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竜と食べ歩き。  作者: コトオト
第1章
4/60

炭火焼ハンバーグ 4

※流血描写あり


 ドラゴンと称してみたものの、アルフィリアはドラゴンを見たことはない。

 いや、この世界に生きる者ならば、誰でもそうであろう。



 空を駆ける大きな羽根。爬虫類の鱗で覆われた固い皮膚。獲物を切り裂く鋭い牙。そして小さな腕と、爪。代わりに大きな足。太い尻尾。

 その口から吐く炎は地を焼き、咆哮は雷鳴を生む。

 空を統べる空の王。

 空想上の、そして絵物語で記された〝竜〟または〝ドラゴン〟と呼ばれる生き物。



 そのはずだった。








 四角い箱から這い出てきたその生き物は、腹ばいの姿勢からぽてん、と座り込むと、くあ、と大きく口を開けて欠伸をした。それから体の割に小さな羽根をぱたぱたと動かす。

 体は青灰色をしている。いや、光の加減では銀色に近い。頭の後ろに生えるたてがみは陽に透けてきらきらと光っている。大きさは人間の赤子ほどだ。

 首をきょろきょろと動かして、その小さな生き物は目をぱちりと開いた。

 夕日のような、赤い紅い色だった。その深い宝玉がふたつ、くりくりとした目を周囲に向ける。

 鼻をくんくんと動かしていることから、周囲を見回しているらしい。


 その様子を、優しく微笑みながらユークレースは見下ろしていた。



「……キュ?」



 こてん、とドラゴンがユークを見上げて首を傾げた。耳がぴくぴくと動いている。

 それから呆然としているアルフィを見た。またこてん、と首を傾げた。

「キュ?」

「……心配いらない、ジーク。こちらはアルフィリア。さっき知り合った親切な人だよ」


 だれ? とでも言うように目をくりくりさせるドラゴンに、ユークは優しくそう説明した。

 それからいまだ何も言わない、言うことができないアルフィに向きなおる。



「……ジークハルト。俺の相棒だよ」

「キュ」



 いささかはしょりすぎな説明に、けれどジークハルトと呼ばれたドラゴンは胸を張った。






「……………………これは、驚いたな」


 頭のまわらないアルフィだったが、ようやく目の前の光景を現実だと認識できたようだ。口を開けたまま素直に感想を述べて、まじまじと足元の銀色の生き物を見る。


「蜥蜴の一種か? 突然変異で生まれたのか? それとも新種の魔物か?」

 グェ! と抗議するようにドラゴンが鳴いた。人間の言葉が分かるらしい。


 苦笑いを浮かべて、ユークはジークの頭をなだめるように撫でる。

「……信じてもらえないかもしれないが、マスタードラゴンと呼ばれる高位の魔族だよ。今はなぜかこのサイズになっているけれど、本当は人を四人は運べる成人したドラゴンだ」


 ジーク、とユークが呼びかけると、ジークハルトは素直に振り向いた。

「お腹減ったろ。ほら、ご飯だ」

 先ほど買っていたサンドイッチの袋を開け、ジークに見せるようにかがみこむと、ジークは目を輝かせ嬉しそうに鳴いた。袋を破いて食べやすいように地面に置くユークへいそいそと移動して、そのままかぶりつく。


 機嫌よくサンドイッチを食していくジークを、アルフィはどこか夢見心地で見ていた。

「……ほんもの、なのか?」

「正真正銘の本物だよ。信じてもらえないかもしれないけど……やっぱりここでは、ドラゴンはいないんだね」


 アルフィの反応を見てしみじみとそう呟くユークに、アルフィは目を向ける。

「当たり前だ。ドラゴンは想像上の動物で、魔物ですらこの形状のものはいない。……しかし驚いた、本当に驚いた。これは希少だな、〝ドラゴン型の魔物〟なんて」

「……うーん、ドラゴン型じゃなくて本当にドラゴンなんだけどね」


 ユークは多少の訂正をしつつ、手を伸ばしたアルフィをさりげなく遠ざける。


「触らない方がいい。食べているときは気性が荒くなるから、無意識に人を攻撃してしまうかもしれないんだ。ジークは穏やかな性格だけれど、慣れた人じゃなきゃ触らせてくれないよ」

