやらせる。技はいくら言っても身体に馴染まないと意味がないのだ。盗めと内心笑っていた。しかしルーファスの進歩の速さに驚く。前より明らかに動きが良くなっている。この短時間でのこれはその才能の高さに執事として喜んだ。


(陛下ルーファス様は立派に成長なされております…。)


 いや感無量だったらしい……。

 皆疲れ果てたのかいつの間にか座り込んでいた。3人は足を引き摺るように宿に帰ると泥のように眠った。


 学園都市アイギスまであと少し。

 

























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