表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の管理者  作者: りくつきあまね
背負った罪
1/5

序章

他のサイトでプロローグを投稿したのですが、すぐにサイトが閉鎖してしまった為未完のまま放置。こちらで新しく連載しようと思います。拙い文章と物語ですがお付き合いいただければ幸いです

  辺り一面血の海だった。

 鼻を衝く、むせ返るような血の臭い。

 右手に握る白の細剣と左手に握る青い柄の軍刀、身を包んでいた『管理者』の白の制服は血で赤く染まり、血のように紅い双眸は虚無感を湛えていた。

 深紅の瞳がその色を失い、髪の毛と同じ黒になった。

「…………」

 左右に握る剣が重く感じられ、捨ててしまいたいという衝動に駆られたが、なんとか堪えた。

 見渡す限り広がる血まみれの死体。

 今は戦争の真っ只中。世界中で同様の光景を目にしてきたが、自らの手でこの光景を生み出すことになるとは思わなかった。

 黒髪の少年は剣を振るい、血のりを払う。

 左手に握られていた軍刀が白いに光に包まれ、その姿を消した。

「…………」

 後ろを振り返り、少し離れたところで泣いている黒髪の少女に歩み寄る。

 少女は声を上げ、泣いていた。

 自分の両親の亡骸に縋りながら。

 少年は少女に声を掛けようとしてやめ、代わりに左手を少女の肩にそっとおいた。

「っ!?」

 少女は弾かれた様に顔を上げ、おかれた左手を乱暴に払いのける。

「くっ!!」

「…………」

 少女は大きな瞳から涙を溢し、絶対の怒りと憎しみの視線を向けた。

 少年はその視線を正面から見据え、奥歯を噛み締めた。

「かえしてよ……おかあさんとおとうさん」

 少女は殺意の感情を込めた声を発し、少年はその声にビクッと体を奮わせる。

「かえしてよ……ねぇ、かえしてよ」

「…………」

 言葉にしても決して叶うことがないとわかっていても少女は叫んだ。

「おかあさんも!!おとうさんも!!村のみんなも!!みんなみんなかえしてよ!!」

「…………」

 少年はただ黙って少女の声に、どうしようもない感情に耐えた。

 自分は何を言われても反論することは許されていない。自分は目の前で叫ぶ少女の両親とそこに暮らす人々の命を奪ったことに変わりないのだから。

「……ろ……し」

 剣を握る手に力がこもる。

「ひと、……し」

 少女の心を埋め尽くす感情が次第に明確になり、

「ひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしひとごろしヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシヒトゴロシッ」

一息でその言葉だけをひたすら言い続け、最後に大きく息を吸い込み。

「人殺しっ!!」

心を蝕んでいく闇を吐き出す。

 憎しみをのせた言葉が、怒りに満ちた声が、悲しみで溢れる涙が、絶望を宿した瞳の全てがどうしようもなく自分の心を深く深く切り裂いていく。

「あなたなんか」

 そして一番聞きたくなかった言葉を紡ぐ。


「あなたなんか死んじゃえばいいんだ!!」






 この日から一ヵ月後。果て無き闘争と思われた争いは終わりを迎えた。





そう、終わったのだ……………………少年の全てを犠牲にして。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