「……うむ、動物の本能というモノか。確かに食べている間は無防備になりがちだからな。

しかし、ユークは詳しいのだな」


 感嘆の息を漏らすアルフィを、ユークはどこか諦めたように肩をすくめる。


「……小さい頃から一緒だったから」

「なんと。このような希少動物と共に過ごしていたのか」

「……俺の居たところでは、ドラゴンは珍しくなかったからね」

「そんな場所があるのか……。うむ、あなたの世間知らずも頷ける。いったいどんな辺境の地から出てきたのやら……一度は行ってみたいものだな」


 ドラゴンに釘付けになっているアルフィには、少し苦々しい顔をしているユークに気が付かない。


「教えること、というのはこれのことか」

 いやはや、とアルフィはもう一度ジークの背中をまじまじ見て、それからユークのほうへ顔を上げ、にこりと微笑んだ。


「良いものを見せてもらった! できれば少しだけ触らせてもらえないだろうか?」

「……うん。ジークがいいよって言えばだけど……それだけ?」

「うん?」

「見世物小屋に行こうとか、王城に持っていこうとか、誰かに売ろうとか。考えないの?」


 いささか緊張をにじませた青い瞳に、アルフィは目をぱちりとさせた。


「お前さんが言ったのではないか。口外しないと約束してくれるか、と」

「……」

「一度した約束は守るさ。それを信じて見せてくれたのだろう?」


 食べ終わったらしいジークが、サンドイッチの袋から顔を出し、ぷは、と息を吐いた。

 その様子を見てアルフィが「水でも飲むか?」と水筒を取り出す。



 ユークレースはそんなアルフィを見て……――嬉しそうに、けれど少し泣きそうに、顔を歪ませたのだった。












 結局。

 触らせてくれないジークハルトと、なんとか触ろうとするアルフィリア。逃げるジークと追うアルフィ。

 攻防はやがてユークの傍から離れ、ふたりは狭い空間を一定の距離を保ちつつじりじり一進一退を繰り返している。


 そんな呑気な光景が繰り広げられるさまを微笑ましく見守っていたユークレースが、突如笑みを消した。同時に、じりじりと逃げていたジークハルトもぴくりと顔を上げる。


「ん? どうした?」

 ただひとり、アルフィリアだけがジークの変わった雰囲気に戸惑っている。


 ジークは周辺をくるりと見渡すと、キュウとひと声鳴いた。ユークレースも立ち上がり、「そうだね」と頷く。


「ごめんアルフィ。少しゆっくりしすぎたみたいだ。なるべく壁際に寄って」

「んん? どういうことだ?」

「ジーク。アルフィを守って」


 するとジークは先ほどから逃げ回っていたのなど嘘のようにアルフィの傍へ寄り、服の裾をくわえるとくいくいと壁へ誘導した。つられてアルフィが移動すると、一仕事終えたジークはキュウと誇らしげに鳴いた。


 ぱさりと、その横に小さなマントが置かれる。ユークが鞄から取り出して投げたものだ。

「アルフィ、それジークに着せて。ジーク用マントなんだ」

「う、うむ」


 命じられるがままマントを着せる(乗せるだけ)と、ジークは器用にその中へ入り込み、フードの部分から顔を出した。そうして見るとフードをかぶった子供のようになる。


 ここまで来れば、アルフィとて気付く。気配察知に関しては人並みだが、二人(一人と一匹)の行動から、どういうことなのかを察したらしい。

 ユークは先ほどの場所から動かず、けれど鞄の中から細身の包みを取り出していた。それからかすかに笑みを浮かべて、周囲をぐるりと見回している。





「……――治安が悪いのは本当だったみたいだね。女の子一人で来させないでよかった」



 いつのまにか。

 狭い路地の周りに、ならず者が来ていたらしい。












 数にして五人。

 さして綺麗でもない衣服に身を包み、むき出しの剣を、槌を携え、にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべる屈強な男たちが、狭い広間の唯一の出入り口を塞いでいる。


