プロローグ
昔あった大戦から漸く立ち直り人々が安心して暮らせるようになった。
この国の名はアギレイ王国。
この国は他国とたいした諍いもなくずっと平和が続くと思われた。
これはそんな国の王子のお話し…。
・・・・・
・・・・
・・・
「陛下少し落ち着いてください。」
「これが落ち着いていられるか!」
部屋の前を行ったり来たりして落ち着かない様子だ。
深夜での出来事である。
「こんな時男が騒いでも何の足しにもなりゃしないよ。」
王様は叱られしぶしぶいすに座った。それでも足はカクカクと貧乏ゆすりは止まらなかったが……。
普段なら王にこんな口を聞いたら罰せられるが、今は緊急事態だ。
そう、扉の向こうでは王妃が子供を産むべく戦っているからだ。
王は俯き腕を組み足を忙しなく動かしながらしばらく待つと、子供の産声が聞こえた。
ガタッ!
それと同時に王は凄まじい勢いで立ち上がる。
そして扉の前で開くのを待つ。
ほどなくして扉が開かれそこには赤ん坊を持つ助産婦の姿があった。
「おめでとうございます。元気な男の子に御座います。」
それを見、僅かに上げた手が震えている。
「抱いてもよいか。」
「勿論にございます。」
助産婦はそう言うと笑顔で赤ん坊を差し出した。
王は震える手でその子を抱き上げ、しばらくそのまま固まっていると。
「でかしたぞお前!」
第一子の誕生で感無量だ。
震える大声で王妃に声をかける。
「ありがとうございます。あなた。」
「うむうむ。元気な泣き声だ。きっと立派な男になるぞ。」
子供を王妃のそばへそっと置き、親馬鹿歓談に華を咲かせていると背後から声がかかる。
「陛下その辺で。奥方様もお疲れでしょうから。」
「おお!そうであった。」
「それよりも御子の名を…。」
「わかっておるわい。少しは感傷に浸らせんか。」
背後にいたのは執事のドルディー。
そちらを振り向き。
「もう名前は決まっておる。名はルーファスだ!」
王は王妃に労いの言葉をかけ部屋をあとにした。ドルディーもそれに続き王妃におめでとうございますと、深々と頭をさげ出て行った。
ルーファスはすくすく育ち4年の歳月がたった。
今日はルーファスの4歳の誕生日だ。
ルーファスは朝から夜が待ちどうしく、そわそわしている。
4年の間に当然友達もできた。しかし普段は習い事でほぼ自由な時間などなかった。しかも身分が身分なのでこちらから行くなどは許されなかったからだ。
しかしルーファスの願いが叶うことはなかった。
誕生日の支度を部屋でしてもらっていると、慌ただしく扉が開けられた。
「ルーファス様急ぎこちらへ。」
ドルディーはなにやら慌てている。子供ながらに普段との違いを感じ取ったルーファスは素直に従い扉の外に出る。すると普段とは違う雰囲気を感じた。
ドルディーはこちらへと言うと、手を引張り走り出した。
「ねえ、御誕生日会は?どこ行くの?」
ドルディーはなにも答えてはくれなかった。そしてある部屋に入る。そしてやっとこちらを向いてくれた。でもなかなかなにも言わない。
「……ルーファス様…。御父上と奥方様が御亡くなりになりました……。」
「え?」
何を言っているかわからなかった。
「あなたのご両親は死にました。ゲオルギオスの叛乱です。」