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食べ物の恨みは怖いんだよ

固い文章を自分なりにライトな感じにしたつもりです

 腹減った……。


 牢屋の中でゴロゴロ転がりながら空腹を紛らわせていた。

 その気になればこんな所抜け出せるのだが先ほど現場を抑えた騎士と約束したので我慢するしかなかった。


・・・・・

・・・・

・・・


「全員動くな!」


 退路を断ったのは一人の騎士だ。その身形と奴隷商人の怯え具合から地位の高さを窺わせる。

 短い黒髪を綺麗に纏め簡単な意匠の施された剣を刷き、新品同様のライトアーマーを着ている。

 

「オレがこのレラシオンの警備隊長を務めるアレンだ。」


 高価な新品の鎧剣などを買えるのは貴族ぐらいであるが貴族は平時に鎧など纏うことはない。

 なるほど警備隊長だった。 


 はぁと深い溜息をはいた…。オレなんかしたのか?自問自答を繰り返すが答えはでない。

 ルーファスが激しく葛藤してる間にアレンの部下が集まってきた。奴隷商人を拘束し、少女たちの身柄を確保した。その中の一人がアレンに何かを耳打ちしていた。

 苦し紛れに奴隷商人はルーファスを指しそいつが殺した。商品を盗む強盗だ。とかなんとかギャンギャン喚いていた…。


「こいつらを殺したのはお前で間違いないな?」


 事情聴取よろしく、アレンが黒焦げの死体を指しながらルーファスに話しかけるが葛藤中なので返事はない。それを奴隷商人が好機とみた。


「いきなりそいつが襲いかかってきたのです。そいつは現れるといきなり魔法を放ち仲間を皆殺しにされました。私も殺されるかもしれない助けてください。」


 アレンの部下に拘束されているから見動きはできないが、アレンに縋り付くように助けを求めた。いきなり襲ってくる愉快犯のような殺人鬼もいるだろうが状況的にそれはないだろとアレンは思っている。取りあえず話しはあとで聞くからと奴隷商人に言い聞かせていると、ルーファスは街中の方へ(宿の方向)歩き出した。さっきまでなにやら考え事をしていたから放置していたのだか、やっと現実(こっち)に帰ってきた。そしてそのまま歩き出す。


「ちょっと待てー」

「ん?オレは疲れたから帰るぞ?」


 やっと会話が繋がった。


「お前をこのまま返すわけにはいかない!」


 ん?こいつ誰だ?

 さっき自分の不幸を嘆いている間にその存在を綺麗さっぱり忘れていた…。

 ちっ早くさっきの笛見に行きてぇのに。


「その笛なんだが…。もし一緒に着いてきてもらえればお前に渡す。と言ったらどうする?」

「さもあらん」


 さっきアレンに耳打ちした奴は街でルーファスが楽器屋で眺めているのを目撃していて、それをアレンに言っていたのだ。そしてルーファスのボヤキが聞こえたアレンはこれは交渉できるとは思ってもみなく、ただこれで話しを聞いてくれるか、程度のことだったのだが…。効果は絶大だった。むしろあまりの即答にビックリだ。


「そ、そうか…。じゃ詰所まで来てくれ。よし!お前らもだ。そいつを逃がすなよ。」


『はっ』


 そして一同はその詰所に着いた。だがあっちの奴隷商人が先だとかで、さらに奥に案内される。


「………おい…。」

「いや言いたいことはわかるが我慢してくれ。」

「……騙したのか…?」


 奥にあったのは牢屋だった。

 騙したのかこいつ。怒りが湧き上がってきた。


「いやホント騙してないぞ。それにこれ終わったら笛--」

「絶対だぞ」


 みなまで言い終わるまえにルーファスは言った。眺めていた笛が気になっていたからだ。それに嘘だったら全部燃やしてしまえとか物騒なことを考えていた。じゃ少し待ってくれと言い、鍵を閉め出て行った。

 ま、貰えれば儲け。ダメなら燃やす。簡単だ。でも何故牢屋なのか。何かの目撃者や重要参考人の安全確保の為だ。そいつらに生きていられると困る人間が証拠を消そうとする。そのためこれが一番手っ取り早く、且つ一番安全だ。


 しばらく待っても誰も呼びに来なかった…。


 最初はすぐ呼ばれるだろ。と楽観視していて、きたねえ壁だ。鉄格子が錆びてるぞ。蝋燭の明かりが足りねえぞ。と見える所にあるものを観察してはダメ出しをしていたがそれほど多くの物があるわけじゃないのですぐ飽きた。ほかにやることもなく横になったが床がごつごつしていて寝心地が悪い。当然寝付けない。まだこの牢屋の宿泊客になって間もない、ルーファスに寝床の用意はされてなかったのだ。

 それでも根気よく待ち続けると腹が減ってきた。一度空腹を感じるともうダメだ。笛の為、笛の為とゴロゴロ転がりながら空腹を紛らして冒頭に至る。


 それでも誰も来ない。辺りは真っ暗だ。

 絶え間なく襲う空腹に軽い悟りを開く。これは拷問か…?いたいけなオレの心を弄んで楽しんでるのか?最早怒りしか感じない。…………許さん。

 それから程なくしてここの兵士がカギを開けに来た。バッと起きそいつの口を指さす。


「おい、お前!なんか食い物の匂いがする。まさかオレに絶食の拷問をしといてお前等は楽しくお食事?なんてことはねえよな?」

「なっ…」


 何かを言おうとしたが狂気じみた殺気に当てられなにも言えなかった。じりじりと獲物を追い詰める。どうにか後ずさる兵士。とうとう背中が壁にぶつかった。


「御祈りは済んだか?」


 神は無慈悲に微笑んだ。兵士は一体どうしてこうなったと天を仰いだ。


「ちょおおおっ!ストッーーーープ!」


 間一髪。アレンは二人の間に割り込んだ。


「一体何があった?」

「食い物の恨みだ…。」

「なんか食い物の匂いがするとか言われて。………長引きそうだからなにか摂ってアレンさんに言われただけなのに。」


 凄まじい目力のこもった眼でアランをみる。

 尻すぼみの声だったがルーファスには十分に聞き取れた。 

 アレンは完全に忘れていたのだ。背筋を流れる冷たいものが止まらなかった。


「おっおま、お前の分は向こうに用意してある。…当然だろ…。」


 どもりながらもそう言い、素早く兵士に駆け寄りなにやら支持を出す。僅かに頷き兵士はダッシュでどこかへ向かった……。多分飯を買いに行ったのだろう…。


 取りあえず行こうぜと進むアレンに着いていく。そこは取調室のようだ。座るよう勧められる。当然机の上にはなにもない。釈然としないものがあるが大人しく座る。するとさきほどの兵士が額に玉の汗を掻きながら入ってきた。


「お、来たな。まあこれでも食ってくれ。」


 定番のかつ丼だ。


「おい!このデリバリー的なものをここらじゃ用意するって言うのか?」

「ま、まあ細かいことは気にすんな。腹減ってんだろ。ほら。」


 空腹には勝てずそれを掻っ込む。


「悪かったな。上がっていいぞ。」


 この場から早々に立ち去りたいのか挨拶そこそこに出て行こうとした。


「待て、おかわりだ。」


 悪魔はまだ赦してはくれなかった。


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