「……やさ男に女がひとり。おいおい、迷子にでもなったのか? こりゃ運が悪かったねェ」


 布でぼさぼさの髪を縛った男が、にやにやと笑いながら一歩前に出てきた。

「ここは俺たちの縄張りだ。勝手に入られては困るんだがね」

「それは申し訳ない、知らなかったんだ」


 対するユークは穏やかだった。身を強張らせるアルフィを庇うように、少しだけ移動する。


「すぐに立ち去るから、そこをどいてくれないか」

「馬鹿言っちゃいけねぇぜにぃちゃん。何事もやっちゃいけねぇことがあるんだ」

 げはは、と下品な笑いを浮かべた別の男が、舐めまわすようにアルフィへ視線を向けた。

「荷物を全部置いて、女も追いてきゃ見逃してやるぜ?」

「もちろん衣服も置いてけや。全裸で街を滑走しても命があるだけマシさ」

 愉快そうに男たちは笑う。


 それは困ったな、なんてユークレースは肩をすくめる。

「あいにく露出狂の趣味はなくて」

「趣味はなかろうがなんだろうが、どうでもいいんだよ。さっさと身ぐるみ剥いで置いてけや。それともにぃちゃんも商品になるか? その顔なら高値で売れるぜ」

「そりゃいいや。新しい伝手も確保しなきゃいけないしなぁ」

「なら顔に傷つけちゃいけねぇな。値段が下がる」


 余裕すらある男たちとは裏腹に、ユークは酷く落ち着いたものだった。体格差は歴然で、男たちからしてみれば、ユークなど取るに足らぬやさ男なのだろう。

 アルフィとて同じだ。身を守る武具を持たぬか弱い女。



 けれど。



 卑下た視線に晒されようと、アルフィはどこか、冷静になっていった。

 それは立ちはだかるユークレースの存在が、その飄々とした態度が、はったりではないものを感じたからだ。






「カシラぁ。この女売れますかねェ」


 いつのまにか。

 ユークと対峙していた男の脇をすり抜けて、頭を剃り趣味の悪い刺青をむき出しにした男が、アルフィに近づいていた。

「上玉とはいえねぇが、その筋の者にはよさそうだな。売る前に味見してもいいだろぉ?」

 にやにやと笑いながら男が戯れに手を伸ばす。アルフィは体を強張らせ、壁に背をつけて避けるように後ずさり――



「……触るな」



――ひたりと、その間の空間に、細い鞘が割り込んだ。





 ユークレースが動かぬまま、片手に持つ細い剣で男を牽制している。

 穏やかな色を持つ瞳が、冷たい光を帯びるのを感じることができたのは、はたしてここにいたのか。


 空気を変えたその一言に反応したのもまた、男たちの方だった。

「……なめたこといってんじゃねぇよにぃちゃん。それともアンタが相手してくれんのか」

 ぐいと、ユークの襟首が引き上げられ、歪んだ男の前に引きずり出される。

「……五体満足でいてぇなら大人しくするんだな。暴れるならお前さんのその指、一本ずつ切り落としてやってもいいぜ」

 ぎらりと光る曲刀は、手入れも満足にしていないのかところどころ錆びているものの、男の言葉が嘘にならないことを物語る。

「おい、押さえつけろ」

 男の命令と同時に待機していた他の者が動く。ユークを縛り付けるために。



「……いつでも、どこでも、どの世界にも、」

 ぽつりと、ユークは呟く。

「おんなじような輩はいるものなんだな」

「あん?」

 聞こえなかったのか、男が眉を寄せる。けれどユークは、構わなかった。

 ただ、――笑った。



「先に手を出したのはそっちだからね」



 瞬間。

――鈍い音を立てて、ユークの襟首をつかんでいた男の顎が、がくんと上にあげられた。










 襟首を掴まれた腕を片手に持ち、軸にして体を跳ね上げ、ユークが男の顎に膝を叩きこんだのだ。

 びり、と襟首が裂ける音と、顎の骨がきしむ音。

 中空の不安定な姿勢から、ユークの体がそのまま後ろに倒れる。そのまま、呆気にとられたすぐ後ろの男の肩を掴むと、

「――よっ」

 反動で後ろにそれる顎を打たれた男を足場に、逆立ちの要領で反転、くるりと男の後ろへ回った。


「なっ」

 声出した男の肩を掴んだまま、その腕を後ろからぐいと掴み、

「っと」

 足払い。

 膝裏を狙ったそれは呆気なく男のバランスを崩し、男が宙に浮く。背中から地面に叩きつけられるその横へ回り込むと、ユークはそのまま持っていた鞘を男の咽元に落とした。

 喉仏が潰れる音がし、男の口から唾が溢れる。後頭部から叩きつけられ、がくん、と男が白目をむく。

 瞬間。

 大の男が二人、地面に叩きつけられる音が響いた。



「ってめぇ!!」

 ようやく動き出した右側の男。武具の鉄槌を振り上げ、地面に着地したユークへ襲い掛かる。

 遠心力を伴うそれは、かするだけでも人の体を吹き飛ばす。

 だがユークは避ける仕草をしなかった。ただすいと、その大槌に向かって体を流した。

 そして、振り下ろされる動作のそれを、ひらりと風のようにかわした。――ぎりぎりまで、引き付けて。

 攻撃された直後の男の体。大槌を振り上げる仕草は、すなわちその後の隙の大きさを現す。


 しかし左の男はそれすらも読んでいる。攻撃をした直後を狙う者をカバーするように、その剣を掲げて突進。かわしたユークの喉元めがけ、咆哮を上げて振り下ろす。

――カン!

