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竜と食べ歩き。  作者: コトオト
第3章
35/60

※(騎士の亡霊の独白) 2



 かたん。駒を元に戻す。




 その男はこう言った。

――――世界を広く持てと。

 いつものように駒を動かしながら、その男はこう言った。

――――視野を広く持てと。


――――お前は、ひとつのことに固執し尽してしまっている。

――――だから、お前は危ういんだ。



 その意味を問う前に、男の顔が女にすり替わり笑う。


――――ならば世界を見ると良いですわ。世界の裏側までも、全て。




 そう言われ差しのべられた手はさながら悪魔の囁きに似ている。

 だが女の差し出した手のひらはあまりにも魅力的だった。



 抗うことの出来ぬ欲望が湧き上がる。


 渇望。

 喉の渇きにも似た、それを満たすものがあると。

 圧迫。

 飢えにも似た、ゆるやかに殺されていく己の自我を取り戻せると。

 焦燥。

 望んで望んで望んで望んで望んで諦めた願いを叶えると。


 差し出された手を握った時、


 そこで夢は、終わる。








 またひとつ、獲物が来る。

 人数は四人。


 馬車を引く者は一人。女。

 護衛は三人。蒼い髪の男。赤い髪の男。黒い髪の女。


 目を止めたのは一人の男。

 一行の中にいる赤い髪の男。

 武器は白銀の斧。

 短髪の屈強な顔つき。


 あれがおそらくリーダーである。






 まずはいつも通りに。


 側面は木だ、馬車は入り込めない。

 まずは馬車を狙う。前方と後方を塞げ。そうすれば前に走る馬車に逃げ道はない。

 前方の人数を多く。

 馬車を守るのであれば馬車を。逃げ出すようであれば追う。優先すべきは戦力を分散させること。

 そうしていつも通り搾取しろ。少ない人数だからと甘く見るな。数を多く。


 いつも通りに追い込め。

 変わりなく追い込め。

 ならば容易い。

 容易い日課のはずだ。




 盤上の駒を動かす。かたん。音がする。






 魔王が復活するまでの暇つぶし。


――――さぁ、つまらない遊戯の始まりである。






それじゃあ、

行きますか。

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