 澄んだ音を奏で、ユークが片手に持つ鞘に包まれた剣で、その切っ先を受け止めた。

 そして、


 受け止めた剣の鞘から、流れるように銀色の刃が滑る。

 鞘を受け止めたままの格好で、ユークはおもむろに剣を薙ぎ払った。


「……――ギャァ!」


 蛙の潰れたような悲鳴が聞こえ、男が片目を押さえる。ユークの切っ先が目の前の男の顔を切ったのだ。

 ひるんだ隙に飛ぶユーク、片手に鞘、片手に細剣。飛び散るわずかな血、剣の男は後退、そして鉄槌の男は、

「よくもっ!!」

 鉄槌を振り上げる。ユークへ向かって。

 ユークはそれを、鼻の頭ぎりぎりでかすめたその槌を後ろに跳躍してやりすごし、くるりと反転、その反動のまま男へ倒れこむように懐へ入り込み。

 その腕を振るうと同時に、男の手首から血が噴き出した。

 悲鳴を上げる男の顎下に、今度は剣の鞘を突き立てる。がつん、と急所に入ったそれは、男の息を奪うには十分だった。

 ぐらりと崩れる体。ユークよりも体格の大きかったそれは、そのまま懐に居るユークに向かって崩れ落ちる。


 巻き込まれる寸前。

 片足を軸にして、倒れこむ男の側面に綺麗な回し蹴りを叩きこむ。

 そのまま男は、後退した剣を持った男を巻き込み、石畳に崩れ落ちた。


 ご丁寧に。

 鉄槌がその二人の頭の上に落ち、重量もあるそれは一人を昏倒させ、一人を首で地面に縫いとめる格好となる。




 あまりにも綺麗な一連の動きに、アルフィは声も出せないでいた。ただ目の前の光景を息もせず見ていた、が。



 ぐい、と襟首を引かれ、思わず小さな悲鳴を上げる。


「それ以上は止めろォ!!」


 太い腕がアルフィの首に回り、そのまま押さえつけられた。ぐ、と息が詰まる。ユークが顔を上げる。

「女がどうなってもいいのか!!」

 抵抗しようとした腕も捕まえられ、そのままぎりぎりと首を絞められた。耳元に生暖かい息がかかる。


「……そうだ、そのまま動くな。て、てめ、よくもカシラたちを……許さねぇからな、てめぇは売りもんにするのは止めだ、そのままぶっ殺してやる」


 人質を取った余裕だろうか。先ほどアルフィに近づいた最後の男が、アルフィを見せつけるようにぐい、と引っ張った。

 アルフィは首の圧迫感に息ができず、顔を歪める。男の息が生臭い。興奮しているのか、締め上げる腕も手加減を知らずぎりぎりと締め付けていた。

「いっ……」

「女が大事なら今すぐ武器を捨てろ! んで大人しくしやがれ!」


 先ほど昏倒させた男も、唸り声を上げてきた。このまま時間が過ぎれば、恐らく目覚めてしまうだろう。


 ユークは構えていた剣を下ろす。静かな瞳で、アルフィを拘束する男を見ていた。

「どうした武器を捨てろ! 女ががどうなっても――」

 唾を吐いて脅しをかける男の声が、ふいに止まる。そして。



 がぶ。

「……――でぇぇぇ!!」


 途端、悲鳴を上げた。

 その瞬間アルフィの拘束が緩む。その隙を逃すはずがない。


 アルフィは一度頭を下げると、そのまま勢いよく顔を上げた。ごん、と鈍い痛みが走るとともに、更に男の拘束が緩む。

 その腕から抜け出そうと身をよじる。その瞬間、銀の閃光がアルフィの顔の横を走った。


 ユークが、男の脳天に向かって剣を振り下ろしたところだった。

 いつのまにか鞘に包まれていた剣は男の真上を直撃。そのまま、ぐらりと倒れて、石畳に倒れこんだ。







「大丈夫、アルフィ?」

「あ、うん、まぁ」

 抜け出した拍子に地面に倒れたらしい。手をついて呆然としているアルフィに、心配そうな顔が覗きこまれる。

 ユークレースだった。


「ごめん、怖い思いさせた。もう少し早く気が付いてれば、こんなことには」

「い、いや大丈夫だ。この通り怪我はないのだし、あれは不可抗力でもある」

 沈んだ顔をして謝罪するユークに、アルフィは慌ててフォローを入れる。それからユークを促して立ち上がると、改めて周りを見下ろした。



 狭い広間に、男が五人、重なって倒れている。

 呆気ない、動作だった。時間にしてわずか数分のことだ。

 流れるような仕草で、ユークは五人の男を沈ませた。


「よくやった、ジーク」

「キュイッ」

 見ると、アルフィを拘束していた男の下から、フードをかぶった子龍が這い出してくる。どこかを噛みついたらしい。



 しかし昏倒させたとはいえ、大男たちだ。悠長にしていればすぐにでも目を覚ますだろう。

 ユークはジークにねぎらいの言葉をかけると、すぐさま行動しだした。

 すなわち、昏倒している男たちの衣服を破り出したのだ。


「な、なにして、」

 呆気にとられるアルフィには答えず、ユークは慣れた手つきで、その男たちを衣服で縛り上げる。

 あまりにも自然で手馴れて、しかも早い動作にアルフィは付いていけない。


「さてこれでよし……こいつはしばらく起きないだろうからいいか」

「……ユークさんや。なにをしてるんだい」

「ねぇこの国って警邏とかいないのかな。悪い人って誰に言えばいいの」

 きょとんと言うユークに毒気を抜かれ、アルフィはため息をついた。



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